このたび、教育科学研究会の機関誌『教育』にて、書評を執筆する機会をいただきました。
取り上げた書籍は、宮下与兵衛さん著
『若者とともに――地域をつくる学校を支える 社会・政治を変える』(かもがわ出版、2024年)です。
本書の大きな魅力は、世界各地で起きている若者の社会的ムーブメントを、横断的かつ立体的に捉えている点にあります。
スペイン、アメリカ、イギリス、フランス、スウェーデン、韓国、台湾、香港など、それぞれの地域で生まれている若者の自発的な社会運動や参加実践が、単なる事例紹介にとどまらず、「同時代的なうねり」として関連づけられて描かれています。
この国際的視野の広さは、日本の若者研究・若者政策研究の文脈において、非常に貴重なものだと感じました。
さらに本書は、フランスやドイツ、アメリカ、韓国、ニュージーランドにおける市民教育・政治教育の実践にも踏み込み、学校教育の場がいかに若者の民主的主体性を育む拠点となりうるのかを具体的に論じています。同時に、現代社会を覆う新自由主義的な構造が、若者の生きづらさや社会参加の困難を生み出していることにも批判的に目を向けています。
私自身はこれまで、ユースワークや若者政策、若者の社会参加を主な研究領域としてきましたが、その立場から見ると、本書はやや学校教育寄りのアプローチを基軸にしている印象もあります。しかし、それでもなお、これほど包括的に「若者の社会参画」を理論・実践・国際比較の三層でまとめ上げた研究書は、日本ではほとんど前例がないと言えるでしょう。
学校教育、社会教育、地域実践、若者運動、政策議論を一つの地平に置き直し、「若者とともに社会をつくる」ための知的基盤を提示している点に、本書の独自性があります。
書評では、こうした本書の理論的意義と、若者政策・ユースワーク・教育実践をつなぎ直す可能性について論じています。
掲載誌の該当ページはこちらです。
教育科学研究会『教育』2026年1月号 書評欄

今後も、若者と社会の関係をめぐる研究と実践の往復を続けながら、日本における若者社会参画の議論を少しずつ前に進めていきたいと思います。



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