
2026年1月30日、文部科学省記者会見室にて、
「18歳選挙権・主権者教育10年の問い/若者の意見を社会に反映する仕組みとは?」と題した記者会見が開催されました。
▷日時:2026年1月30日(金)15:00〜16:00
▷場所:文部科学省記者会見室(東京都千代田区霞が関3-2-2)
本日、文部科学省で記者会見をしました。
「18歳選挙権・主権者教育10年の問い/若者の意見を社会に反映する仕組みとは?」
若者の政治参加、主権者教育=投票率向上教育のみじゃない。若者が主体的に社会参加するために、その仕組みをつくるべきだとお話ししました。… pic.twitter.com/gyNBxYlSgc
— たかまつなな/笑下村塾 代表 (@nanatakamatsu) January 30, 2026
18歳選挙権の導入から約10年。この節目に、若者の政治参加や主権者教育を「投票率」の問題に矮小化せず、学校・地域・制度の在り方そのものから問い直すことを提起しました。

教育新聞でも早速報道いただきました。
https://www.kyobun.co.jp/article/2026013001
会見の構成と登壇者
当日の流れは以下の通りでした。(敬称略)
1.たかまつなな(趣旨説明)
2.工藤勇一(学校改革の実践)
3.両角達平(欧州比較)
4.外所もみじ(高校生提言)
5.植松水歌子(大学生・オンライン)
6.質疑応答
それぞれが異なる立場から、若者参画の現在地を語りました。
若者の政治参加は「投票」だけではない

主催した笑下村塾代表のたかまつななさんは、次のように冒頭で問題提起しました。若者の政治参加は、投票率の上下だけで測れるものではない。若者が「社会は変えられる」と実感し、主体的に行動できる環境をどうつくるかが重要である。そのためには、
・学校で民主主義を実践すること
・属人的でない仕組みをつくること
・若者の声が制度に反映される回路を整えること
が不可欠であると強調されました。

たかまつさんとは2022年のスウェーデンでの総選挙の際に一緒に現地入りをしました。そのときの豊富な取材は笑下村塾のホームページで一般公開されています。大変質が高く、私も講義で使用させていただいています。
当時の現地入りの様子↓
来週の総選挙をひかえたスウェーデンの道中にたち並ぶ「選挙小屋」。今回はいつになくデッドヒートな選挙になりそうだとみんな口を揃えて言います。 pic.twitter.com/PZLLsfGR0q
— 両角達平 (たっぺい) (@tppay) September 3, 2022
管理教育から生徒主体の教育へ

工藤勇一先生は、麹町中学校での改革経験をもとに、学校を「民主主義の訓練場」として捉える重要性を語りました。
生徒主体の学校運営は決して簡単ではなく、生徒同士の対立や混乱も起こります。しかし工藤先生は、そうした対立を避けるのではなく、対話を通して共通の目的に向かって合意していく経験こそが重要だと強調しました。実際の発表資料でも、
「たとえ対立が起きても、対話を通して全員の共通の目的に向けて合意する経験が必要」
「学校を当事者としてより良く変えた経験を持つものこそが、社会の当事者として成長できる」
とされています。こうした実践の成果は、卒業後の意識にも表れています。麹町中学校の卒業生を対象とした追跡調査が紹介され、
・「自分で考え、選ぶ経験」をしたと答えた生徒は82.4%
・その経験を高校・大学でも活かせていると答えた割合は56%
・さらに、卒業生の投票率は83.1%
という結果が示されていました。これは、「主体的に学校づくりに関わった経験」が、その後の進路選択や社会参加、政治参加にもつながっていることを示す、非常に重要なデータだと言えます。
単に「話し合いをさせる」「意見を聞く」だけではなく、実際に学校を動かす責任を経験することが、主権者としての土台を形成しているのです。
「自主性」から「主体性」を育てる特別活動へ
こうした実践を踏まえて、「自主性」と「主体性」を明確に区別する必要性を訴えました。大人の期待に応える形で行動する「自主性」ではなく、社会をつくる主体として責任を引き受ける「主体性」を育てること。
麹町中学校の卒業生の意識変化は、この「主体性重視」の教育が、決して理想論ではなく、現実に成果を生んでいることを示しています。
ヨーロッパの若者団体への助成金が人件費にも使える理由
私は、スウェーデンを中心とした欧州の若者政策について報告しました。スウェーデンでは、
・若者投票率80%超
・若者団体参加率約7割
・若者団体への公的助成(年間30〜40億円規模)
が制度的に保障されています。この助成金は人件費にも賃料に充てることができます。これにより若者団体の活動の「継続的な基盤」を保障することにつながり、若者団体の影響力の持続性を高めることにつなげています。
また、多くの国でユースカウンシルが法的に位置づけられ、若者の声が行政に届く仕組みが整えられておることにも触れました。Youth Wikiによると欧州約34か国のうち“およそ半数”が国レベルのユースカウンシルを法律で位置づけています。また、法的規定がない国でも政策形成の正式パートナーとして協議対象となり公的資金を得て活動する国が多いです。(実はスウェーデンは、国レベルの法的根拠はない国です)
また、ヨーロッパの国レベルのユースカウンシル(National Youth Council) が傘下に入る欧州ユースフォーラムには、欧州全域で43の国レベルのユースカウンシルが加盟しています。これは、若者代表組織が各国の若者政策の公式パートナーとして機能していることの表れです。
若者団体を支援する仕組みを整備することで、若者参画を「意識改革」から、「制度設計」にすることを提言しました。
若者当事者による実践的提言

外所もみじさんは、不登校経験を踏まえた政策提言を紹介しました。「不登校」という言葉が生むスティグマへを問題提起し、「ユニパス」を群馬県に提言しました。工藤さんがXにて共有しています。
群馬県は「不登校」を
「UniPath(ユニパス)」= ひとりひとりの道
という言葉に言い換えることにした。
レッテルを貼る言葉をやめ、子ども一人ひとりの人生として捉え直す。意識変化を本気で起こそうとする、素晴らしい取り組みだと思う。…— 工藤勇一 (@KudoYousan) January 31, 2026
また、植松水歌子さんは、子宮頸がんワクチン接種率向上の取り組みを紹介し、SNSと学校を活用した政策提言が実際に制度化された経験を共有しました。
主権者教育10年の検証と課題

会見では、この10年の成果と限界も共有されました。
・主権者教育の実施率:約9割
・政治的テーマの扱い:約3割
・教材不足
・中立性への過剰配慮
一方で、10代の約9割が「社会に貢献したい」と考えているというデータも示され、日本の若者の潜在力の高さも確認されました。
「一般意志」という言葉を使わなかった理由
会見後、私は工藤先生に「なぜ『一般意志』という言葉を使わなかったのか尋ねました。というのも会見のなかで何度も「自由の相互承認」と「一般意志」という民主主義の本質の説明を、哲学用語をつかわずにわかりやすい言葉で説明していたからです。
それは「哲学的な言葉は、それだけで伝わらなくなる」ということでした。理論的な正確さもありますが、まず伝えることを優先していたことが印象的でした。私自身、哲学用語をすぐに用いてしまうときもあるので我が身を正そうと思った次第です。

「自由の相互承認」と「一般意志」については、苫野一徳さんと工藤さんの共著の以下の本が大変わかりやすいです。
「聞く」から「委ねる」若者参画へ
日本では、こども基本法などにより意見聴取の制度は整いつつあります。しかし今後は、
聞く → 参加させる → 委ねる
という段階的転換が必要です。若者が本当に社会に影響を与えるためには、場・資源・権限の保障が不可欠です。今回の記者会見を通して、改めて感じたのは、民主主義は教えるものではなく、共につくるものだということ。主体性を見守る教育、制度化された若者参画、現場と政策の接続。これらを結びつけながら、若者が「自分の声には意味がある」と実感できる社会を、今後も模索していきたいと思います。
本会見に関わったすべての皆さまに、心より感謝いたします。
追記
毎日新聞で報道がありました。
https://mainichi.jp/articles/20260309/org/00m/010/019000d



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