スウェーデンの首都ストックホルムに4年間住んだ身として、改めてこの街がどんな街なのかを紹介してみます。
ストックホルムはどんな街?
スカンジナビア最大の都市ストックホルムは、「北欧のベネツィア」と呼ばれるように14の島からなる水の都(みやこ)です。宮崎駿監督のアニメ「魔女の宅急便」や最近では「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の舞台となった小綺麗な街です。
「ストックホルム」の意味は?
スウェーデン語の表記は「Stockholm」で、丸太を意味する”stock”と島を意味する”holme”が由来です。かつて、島に丸太を積み上げて敵船からの侵入を防ごうとしていた地域がこのストックホルム であったことが由来の1つともいわれています。
ストックホルムの人口・年間気温・日照時間
北欧最大の都市といっても、スウェーデンの人口は1000万人程度でストックホルム市では、約90万人ほどなので日本の都市と比べると小規模な都市です。四季はありますが、夏は最も暑いとされる7月でも、平均で18℃程度で、かつ湿度も低いのでじっとしていも汗をかくことがないのでとても心地がいいです。
北欧と聞くと冬は寒いイメージですが、そこまで冷え込むことはなく、最も寒いとされる1月の気温は-3度程度です。またストックホルムは雪も多くなく、日本の寒冷地のほうが総じて厳しい気候といえるでしょう。
最も日本と異なる点は、夏は日が長く、冬は日が短いことでしょう。夏は最も長い時で朝4時前から日が登り、沈むのは22時なので、夕方から深夜まで屋外で過ごすのが一つの楽しみです。逆に冬は最も短い時で日が昇るが8時30分前後で、沈むのが15時前なので、朝起きても暗く、夕方17時に帰宅するときにはもう真っ暗なのです。ゆえに、冬は体を鍛えたりビタミンDをとるなどして「暗さ」の中を生き延びるための術を獲得することが求められます。
ちなみにスウェーデンの北極圏にある街キルナでは冬は、太陽が昇ることはなく、逆に夏は24時間陽が出ている白夜の状態になります。
世界で有名なスウェーデンの企業
スウェーデンといえば、デザインではIKEA やH&M、ITではSpotify やスカイプ、音楽では古くからはABBA、最近ではAvicii やAlessoなど、小規模な国の割には世界的なブランドやアーティストを輩出している国です。また社高福祉高負担の包括的な社会保障制度は、少子高齢化が本格化する日本のモデルとして引き合いに出されることが多いです。ストックホルムは、ヨーロッパのシリコンバレーと呼ばれるくらいに、IT 企業のスタートアップも多く生まれています。
これらに象徴されるように、この街は、ずばりシンプルさと機能性を兼ね備えた、派手すぎずしかし小粋な「ちょうどいい」街がストックホルムらしさといえるでしょう。
ストックホルムで気に入っているところ
スウェーデン語で「ラーゴム(lagom)」という形容詞があるのですが、これは日本語でいうところの「ほどよさ、適度、中庸」を意味する言葉が象徴するように、スウェーデンではこの「ほどよさ」が美徳とされています。実際に、ストックホルムの街の規模も大きすぎず小さすぎず、街並みの風景もド派手すぎず現代的すぎずという感じで、あらゆる面で「ラーゴム」なところがストックホルムの良さと言えるでしょう。
自然環境・治安・英語の話しやすさ・ワークライフバランス
豊かな自然に囲まれている環境の政策先進国でもあるので、空気も水もとてもきれいです。事実、OECDのより良い生活指標(Better Life Index)の環境の指標でスウェーデンはトップです。
治安は、中心街や郊外で気をつけないければいけない箇所はありますが、それでも他のヨーロッパの都市と比べればはるかに良い方だと言われています。
また、日本人にとっては英語の話しやすさも助かります。スウェーデンは母国語が英語でない国の中で最も英語が流暢な国として知らているように、老若男女問わずにすべての人が英語ができます。同じゲルマン語圏のドイツなどと比べても、例えば元々東ドイツに属していた地域だと年配の方はロシア語が第二言語だったこともあり、英語があまり話せない人が多々いましたが、スウェーデンではそのようケースはほとんどありません。ですので、日本人留学生でも移住者でも、スウェーデン語を話せなくても難なくやっていけるのは移住障壁を下げてくれます。
また、ワークライフバランスと健康を重視する点もスウェーデンらしさといえるでしょう。労働時間の短さ、賃金の高さ、男女の賃金格差の低さ、育児休暇の取得率、就業・就学への復帰のしやすさが持続可能なキャリア形成とワークライフバランスに寄与しており、事実スウェーデンのワークライフバランスはOECD36カ国中、3位で日本は、34位です。故に、僕が働いているIT会社でも17時にはオフィスはほとんどの人がいません。
余暇活動時間が多いので、街中では多くの人がランニングやワークアウトをして体力作りに励んでおり、それに触発されて僕自身もワークアウトを欠かさないようになりました。
ストックホルムがもっとこうだったらなぁと思うところ
アルコールの取扱いが日本と大きく異なるところです。
例えば、コンビニでビールを買おうとしても3%程度のビールしか買えません。スウェーデンでは厳格なアルコール販売政策により、5%以上のお酒は国が占有しているSystembolagetという酒屋でしか買えません。しかもほとんどが19時くらいには閉まってしまい、土曜日は15時まで日曜日は休業なので、アルコールを購入することに「計画的」でいなければいけないのは、たまにうんざりします。
さらに、パブやバーに入場する際に酔っ払い過ぎていると、入れませんし、店内で酔いつぶれていると追い出されてしまいます。もちろん「飲み放題」というシステムもありません。僕は飲みニュケーションに従事する派なので、がっかりすることもありますが逆にいうと、依存症や飲み過ぎのリスクを抑えることができています。
ストックホルムに住むことになったきっかけ
ちなみに僕がストックホルムに住むことになった直接のきっかけは、2012年に日本の当時通っていた大学を休学してストックホルム大学に1年半近く留学をしたことでした。
北欧、とくにスウェーデンの教育、若者政策に興味があり、留学中も学業のかたわら、現地の若者の余暇活動施設でインターンシップをしたり、ブログにて情報発信をしたりしてきました。帰国後、ヨーロッパでで生活したいと思い、再びストックホルムへ飛んだのでした。当時はスウェーデンにパートナーがいたこともあったので、スウェーデンの大学院の学費がかからなかったことも、移住を考える大きなきっかけになりました。
一か月の生活費はどのくらい?
一ヶ月の生活費(住居費や水道光熱費、食費、通信費などの)は15万円程度になります。学生の生活ですが、円が安いのとストックホルムの物価の高さゆえにこのくらいのコストになります。例えば、通常のランチでも 1500円はかかります。奨学金を得ることができなかったので、仕事と両立する必要がありますが、賃金や待遇、労働環境は悪くないので思いのほかうまくやっていけています。
どんな人におすすめの都市?
寒さが嫌だという人がいますが、実はそんなに寒くありません。日本の寒冷地出身の僕からすれば、日本のその地域の方がよっぽど寒いです。風が強い日もありますが、それよりも長く暗い冬をうまく乗り切れれさえすれば、なんとかなります。
総じて、ストックホルムは日本人にとって、とても住みやすい都市といえるでしょう。それは、スウェーデンは「ヨーロッパの日本」と言われるように、意外にも日本との共通点が多いからです。例えば、室内では靴を脱ぐこと、勤勉、まじめ、時間に厳しい、ほどよさが美徳とされること、少し人見知りな国民性、ヲタクが多い、ハイテク、などなど数えられないくらいの共通点があるのです。
とくにストックホルムは他のスウェーデンの都市と比べれば、人々は「冷淡」で「働きすぎ」と言われているようですが、この点は日本の東京と似ています。最もありがたいのは、ビザや行政の書類関係の手続きなどの簡素化も進んでおり、英語でやりとりもスムーズにできますので、その辺りは安心できます。
以上、愛する古都、ストックホルムの紹介でした。これから留学や移住を考えている人に少しでも参考になればと思います。