このブログ・筆者のプロフィールはこちらから

なぜスウェーデンではスマホで確定申告ができてしまうのか?スウェーデンの確定申告の手順を紹介します。

この記事は約8分で読めます。

先週確定申告をすませ、所得税の納付を完了させました。ぼくはこれまでスウェーデンで2回確定申告をしてきて、昨年個人事業主になったので今回初めて日本で確定申告をしました。その経験からこんなことをつぶやきました。

確定申告はスウェーデンでは国税庁が全部計算してくれるので、申告者は申告内容があってるかどうか確認してゴーサインだすだけ。それが手紙、ネット、電話、SMSでできる。もちろん英語や別の言語での説明もある。だから日本人の俺もスウェーデン2年目でできた。ほんとこうなればいいなぁ

— Tatsumaru@東大へ逆輸入され中 (@tppay) 2017年2月28日

するとリツイート、いいねが1000をこす大反響。日本の確定申告に苦しんでいる人がいかに多いのかということがわかります。確かにぼくも初めて日本で確定申告をしてみて、書類の作成などにとても時間を取られました。以下の記事でも書いていますが、本当に日本での確定申告は大変でした。

今回は、海外の企業と仕事をする海外フリーランスとして今回初めて日本で確定申告をすることになったので、その手順を公開します。 日本だと会社員なら確定申告を自分でやる必要はありませんが、スウェーデンは国民全員が自分でやることになっています。だからぼくはスウェーデンのIT会社に勤めていたときにも確定申告をしたのですが、当時はぼくは個人事業主(フリーランス)ではなく、雇われの身として確定申告をしていました。

さらに日本で確定申告をしたのは個人事業主という立場でやったという点で、一概に「スウェーデンの確定申告が簡単」とは言い難いです。 というわけで今回は、スウェーデンの一般的な確定申告をする方法と、フリーランスがどのようにスウェーデンで確定申告するのかをまとめました。

「ポチッとな」で終わるスウェーデンの確定申告

スウェーデンでは、国民全員が 5 月 2 日に前年度の確定申告をします。自営業者だけでなく、サラリーマンも年金生活者も全員です。今では全てがデジタルになり、ネット上でポチッとすれば済むことです。

基本的には以下のステップを踏みます。

  1. 税務署から送られてきた申告額の確認
  2. 内容があっていれば承認
  3. 還付金を受け取る

税務署から送られてきた申告額の確認

スウェーデンは国民全員が 10 桁の個人番号(日本のマイナンバーのようなもの)を持ち、その番号で資産から個人情報まで全てが管理されています。個人番号によって管理された各個人の確定申告の書類(Inkomstdeklaration)が、3 月からおそくまでも4月15日まで、税務署(Skatteverket)から自宅に送られます。

税務署から送られる書類一式 | Skatteverket

もちろん税務署のサイトから個人の申告書のデジタル版をダウンロードすることもできます。今のところまだ書類、そのものも自宅まで郵送されますが、デジタル化が急ピッチで進んでいるスウェーデンでは、公的な書類を郵送するというシステムがなくなりつつあります。

メールでも電話でもアプリでも。多様な承認方法

税務署から書類で送られた確定申告書には、昨年度の収入額や利子額、年金など、どれだけの収入があったかが提示されています。これには勤労所得税額、年金保険料、源泉徴収された額や税額控除も記載されています。

こちらの記事によると、税務署が給与を把握できているのは以下の理由からだそうです。

給与所得者の確定申告を例にとると、前年の1月1日から12月31日までの給与明細書が、翌年1月に勤務先から手渡されます。同時に勤務先は、同様の給与明細書を税務署にも送付します。税務署は各種情報と照らし合わせたうえで、各納税者あてに4月1日に税額や還付額などが予め記載された申告書が送付されます。

この書類に目を通し、サラリーマンや年金生活者で別途の収入や、家や車の購入などの大きな資産の変化がない場合は、あとは承認するだけで申告は終わりです。基本的には税務署のプロの職員が計算した書類に目を通すだけでいいので、日本のように書類に収入や控除額を入力する必要がないという点でとても楽です。

スウェーデンの確定申告がユニークなのは、この「承認」の仕方がとても多様だということです。スマホのアプリ、SMS、電話、ネットでこれができます。

アプリで申告を承認する方法

アプリで確定申告を承認するには、このスウェーデン語で「税務署」という意味のアプリ「Skatteverket」をダウンロードします。

このアプリでは前年度の所得額などがすべてチェックできるようになっています。

もう一つダウンロードしておかなければいけないアプリが「Mobile Bank ID」です。このアプリは銀行口座、行政手続き、オンラインストアなどで身分証明をする際に使われるアプリで、スウェーデンに住むのなら必須です。例えば、ネット上でスウェーデンの銀行口座から引き落としをしたり預金するときには、このアプリは鍵の役割を果たします。通常、銀行の支払いや口座残高の確認をするとき、個人番号の入力と、さらに本人確認のためにこのMobile Bank IDかリモコンのような操作キーで暗証番号の入力を求められるます。

アプリ「Skatteverket」でも同じように身分証明の役割りを果たし、口座情報などを安全に共有してくれるのです。この二つのアプリを開いて、税務署から送られた申告書の内容とアプリ「Skatteverket」で提示された額が合致すれば、“Skicka in Deklaration” (申告を送信する)をクリックした終了です。

SMSで申告を承認する方法

またショートメッセージサービス(SMS)でも同じように申告を承認できます。宛先には71144を入力し本文には、自分の個人番号と署名のためのパスコード(確か税務署から送られてくる確定申告の書類に書いてある)を入力します。すると10分以内に申告を承認したことを知らせる趣旨の返信が届き、終わりです。

電話で申告を承認する方法

以下の電話番号にかけるだけでも承認ができます。

020-567 100

海外からは(+46 10 494 00 40).

音声ガイドに従うだけです。もちろん英語の案内を聞くことも可能です。

ネットで申告を承認する方法

もちろん、税務署のホームページからも同じことができます。

Privat
Skatteverket - Tillsammans gör vi samhället möjligt

ページの右上のログインページから自分の個人番号を入力すると、先ほどのMobile Bank IDで身分証明を求められます。無事、ログインをすると前年の所得が確認できるページで申告内容を確認できます。問題なければ「承認」でポチッと終了。

還付金を受け取る

確定申告は、3月22日から5月2日までの間に済ませることになっています。Eサービスで手続きを済ませれば6月の半ばには還付金を受け取ることができます。そんなスウェーデンでも以前は、申告最終日はちょっとしたお祭り騒ぎの日だったようです。その日は多くの人が税務署に詰めかけ、自分で仕上げた書類を直接税務署に出しに行ったものです。締め切りは最終日の真夜中なので、わざわざその時間に提出した人もいたようです。

スウェーデンでフリーランスが確定申告する方法

ここまで紹介してきたのは、基本的には給与所得者、つまり会社員などの人の確定申告の方法です。では、日本では個人事業主や自営業の場合の確定申告もここまで簡単なのでしょうか?

個人事業主(フリーランス)は確定申告書とは別に、NE という個人事業主申告書を提出する必要があります。ここには収入、支出、資産、負債などを記入します。専用のプログラムを使えば、自動的に作成してくれますが、毎月の帳簿をきっちりつけていなければなりません。会計士に全てお任せすれば楽ですが、私は自分で帳簿の管理しているので、その点がちょっと大変です。

また、Traktamente という出張経費やガソリン代などを控除できる項目があり、税務署のウェブサイトに海外に出張した際の各国の金額が設定されたリストがあります。為替に影響して毎年金額が変わりますが、日本での1日あたりの出張経費は 2016 年は 504sek(約 7000 円)で、それに仕事をした日数を掛け合わせて申告します。2017 年は少し上がり、627sek(8700 円)になります。

ところで、個人事業主として日本と多くの仕事をしていると、日本から支払いを受ける場合、源泉徴収税が引かれますが、スウェーデンと日本との間に、2015 年に源泉所得税の改正がありました。スウェーデン在住であることが証明されれば、ロイヤリティなどの使用料が基本的に免税となります。下記から詳しい情報をご覧いただけます。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/0014616-51.pdf

税金の高いスウェーデンでは、支払う税金額を換算するとため息がでる思いですが、その税金によって福祉が賄われていますので、納得して納税する人が多いようです。また、納税する自分を誇りに思う人も多数派です。とはいえ、近年は難民が増え、税金の使い道に難民支援が優先されることもあり、少々複雑に感じないでもありません。

まとめ

スウェーデンの確定申告の方法、いかがだったでしょうか。こういうシステムだから簡単なんですね。簡単な裏には、税務署当局が個人の所得を把握しているという事実があり、ここは賛否両論あるでしょう。ただスウェーデン政治経済情報さんもつぶやいているように、確定申告の煩わしさから開放されるメリットは共感できます。

(承前)この「既に所得額が記載されていてサインするだけ」な確定申告書は、個人番号を使って少なくとも金融所得レベルまでは税務当局が捕捉しているからこそ可能なこと。多くの人にとっては、多少の税率の差よりこのように税金をめぐる「面倒くさいこと」がないことの方が満足度に結びつくのかも。

— スウェーデン政治経済情報 (@sweden_social) 2016年4月12日

むしろスウェーデンでは払いすぎた税金を取り戻すという意味合いが強いので、それが確定申告をしようというモチベーションに繋がっているようにも思います。

日本もe-Taxで申請をしておけばネットでも確定申告もできますし、今年からクレジットカードで納税もできるようになりました。 しかし、まだまだこの煩わしさ解消のために日本の納税制度が改善できることは多くありますね。マイナンバーも始まったので、Fintech分野もスウェーデンにあるようなアプリを開発して、あらゆる金融系の事務手続きを簡略してほしいものです。

タイトルとURLをコピーしました