消費者の発掘を支援する、ある消費者教育の事例
某研究会で知ったのだけど、ある企業が学校現場に入り込んで「金融教育」を実施し、その企業の「未来の消費者を育成する教育」の事例が日本でみられるとのこと。
そもそも「消費者教育」とは何か。消費者教育の推進に関する法律によると、
「消費者教育」とは、消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を含む。) 及びこれに準ずる啓発活動
とされています。つまり企業がマーケティング活動の一環として消費者教育の名のものとに、消費者を発掘するような教育とは対をなすものであります。
「外部人材の活用」による負担軽減が追い風に…
エグいのは教員の多忙化を踏まえた負担軽減策として国が打ち出している「外部人材の活用」や、食育や法教育や消費者教育の推進が追い風になってしまっているという。学校の外部人材の活用とはいえ、いくらなんでもそれでは公教育の意味が問われるでしょう。
市民教育と金融教育のバランス
市民教育なしの金融教育は、「ホモエコノミクス」(経済的利己的人間)を助長しちゃうだけではないでしょうか。個人が連帯して社会つくっていく教育が市民教育(シティズンシップ教育など)だとしたら、金融教育は、個人がサバイブするための経済の教育といえるでしょう。
私たちはどっちの教育が重視される社会に住みたいでしょうか。両者のバランスをとったものが本来的な「消費者教育」なのでしょう。
「啓発アプローチ」の範疇の消費者教育
内閣府の令和4年版の子供・若者白書が公開されています。
日本の若者政策である「子ども・若者大綱」では、「社会形成への参画支援」策が盛り込まれています。しかしその内実は
「社会形成に参画する態度を育む教育の推進」
「ボランティア活動等による社会参画の推進」
(子供・若者育成支援推進大綱(令和3年4月,p.26)
の2本柱となっています。(子ども若者の参画による施策の形成策は別項目で盛り込まれています)
しかし、若者政策の研究者としては「社会形成に参画する態度を育む教育の推進」を若者政策として扱う意義があまりわからないのが正直なところです。なぜなら、その中身があまりに社会科教育的であって、学校教育であつかっているようなものばかりだからです。
「社会形成に参画する態度を育む教育の推進」の中身とは以下の通りです。
・学校教育 ・主権者教育 ・法教育 ・租税教育 ・金融経済教育 ・労働者の権利・義務に関する教育 ・消費者教育 ・社会保障に関する教育、・外交や防衛についての情報提供・意識啓発
消費者教育もこの中に位置付けられています。
各々のトピックの教育は必要ではあるでしょう。しかしそれは公教育でカバーすることであって、ノンフォーマル教育が主となる若者政策ではむしろメインとなっていけないのです。(欧州の若者政策のスタンダードより)
これは、日本の子ども若者むけの社会参画施策が「啓発アプローチ」に傾倒していることの何よりの証拠です。そもそも他省庁でやっている「社会参画」っぽい施策を集めてきてまとめているだけのようにしか見えません。若者の社会参画施策の「本筋」である若い世代への権限委譲は、このように不十分なのが現状です。
どういった権限移乗が必要かは、以下の論文でも触れているのでどうぞ参考にしていただければと思います。
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