広島県三原市の三原青年会議所(JC)からインタビュー取材をいただき、同法人が発行している新聞「やっさもっさ」新聞に掲載いただきました。許可を得てこちらにも掲載させていただくことにしました。対話形式なのでとても読みやすいと思います。
それにしてもこの新聞、ボランティアでやられているようで、時間を割いてしっかり下調べもしていただき、本当に尊敬します。PDF版はこちらからダウンロード可能です。
以下本文をブログ調にして掲載します。
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本紙はこれまで18歳選挙権について高校生へ のインタビュー、三原市選挙管理委員会への取材 を行なってきました。今月号は18歳選挙権を既 に実施している外国の現状を紹介します。
今回取材させて頂いたのは、ストックホルム大 学院国際比較教育研究課程に在籍し、ヨーロッパ・ 北欧の社会、若者、若者政策を研究している両角 達平(もろずみたつへい)氏です。
スウェーデンの若者の投票率は非常に高い
三原JC(以下「JC」): スウェーデンでの若者の投票率について教えてください。
折れ線グラフをご覧ください。投票率は全体で約8割、26歳以下でも7割を超えています。スウェーデンの2010年の総選挙では全体の投票 率は84,6%であり、そのうち18歳から29歳までの投票率は過去最高の79.5%にものぼりました。
Ungdomsstyrelsen, Fokus 10
J C : 日本の2014年12月の衆議院選挙の投票率 が52%前後と戦後最低を記録し、20歳代の投票率 が37.89%だったことからすると若者に関しては2 倍以上も投票率が違いますね。
投票率が高い理由
J C :なぜスウ工ーデンでは若者の投票率が高い のでしようか。
いくつか理由が挙げられます。まずは被選挙権の年齢の違いがあります。スウェーデンでは被選挙権年齢も18歳です。つまり18歳で、立候補した同年齢の友達に投票できるわけですから選挙に対するスウェーデンの若者の感覚は我々日本の若者 とは違います。
次に、投票率を向上させる取り組みが挙げられま す。スウェーデンでは、初回有権者のためのウエブサイトやポストカードの送付、地域の新聞による情報掲載などを行ない、過去最高の投票率の結果を出しています。さらに、事前投票は図書館などの公共 施設でもできるようになっています。2006年の選 挙では有権者の31%が郵便による投票を利用しています。 しかし、日本と最も違う特徴として挙げられるのは政治に関する若者の関心が高いという点です。国が行なった『Ung ldag 2012 (今日の若者2012)」 という調査では、16〜25歳の若者の3.5%が政党組織所属 (過去10年間で変化なし)、2012年の16 〜25歳の若者の政治活動参加率71%、そのうち50%の若者がインターネットを介して社会的な問 題への支持を表明、40%の若者が自分の地域に影響 を与えることに興味があり、17%が政治家に意思表 明する機会があると感じていることが判明しました。
J C: 政治に関する若者の関心が高い理由として どのようなことが考えられますか。
私は教育と若者の社会参加を推し進める 「若者政策」にあると分析しています。
スウェーデンでの選挙教育事情
J C : スウ工ーデンにおける選挙に関する教育に ついて教えてください。
スウェーデンでは学校選挙2014という取り組みが行なわれています。学校選挙2014とは、 スウェーデンの国政選挙が実施されるたびに行なわ れるプロジェクトです。日本でいう中学生と高校生 が主な対象で、実際の選挙に先駆けて生徒が投票を 学校で行なうというものです。もちろん投票は「模擬」なので実際の国政選挙に結果が反映されることはありません。同じ取り組みはスウェーデン若者市民社会庁、スウェーデン生徒会連合、スウェーデン 学生自治会、欧州若者議会からのサポートを受けています。スウェーデン全土で1,629校が参加してお り、参加する生徒総数は46万5,960人です。学校選挙と似たような取り組みは日本にもありますが、 スウェーデンでは国ぐるみでこの取り組みを財政的 にも支援しているという点で大きく異なります。
J C: 生徒は各政党の政策や公約についてどうや って勉強するのですか。
学校の授業で、生徒に政党の代表に成り切ってもらい、ワークショップ形式での討論会を行ないます。生徒は担当政党の主義主張や政策を勉強して本番に臨みます。
三原JCとして選挙への若者の関心を高めるための取り組み
J C: 三原JCが選挙への若者の関心を高めるため にできる取り組みとしてはどのようなものがあるで しようか。
Ungdomsstyrelsen, Fokus 10
スウェーデンで政治参画の度合いを示すときに使われる「若者の政治参画の梯子」というものがあります。英語で記載されていますが図を見ると、右側に政治参画の度合いによる行動内容が記載されています。梯子の下の方に行くほど政治参画の 度合いが低いと言えます。選挙での投票は英語では 「Voting」といいますが、「Voting」は政治参加の度合いでいうと実は一番下から2番目に低いものです。 今、日本での選挙に関する教育や模擬投票等の事業は投票という政治参画の度合いが非常に低い段階をゴールと捉えて行なわれているものです。
「若者の政治参画の梯子」を見ると分かるように投票はゴ ールではありません。その事実にすら気付いていない人があまりに多いというのが現状です。この現状を前提として三原JCには三原JCが考える「若者の治参画の梯子」を作成し、地域の若者の政治参画 への筋道を作っていただきたいです。若者にとっては国政よりも地方政治の方が身近な問題であり当事者として政治参画がしやすいと言えます。
地域に根差したまちづくりを進める組織である三原 JCの様な団体こそが若者の政治参画を助ける役割を果たすのに適任であると考えます。その結果、日本 の若者に当事者意識が芽生え政治参画の度合いが高まってゆくのではないでしようか。
取材を終えて
両角氏との取材で気付かされた点は私たちに何 を期待しているかという質問の時です。『JCは「若者に当事者意識を持たせる」などの事業をすべき なのか』 という言葉に対し「持たせる」という表 現は適当と言えないのではないかと両角氏が指摘 しました 「子どもであつても大人以上に政治につ いて真剣に勉強している者もいる。
そんな彼らに 対して大人がいわば上から目線で子どもを変えよ うとするという発想は正しくなく、子どもも大人 と同じくー人の市民として扱い、彼らが政治参加 しようと望む時に黙って協力してあげるのが大人 の果たすべき役割であり、そうして子どもに全て を任せることで政治が変わっていく」と回答しま した。JCの活動も自分たちの考えの押し付けであつ てはなりません。今回の気付きを教訓として今後 の事業を行なってまいります。
三原JCさん、きれいにまとめていただきありがとうございました。
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