最近よくスウェーデンの大学進学率について聞かれることが多かったので、今一度復習をします。
大学進学率とは?
大学進学率とは、大学や専門学校などを含むいわゆる高等教育へ進学した人の割合を示す数字です。様々な統計がありますが、やっかいなのがそれぞれの調査によって定義が異なり数字も異なるということです。
日本の大学生が若い理由
ぼくはもともとスウェーデンの大学への進学率は低いと思っていました。なぜなら2015年度に高校を卒業するスウェーデンの生徒の60%が、3年以内に大学への進学を予定しているという数字を知っていたからです。女子は65%、男子は55%。(スウェーデン統計局) しかしこの数字は、3年以内の進学であり、進学を予定しているに過ぎないという点で進学率とは言い難いです。
またOECD(2013)によると、大学に入学する学生の平均年齢は日本は19 歳以下ですが、スウェーデンは25歳以上とのことです。以下、報告書より抜粋。
伝統的に生徒は、高校を修了したら即座に大学へ進学することになっていたが、今日でも多くの国でこれが当てはまる。例えば、ベルギー、日本、インドネシアにおける大学への入学時の平均年齢は19歳以下である。しかし、これは国によって大きく異なる。なぜなら、高校修了年齢の違い、教育機関のキャパの大小、高等教育前の労働市場への参入コストが異なるからだ。アイスランド、ニュージーランド、スウェーデンはこれに該当し、大学への入学者の平均年齢は25歳以上である。OECD並びにG20諸国の平均的な入学年齢は22歳であり、平均的に4.4年間を大学で費やすことになる。(Education Indicators In focus, 2013)
以上の数字からも、スウェーデンの若者は高校卒業後は日本のようにすぐに大学に進学しないということがわかっていました。しかし「大学進学率」ではないので説明がしづらいままでいました。
日本よりもスウェーデンの大学進学率が高いのか?
それでもう少し調べたらウプサラ大学に留学していた小串さんが似たようなテーマできっちりまとめていた記事をみつけました。そちらを参考にスウェーデンと日本の大学進学率を割り出してみようと思います。
日本の大学進学率は低いというイメージが広まっているようだが,各国の細かい事情や統計の取り方の違いを理解せずに…
文科省の大学進学率の国際比較のスライドだけをみると、日本は大学に進学している人の割合が低く、スウェーデンは高いようにみえます。
日本は51%、スウェーデンは76%なのです。スウェーデンの高校生で3年以内に大学に進学しようとしている人が6割で、大学入学年齢の平均が25歳なのに、これは不思議な数字ですよね。
この数字の問題点
小串さんは同記事で、スライドで提示されているOECDの調査の数字について以下のように指摘しています。曰く、
(文科省の)グラフが扱っているのは生涯進学率で、一生のうちに大学進学する割合を推定した数値を示していること
つまり文科省のグラフは、「高校卒業後にすぐに大学に進学する人の割合」を示しているのではなく、「生涯にかけて大学に行く人」の割合なのです。当然、社会人になってから学び直しをする人などもここに含まれることになります。北欧は大学の学費がかからないので、そういう人の割合は必然的に高くなります。
もう一点は「大学」の定義。
OECD各国では、 大学の定義としてのAタイプ(大学・短大)とBタイプ(専門・職業学校)を統合的に扱っている教育機関も多く、国によっては区分が曖昧であること
文科省の参照にしているOECDの2010年のデータでは、大学進学率にはタイプA(大学・短大)のみを扱っているので、数字が低くなっているとのことです。つまり、文科省のスライドでいう大学進学率とは「一生のうちに専門・職業学校を除く大学へ進学した人の割合」であるので、高校卒業後の進学率とは異なることがわかります。
専門学校も含んだ日本とスウェーデンの大学進学率
これらを指摘した上で、小串さんは専門学校・職業学校を含んだ、2013年のOECDの大学進学率の国際比較の統計を紹介しています。この元データをダウンロードし、Google Spreadsheetでグラフ化してみました。
ちょっと文字が小さいのが申し訳ないですが、これによると専門学校・職業学校を含んだ大学進学率は日本は78%、スウェーデンは56%であることがわかります。OECDの平均は67%です。
ちなみに留学生を除外した値と、留学生を除外した25歳以下の値を反映した数字は以下の通りです。
残念ながら日本は進学率しか出ていませんが、スウェーデンは留学生を除いた進学率は51%で、25歳以下の若者の進学率は40%です。
これですっきりです。
まとめ
スウェーデンの若者は高校を卒業後、日本のようにすぐに進学をしないということが再確認できました。また国際比較をしたグラフは山のように出てきますが、信頼がおけるソースであっても、その調査のそもそもの目的や単語の定義によってアウトカムが全く異なるということは、今後も忘れないようにしていきたいです。