今日は日本福祉大学東海キャンパスで、サービスラーニングの受け入れ先となっているNPOの皆さんと一緒に「デモクラシーフィットネス」を体験する日。
おりしも今日は、#東日本大震災から15年
発災後、現地で大きな力を発揮したのは、多くの市民活動やNPOの存在でした。… pic.twitter.com/ghHGiKVMAb— 両角達平 (たっぺい) (@tppay) March 11, 2026
東日本大震災から15年となる3月11日、日本福祉大学東海キャンパスで、サービスラーニングの受け入れ先となっているNPOの皆さんとの交流会を開催しました。
デモクラシー・フィットネスとは?
今回のテーマは、少しユニークな名前のプログラムで、「デモクラシー・フィットネス(Democracy Fitness)」。

c 特定非営利活動法人 地域福祉サポートちた
講師は、NPO Democracy Festival Japan 代表の藤田さなえさん。デンマーク発祥のこのプログラムは、民主主義を「筋トレ」のように鍛えるという発想から生まれた、対話トレーニングです。
民主主義は「そこにあるもの」ではない
民主主義というと、日本では選挙制度や議会政治、憲法といった制度の話になりがちです。しかしこのプログラムでは、民主主義を制度としてではなく「日常の実践」として捉えます。相手の話を聞くこと、自分の意見を言うこと、異なる意見と対話すること——そうした行為そのものが、民主主義を支えているという考え方です。
講義の中で、とても印象的な言葉がありました。
「民主主義はそこに置いてあるものではなく、作り続けてメンテナンスし続けるもの」
一度制度を作れば成立するのではなく、人々が意見を交わし、対話を続け、合意を探ることによって初めて維持されるものだということです。
そのためには、市民一人ひとりの能力が必要になります。デモクラシー・フィットネスでは、その能力を「市民性の筋肉」という言葉で表現します。好奇心の筋肉、勇気の筋肉、聞く筋肉、そして反対意見を表明する筋肉など、さまざまな筋肉があります。
日本では「共感する力」は比較的強い一方で、反対意見を表明する筋肉が弱いと言われることが多いそうです。確かに日本では「空気を読む」ことが重視される場面が多い、と改めて感じさせられました。
ワーク①「塩も胡椒も振らずに聞く」——ディープリスニング
最初はディープリスニング(Deep Listening)を通じて深くきく筋肉を鍛えました。デモクラシー・フィットネスでは、聞くことを三段階で考えます。まず「ディープリスニング(深く聞く)」、次に「アクティブリスニング(理解するために質問する)」、そして「コミュニケーション(自分の感じたことを伝える)」です。
方法はシンプルで、ペアになり片方が90秒話し、もう一方は評価せずに聞いたうえで、1分間「そのまま返す」というものです。ここで重要なのは「解釈しないこと」。藤田さんはこれを「オムライスに塩も胡椒も振らないで、そのまま受け取る」という印象的な表現で説明していました。つまり、評価しない、まとめない、意味を補わない、ということです。
このワークをやりながら、私は話を聞いているときついつい「つまりこういうことだろう」と頭の中で整理してしまうことに気づきました。これは研究者としての習慣でもあるかもしれません。しかしその過程で、相手の言葉を自分の言葉に変換してしまっていました。理解しようとしているつもりで、実は解釈してしまっている——この癖は大きなミスコミュニケーションの原因になるなと気付かされました。
ワーク②「あなたの意見には反対です」——反対意見を表明する筋肉
もう一つのワークは、反対意見を表明するトレーニングです。
いくつかのトピック(15歳選挙権に賛成か反対かなど)を全体できいて賛成派と反対派にわかれ、ちょうど半々になったトピックをとりあげ、賛成派と反対派がペアになります。今回は、男子校・女子校の廃止に賛成か反対かでした。
ペアになったらまず自分の意見を「私は〜に賛成です。なぜなら〜だからです」と述べ、別の人が「私はあなたの意見に反対です。なぜなら〜だからです」と答えます。
ここで重要なのは、「人と意見を分けること」です。「あなたが嫌い」ではなく「あなたの意見には反対」という形で対話を行い、最後には「反対意見に感謝する」というルールがあります。違う意見があるからこそ、社会はより良くなる——という共通の目標をもってさえいれば対立意見だってありがたいもになる。この前提の共有が対立意見を安心して表明できることにつながると理解しました。
「あなた自身であること」というグランドルール

講師の藤田さん c 特定非営利活動法人 地域福祉サポートちた
今回のワークの中でも特に印象に残ったのが、グランドルールの考え方です。とりわけ「Be yourself(あなた自身であること)」というルールが心に残りました。ワークショップの場では、つい「良い参加者になろうとする」「正しいことを言おうとする」という姿勢が生まれがちです。しかしこのルールは、そうした姿勢を問い直します。「そのままの自分で参加すること」それ自体が、対話の前提になるという考え方です。
デンマークの「デモクラティックな組織」
もう一つ印象に残ったのは、デンマークの組織におけるデモクラティックな経営の話。休憩時間のブレイクトークで話していただいた内容です。
デンマークでは民主的な経営をしている組織だと従業員の満足度が高いという研究があるようです。その組織の構造を同心円型の図で説明していただいたのですが、中心に会社員全員との共同での意思決定の場があり、その周囲にプロジェクト、委員会、チームなどが配置されるというものです。日本ではどうしてもトップダウンになりがちな組織運営ですが、デンマークでは参加と対話を前提にした組織運営が実践されている事例もあるとのこと。民主主義は政治制度だけでなく、組織のあり方にも関わるものと考えさせられます。
サービスラーニングと市民性
今回の交流会には、サービスラーニングで学生を受け入れているNPOの職員さん参加していただきいました。NPOや地域活動と関わりながら学ぶサービスラーニングは、市民として社会に関わる力を育てる機会でもあります。
今回のように、市民性や民主主義的な対話をテーマにしたワークは、その現場にとっても重要なテーマです。今後は、大学・学生・NPOがどのように協働して学びをつくっていくのかを、サービスラーニングと市民性教育の関係をより明確にしながら考える場があるとよいと思っています。
また、市民活動の捉え方の違いも興味深い点でした。日本ではNPOというと「社会課題を解決する団体」として理解されることが多い一方、北欧では余暇活動やコミュニティ活動なども含めた、広い意味での市民社会の活動として捉えられています。こうした文化や価値観の違いを考えることも、示唆の多いテーマだと感じました。
民主主義も「心の筋トレ」
民主主義は制度だけでは動きません。人々が聞き、話し、違いを受け止めることで初めて機能するものです。デモクラシー・フィットネスの面白さは、その力を「トレーニングできるもの」として捉えている点にあります。筋肉と同じように、使わなければ衰え、使えば鍛えられる。そう考えると、民主主義もまた「心の筋トレ」なのかもしれません。分極化するこの時代にこの、対話の文化を作っていくことをこれからも意識していきたいところです。
本当に、貴重な機会をありがとうございました。


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