アイドルから若者の意見をきく東京 vs 青年副市長がいるソウル|若者参加はソウル青年政策ネットワークから学ぶべし

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日本でも若者の声を政策に反映させる活動や政策が、各地でみられるようになってきていますが、実はお隣の韓国では首都ソウルで、ソウル市のバックアップを得ながら活動ができています。

ソウルの若者支援の現場を訪ねるスタディーツアーの2日目には、ソウルの若者声を政策に活かす取り組みである「青年政策ネットワーク」を訪問しました。ソウル青年政策ネットワークは、恩平区に位置する青年ハブ内に拠点を構えています。

ソウルに在住しており、またはソウルを拠点に活動している19〜39歳の若者が参加可能で、ソウル市に必要と考える政策を若者が提案する活動をしています。2013年からソウル市が運営しており、毎年新たなメンバーを募集して構成され、今年で第4期に入ります。

主な事業は

・200人余りが参加する「おせっかいキャンプ」

・地域での交流会

・ソウル市および市議会との政策懇談会

・ソウル市への政策提言のを行う「青年議会」を年1回開催

です。

今回の視察訪問では、以下の4名の方からヒアリングをしました。(敬称略)

  • 2014年から青年政策ネットワークから共同運営委員長:キム・ヒソン
  • 青年議会の活動を4年、ここにきて1年 :イ・チョンムギ
  • 昨年から青年政策ネットワークで活動:キム・ガンポ
  • 青年ハブ職員:キミ・ミンジェ

以下インタビュー録、全文を掲載します。


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ソウルの青年政策ネットワークとは?

今度は青年政策ネットワークのお話をさせていただきます。青年政策ネットワークは青年手当の施策を進めた団体です。青年政策ネットワークは、若者たちが自分の日常のなかでの悩みを、政策として解決していくための社会参加の形だといえます。若者たちの日常のなかにある悩みというのは、その多くが政策と結びついているといえます。政策というものは私たちの日常から始まっているといえます。若者たちが抱える多くの悩みも、当事者たちが直接参加して当事者として提案して、実行し、さらにその実行に対する評価にも参加する。そのような取り組みを1年間に4回行なっています。

市の予算が是正される6・7月までに、若者たちが自分たちで作った政策をソウル市に持ち込み、青年議会を運営します。年末には、青年議会での活動を含めた若者たち全体の集まりがあり、活動を共有する「青年週間」というものがあります。この青年週間というのは、活動のシェアだけではなく、若者たちがもつ問題意識をシェアする「N個のカンファレンス」というものが開かれます。小規模のグループがたくさん集まって、自分たちの活動を紹介したり議論をしたりします。様々な青年団体とお互いに交流する場所です。青年議会というのは、活動する若者たちの市民参加の場といえるでしょう。

<以下からは、視察参加者からの質問です。>

参加する若者たちにはどんな人が多いのですか

青年政策ネットワーク、略して青年ネットでは、19歳以上39歳未満のソウルに住んでいるかソウルで活動している人(通勤・通学)が参加者の条件として挙げられています。学生もいますが、多くは活動家といわれる人や社会人、もしくは就職の準備をしている人です。20代中盤から30代中盤がボリュームゾーンです。大学生の中でも、特にこの大学が多いということはなく、様々な大学の人がいます。ただし、関連した社会活動を勉強している人がくることもたまにありました。

当事者である若者が政策を動かす意義

若者自らが政策を動かすということに対してどのような意味があるのでしょうか。

若者の問題に対して、若者は「原因」であってそれを解決する主体とは思われてきませんでした。若者とは教育が必要で未成熟な存在と思われていたり、自分の問題だけに注目する利己的な存在だと思われていたりしました。大変な状況の中で頑張っていても認められていない可哀想な存在でした。ある程度年配の人の中には、社会がある程度成熟したにもかかわらずそれに感謝できず、不平不満を言ってしまう存在だという認識もありました。青年という対象が、社会の中で同等の市民であるとか、主体だと思われてこなかったのです。若者たちが抱える問題の多くは、社会構造に由来するものです。

青年たちが同等な主体であるのだということを社会に気付かせることが大切です。青年たちが青年問題を解決する国家的な主体なのだということ、効果的な方法・手段であるのだということ、自分たちのことは自分たちが一番よくわかるのだから「自分の問題は自分で解決するのだ」と発信することです。

若者が動かした政策に対して、社会や大人たちはどのように捉えるのでしょうか。

非常に様々な意見が混在しています。社会全体が辛いのにどうして若者たちだけ気にしなくてはならないのだという声もあれば、若者たちはすごいなあという声もあります。大人世代としてこうした社会をつくってしまったことに対する、申し訳なさを感じる人もいます。ただし若者たちがもっている課題が非常に大変なものだということは大部分の大人たちが認識しています。それを解決する細かい政策については、利害関係者たちの間でも様々な意見があります。

例えば、住居政策については、青年たちのための寮を作ると発表したところ、非常に多くの反対意見がありました。不動産の相場が下がってしまうだろうという意見、犯罪が起こるのではないかという意見などです。ポジティブな反応からネガティブな反応まで様々な意見がありました。

どんな経緯でこの団体が作られたのでしょうか。

これまで政府で、青年政策に対して出てきた意見は、基本的に「雇用をつくる」という一つに限られていました。若者たちの抱える問題は「就職ができない」というものでしたから、就職口をたくさん作ってあげればよいという考えにしばられていました。地方自治体レベルでは様々な施策があるのですが、国のレベルで法律的にも規定されているという意味では、雇用の保障のみでした。これは次の大統領選に非常に関心が高まっている背景でもあります。

青年政策というのは仕事周りの対策だけではなく、文化や住居、教育や生活の安定、負債問題、若者たちが集まるスペースの確保などもっと拡大すべきだという問題意識がありました。2011年に、現在のソウル市長・朴元淳が就任したのですが、分野別に市民との対話をしていこうとの意思のもとで、名誉市長という制度を作りました。例えば女性や小・中工業者、もしくは障害者や移民、などでそれぞれに副市長をおきました。そのカテゴリの一つに「青年」もありました。

そこで就任した青年副市長が、今申し上げたような問題意識をもって、若者たちと一緒に青年政策を作ろうと動き出しました。同様の青年活動団体と一緒に立ち上げたのが、青年政策ネットワークです。これは2013年のことでした。実は前任の副市長は任期を終えており、キム・ヒソンさんが次の副市長です。

どんな基準で青年政策というものを判断しているのでしょうか。

いまソウル市で青年政策として、基本計画を4つの分野で設定しています。青年の力量強化、雇用、安定した住居、そして居場所の確保です。どういうものを青年政策として規定するかという基準については、当事者の若者たちが抱えている問題、中でも若者たちが普遍的に抱えている問題を解決するための必要な手段を、青年政策として呼んでいます。以前、韓国の政策というものは就職政策に焦点が当たっていました。就職した場合にこれをあげるよ、という政策なのです。政策の手の届かない場所に青年がいたといえます。

若者たちが就職できずにいるのが問題なのに、政策の目線は就職した若者に向いていました。我々が考えたのは、就職できずにいる若者のための、より多様な、例えば福祉政策のようなものだとか、そういった政策が青年政策といえるのではないかということです。

逆に議員が意見を聞きにくるソウルの青年議会

政策提案はどのくらいの頻度でどのくらいの回数おこなっているものなのでしょうか。

今年の活動は3月末から始める予定なのですが、まず年始に集まった人たちが自分の持っている課題意識などについて話し合います。そこで練った政策提案を、7月ごろに青年議会へ提案します。実際に議会で提案されたら、具体的な実施方法について市の職員たちと話し合っていきます。

追加で青年議会というものについても話しましょう。青年たちの意見を届ける、様々な青年たちの自主的な集まりが青年議会なのですが、これは秋に開かれます。2015年に初めて開かれたものです。2016年では8月に開かれました。若者たちの意見を実際に市に届けるため、10個の分科会をテーマ別に開きます。例えば雇用や住居、負債、市民教育、環境問題、障害者、性的マイノリティのような多様な分野の問題に対して、新しい政策を提案したり既存の政策に対する改善案を提案したりします。実際に市の政策担当者が分科会の会議に入り、直接若者たちと質疑応答を行います。それをソウル市長の本会議場でも行い、「なぜこの政策が実現しなかったのか」など質疑応答を行ったり、「この政策についてどう思われますか」と見解を伺ったり、「青年たちのこのような状況がありますが、どれほど把握されていますか」と尋ねたりします。

このように青年議会は運営されます。分科会の前には、直接市長や議会の人たちが、現在ソウル市が行っている施策について若者に発表します。それを受けて分科会で細かい討論をするということです。一昨年から、ソウル市議会の中で特別委員会として青年発展特別委員会というものが構成されることになりました。与野党の議員20人ほどが参加し、市議会議員たちがソウル市議会の中で、青年問題解決のため活動しています。この委員会所属の市議会議員のうち一部は、青年議会にも参加しています。中にはそこで、青年政策の提案をきいた議員が、青年たちに逆に意見をきいたり、議会を動かしてくれたりすることもあります。

一例として、障害のある人たちが観光をするときに感じる様々な不便についての議論がありました。ソウル市の障害者関連の部署が「それは自分たちの管轄ではない」と押し付けあっていたような問題です。青年議会でその議論をきいた議員が、市の担当職員に「これはどうなっているのですか、きちんとやりなさい」と動かしてくれたのです。

確認なのですが、青年ネットと青年議会は全く別物なのでしょうか

青年議会は青年ネットの重要事業のうちの1つです。参加者たちがつくった提案政策というものを公式的に、大きな規模で提案するための場が青年議会です。1つのパフォーマンスといってもいいかもしれません。青年議会で実際の議会場を貸し切るためにはかなりの困難がありました。2015年当時には、市議会からの強い反発もありました。選挙で当選してもいないのに、青年議員たちが議場を使うのはいかがなものかという意見がありました。市議会は歴史のある重要な場所なのだからむやみに使ってはならないという意見ですね。ですから最初の年は市長自らが、市議会の議長と交渉しました。

次の年には、青年発展委員会と一緒に共同開催することにしました。そこには議員の方も所属しているので、もう少しスムーズに議場を借りることができました。参加した市民の中にも、青年議会というものがあるのだということを初めて知った人や、市議会の議場に初めて入った人がいました。その議場で市の議題に対して直接話し合い実現に結びつける、というプロセスを経て、参加者たちは非常に大きな達成感を得ました。市民としての自分、というアイデンティティを感じられる大切な機会となりました。

重なった質問なのですが、まず青年政策ネットワークは個人か団体どちらで形成されているのでしょうか。また構成メンバーが青年議会を形成するとのことでしたが、青年議会ではさらに多くのひとが関わるのかそれとも青年ネットの中だけで構成されているのか、どちらなのでしょうか。

青年ネットは個人も団体も両方の参加者がいます。団体の場合は、例えば協力関係にある団体のチームリーダーの方などがいらして、一緒に活動します。青年議会について、最初の年度は半分が青年ネットのメンバー、半分は議員として新しく選んだ人たちでした。去年は青年ネットのメンバーだけで青年議会を行いました。

募集の段階では300人くらいが申し込み、最終的に最後まで活動するのは100人くらいになります。だんだん忙しくて抜けていく人もいます。はじめは公募で広く募り、面接などで選抜はしません。

包括的な若者参加支援をする青年ハブ

ここで青年ハブについてもうすこしお話ししましょう。政策というものは普通政府が先に動き始めて進み出すものだと思われるのですが、青年政策の場合は政府が何も動かなかったので自治体が初めに動き始めました。最初に始めたのがソウル市で、青年ハブという若者たちへの居場所をつくりました。いまはこの動きがソウルだけでなく全国的に伝播してきています。ハブでの青年支援の事業がベンチマークされており、現在では中央政府でも支援に対する注目が高まっています。

青年ハブで重点的に見ているポイントが2つあります。1つ目が活動に対する支援、2つ目がそれを通じた関係づくりです。人が会い、関係を作り、社会問題について話し合う中で、お互いに助け合って力をもらうというものです。韓国の若者世代というのは、出会うための余裕がありません。人と会うためにはお金も時間も場所も必要ですが、彼らにはそれがないので、社会的な関係が形成されない問題が起こっています。ハブでは青年の関係づくりを、一つの支援事業として考えています。そしてその関係網の中で個人が活動していくというのが支援事業です。

3人が集まって何かをしよう、例えば一緒にごはんを食べようとか、そういった集まりがあればその集まりに対して100万ウォンくらいの支援金を渡します。それに対して特に報告書などの提出を義務づけることはありません。このような支援を1年間に200くらい行なっています。また、そういった集まり同士の集まり、を1ヶ月ごとくらいに作っています。

例えばある二人が雑誌を作る集まりをし、別の人が映画を作り集まりをしているとします。彼らが会った時「その映画おもしろそう、わたしたちの雑誌で紹介したい」などとまた新たな活動が生まれます。そういった関係網を作っていくことによって、互いが互いの役に立っていくような関係づくりができます。それが「青年参加」というものです。青年の活動に対しては様々な施策がありますが、一番ハードルの低いのがこの青年参加です。その集まりの中で「僕たち創業しようよ」となる人が生まれるかもしれない。そういった人たちへの支援もまた別にあります。例えば、何かプロジェクトを進める人への支援があり、それは報告書などの提出が必要です。彼らへの支援を通じて、青年参加のような集まりがさらに上の段階へステップアップすることを期待しているのです。

若者たちは社会に出たいと思っているでしょうが、実はそれほど就職口は多くありません。企業にお金がないので、若者たちを就職させたくてもさせられない事情があるのです。そこで、若者たちが会社で仕事ができるよう、(青年)ハブが給料を払うという施策もあります。給料はハブが払い、働き先は企業ということです。これはソウル市の雇用支援事業の一つです。名誉副市長のキムヒソンさんも、元々はこの事業を通じて働きにきています。社会の中に参加する機会を提供するのが大切だということですね。仕事をする機会や経験を通じて、自分が本当に仕事に就いて大丈夫なのかどうか考える機会を与えているのです。

給料をハブが払うという支援には、期限はあるのですか

あります。元々は11ヶ月が期限で、一年働いた後若者はその後もその企業で働き続けるのか、企業としても雇用し続けるのかを判断します。

企業が求人を出すのですか

この事業はハブが総括していますが、まずは事業に参加したい企業を募集します。そこで多くの企業が応募するので、彼らに事業の趣旨を説明します。その上で、若者たちにとって良い影響を与える企業を選定します。次に若者たちを募集します。そして企業と若者がマッチングするマッチングパーティーを設定します。その後働き始めるのですが、11ヶ月ののち、1度だけ延長が可能なので最大で23ヶ月この制度のもとで働くことができます。


もう「ヨーロッパとは文化が異なるから」は言い訳にできない

インタビューいかがだったでしょうか。ソウルの青年議会、青年ネットワークの理解がより深まったのではないでしょうか。

正直、この話を聞いて日本の若者の参加政策の未来をみているように感じました。日本でも若者の意見募集事業は、地方自治体のみならず国レベルでも推進されていますが、ここまで包括的にできているところはないでしょう。

若者参加が単なる意見募集に止まらず、政策意思決定の議論の場で取り上げられていること、財源を投入すること、空間を確保すること、若者当事者を政策意思決定者にしてしまうこと、参加のチャンネルを多様に(フォーマルvsインフォーマル、トップダウンvsボトムアップ)など、若者の参画政策の本質的な部分をカバーしている政策を打っているのがソウルの若者参加政策です。スウェーデンはこれまで若者政策の先進国と紹介してきましたが、お隣の韓国でもこのような動きがあることは、「儒教圏は異なる文化だから」「ヨーロッパとは文化が異なるから」という言い訳がもはやできないことを示しています。

翻って日本では、若者参加が有名人懇談会になっています。

2017年2月、「いろんな分野の若者から意見を募るのが懇談会」として開かれた東京未来ビジョン懇談会で行ったことといえば、たかみな、伊勢谷、パックンなどのアイドルや芸能人からヒアリングするという、とても現代的とはいえない若者参加の政策を未だに実行していると言わざるを得ないでしょう。代表制の問題もありますが、参加政策が意見募集事業と政策形成と密接に結びついていないこと、その他の若者政策の分野と連携をしないで打ち出されていることなどを、晒しているだけです。

ソウルから学んで若者参加政策をアップデートしましょうよ。

Special Thanks

記事協力 : Erika Hayashi

通訳者:大草稔

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