スウェーデンのいじめを撲滅する方法 その1|いじめの経済的損失は約2380億円

いじめ対策

いじめは日本だけの問題でなく、しばし「幸せな国」として名高いここ北欧の国、スウェーデンでも起きています。いじめ防止に取り組むスウェーデンの非営利団体「Friends」の統計によると、スウェーデンでは毎年6万人もの子ども・若者がいじめの被害にあっているということです。(スウェーデンの全人口は1000万人でその16%が子ども・若者の人口層を占めます)

スウェーデンでは国が定めた法律の中で、子どもたちが受ける差別的な行為や嫌がらせに対して、どのように対処していくかを各学校で計画を立てることが義務付けられています。Friendsは、その計画作りのサポートをしているNGOです。

昨年、日本のとある若者支援団体とこの団体を訪問し、とても感動したのでシェアします。

Friendsとは?

 


Friends : http://friends.se/

この団体は、「幼稚園・学校・スポーツクラブで起こるいじめを撲滅する」というミッションのもと 1997年にサラ・ダンバー (女性)によって設立された非営利組織です。研究・教育・提言の3つの柱を掲げながら、スウェーデンの主要都市で活動をしています。サラ彼女自身も中学生の時にいじめに遭い、クラスのリーダー的存在であった一人の男子生徒に助けられた経験があったのでした。

その後、いじめの経験を伝えるために講演会を開くようになり、19 歳のころに当団体を設立したのでした。財源は、3 分の 1 が学校やスポーツクラブからの依頼費で、残りは銀行などの民間や個人からの寄付金で運営しています。視察期間中には、セブン・イレブンでシナモンロールを買うと、売り上げの一部が Friends に寄付されるキャンペーンが実施されていました。

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By Frankie FouganthinOwn work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=25710380

スウェーデン最大規模の電波会社や銀行など多くのスポンサーがFriendsをサポートしています。ストックホルムの隣の市であるソルナ市にあるFriends Arenaという巨大なスタジアムは、Swedebankという銀行会社が所有していますが、このアリーナの命名権をFriendsに寄付したがためにFriends Arenaという名前なのでした。ちなみに世界で大企業が所有するスタジアムの名前を非営利に寄付した団体はこれまでにいないとのことです。ちなみにFriendsの事務所はこのスタジアムのすぐ脇にあります。 (このスタジアムのすぐ近くに住んでいたぼくは、ずーっと何でこんな名前なんだろうか気になっていたんですが、この話しを聞いてガチでうるっときました)

Friendsは毎年、46,000 人以上の教員や保護者、子どもたちをにいじめについて知ることができる機会を提供しています。そのような啓発事業も行っていますが、基本的にはFriends自体は、いじめを解決を行うプロジェクトを行うわけではありません。主体は、学校やスポーツクラブなどの、子ども若者のいる場所に関わる全てのひととその組織です。Friendsはいじめ撲滅プランをそれらの当事者の子ども若者、教員、職員が適切にプランを作れるように支援するということです。そのためにいじめが起きる原因などについて啓発をしています。

このリュックサック(カンケンバッグ)の中には、15000人の若者にいじめについて答えてもらったFriendsが実施した調査報告書が入っている。これを「首相や教育担当大臣などの政治家に送ります!」とInstagramで投稿しています。

いじめに対する認識を変えるということ

いじめを撲滅するために、鍵となるのはもちろん教員や指導者、保護者である、大人です。しかし、どんな大人でもいじめ問題をうまく対処できるわけではありません。Friendsは、いじめ問題を解決するには、経験則に基づいたあらゆる偏見と主観を無くすことが大事だと考えています。例えば、子どもが自分がいじめられないよう自分を守るためのコミュニケーションをしていたとしても、「あの子はこういう子だから。」「これがこの子の性格だ。」といった偏見で判断してしまうことを大人はついやりがちです。また、大人はたいていの場合、経験則に基づいて判断してしまうために、実際にはいじめが起きているのにいじめだと認識ができないということあります。あらゆる人が差別、いじめ問題に対してこのような経験則を取り除き、いじめが起きる原因や構造に対して、組織レベルで平等的に対処すれば解決出来る、とFriendsは信じています。

いじめは、様々なレベルでの「規範意識」がその根源的な理由のひとつとしています。例えば、クラスの中で起きるいじめでも、クラス内の特定のグループでの権力争いが起きていたり、グループをまとめるために誰かを笑い者にしたりするという「団体レベル」から、男らしい女の子が他の女の子と少し違うからという理由でいじめが起きる社会での「ジェンダーの規範意識」のレベルまで多種多様でです。これがときには、教室、サッカーチーム、職場などなど場所を変え、規模を変え、長く続く時もあれば短く続くこともあります。そのようにいじめは複雑な諸事情が絡み合って起きる問題なので、一枚岩に解決策を提示することは難しいのです。だからいじめ解決のプランを作るのは、現場で事情を最も知っている教員、学校職員、保護者、そして当本人の子ども若者たち本人ということになるのです。

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YECスウェーデンスタディーツアー報告書2015より

Friendsのいじめを無くす方法

いじめ撲滅のプランをつくるためには、まず、各クラスの代表の生徒、教師、学校運営者らの3つのグループに分かれて、いじめ対策のための3カ年計画をそれぞれのグループで企画し、実践します。企画の前には、Friendsがアンケート調査を実施し、その分析結果をそれぞれのグループごとに伝えます。これをもとにそれぞれのグループは対策の計画を立て、実施します。実施して一年が経った時点でグループであつまり、方法について評価をします。

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YECスウェーデンスタディーツアー報告書2015より

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YEC(若者エンパワメント委員会)の視察のときに撮った写真

いじめの経済的損失は約2380億円

これはFriendsが研究者と算出したひとりの子どもがいじめの被害にあった場合の平均的な経済的損失額です。いじめにあってその後30年間で、被害者の10%が成人後も何かしら影響を被っていると仮定した場合です。

スウェーデンでは、6万人の子どもがいじめにあっており、もし1割りが大人になったときにも何かしらの影響を受けているとした場合、175億スウェーデンクローネ(=約2380億円)になるということです。これは、教員の数を20%ふやすことができる程の額であるということです。

そのくらいにいじめの経済、社会的な影響力は大きいのです。

さて日本でこの計算をした場合、果たしてどれくらいの経済的コストが算出されるのでしょうか。日本の人口はスウェーデン の10倍なのでトンデモナイ数字になりそうです…

そもそも「いじめ」の件数を明確に把握することができているでしょうか。

次回は、Friendsが推奨する「いじめを無くすための原則」を紹介します。

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