先日、スウェーデン視察の際に聞いたお話がとてもよかったのでシェアします。
今回のスウェーデン視察は、NPO法人わかもののまち静岡という、若者に優しいまちづくりをしている大学生主体のNPOが開催したものでした。
今回訪問した組織は、
・スウェーデン生徒会組合
・ユースセンター (Östberga fritidsgård)
・スウェーデン全国若者団体協議会(LSU)
・ユースセンター(Kvartersgården Dalen)
・ヨーテボリ ユースカウンシル (Ungdomsfullmäktige Göteborgs Stad)
・ユースセンター(Frilagret)
・東ヨーテボリ ユースカウンシル (Östra Göteborgs Ungdomsråd)
でした。
以前、NPO法人カタリバさんと訪問した時はユースセンターと教育系の組織が主でしたが、今回は、わかもののまち静岡さんの意向もあって「ユースカウンシル」をメインとした視察となりました。
視察初日に訪問したのは、スウェーデン全国生徒会組合 (Sveriges Elevkår)。スウェーデン全国生徒会組合は、単なる全国の生徒会の代表・ネットワーク組織ではなく、各学校における生徒会の活性化や、高校生一人一人がいい教育を受け、いい生活を送ることを守る組合でもあるのです。
生徒会組合のスタッフ、教材、研修、資金、そしてプロジェクトによって、個々の生徒会の活性化をおこないます。また、サッカーから、政治について議論する会まで様々なイベントを企画していますが、どんなイベントでも「おもしろ楽しく」することで、高校生が生徒会活動をすることをかっこよく感じることを大切にしています。

スウェーデン全国生徒会組合の現代表、リナさん(Lina Hultqvist)
今回、スウェーデン全国生徒会組合の現在の代表であるリナさんにインタビューをしました。詳細は、スタディツアーに飛び入り参加した、生徒会活動支援協会理事の栗本くん(18歳の高校生)が協会のホームページに投稿した記事で詳細に報告をしているのでぜひ参照ください。
組織のミッション、活動、運営体制などひと通り質問しつくして、視察団が最後に聞いた質問がこちら。
なぜ生徒会の活動が大事だと思いますか?
するとこんな回答をサクッといただきました。
スウェーデンの生徒会組織の代表が考える、生徒会活動の意義
生徒会の活動は、私個人としても社会にとっても意義がある活動であり続けてきました。若者の声が聞かれることによって、大人に指図されたことではなく自分達がやりたいことを自分達の手によって実現してそれを社会にみせることに意義があるのです。
学校生活は良質な教育を受ける権利を行使するという、日常生活に不可欠なものであるから生徒会の活動というのもそれ自体が大事となるのです。スウェーデンを例にとると、全ての子どもが学校に通いますが、高校生活は人生でとくに大事な時期であります。なぜなら高校に進学をするときに、人生で初めて自分の意思で決めて進路選択をします。そして、少し成長して大人の人生に加わります。自分達の手によって作られた生徒会活動ができると大人に近づくだけでなく、「市民」になることができるのです。市民というのは、結社の自由、言論の自由、出版の自由など、これまで労働組合が体現してきたことそのものです。なぜなら、教員組合、校長の組合もそうですが、それら独立した組合活動というは、結社の自由を拠り所としているからです。
スウェーデンは、確かに市民活動にお金がつくような先進国ではありますが、それでもやはり若者への不信はあるものです。ですので、スウェーデン全国生徒会組合としては、私たち若者にだってできることを社会に示して、私たちが実現したいことを叶えて、社会を変えていくのです。社会を変えるというのは、日常の些細な「疑問」から始まります。それこそ先ほど例示した、更衣室の性差を無くしたいと声をあげることや、学校の計画に意見すること、さらには抗議活動に生徒会組合の仲間を送り込んだりすること、などによって実現できるのです。
学校が、組織的な活動をするのにとてもいい場所であるのは、生徒の公益(common interest)が大きいからであり、何かを変えるにはより組織の規模を大きくする必要があります。組織が大きければ大きいほど、影響力は強くなるということは、これまでの労働組合がやってきた様々な方法が物語っています。高校生活を不安に思っている新入生が友達づくりできるような、小さなイベントを企画することだって社会を変える一歩ですし、それこそ生徒会組合がやっていることなんです。
いかがでしょうか。ぼくを含め視察団一同、このリナさんの回答にはとても感銘しました。
生徒会は、市民社会を担う
生徒会活動に限らず、日本では部活を含めた課外活動の意義は、どちらかというと「教育的」な意味合いが強いように思います。つまり、生徒会活動を通じて「何を学べるのか」「どんな成長があったか」という中で生徒会活動の意義を語るということです。
しかしリナさんの回答から明らかなのは、生徒会の活動というのはそれ自体が、まず生徒の生活状況や権利庇護が究極的かつ当然の目的ということです。つまり、市民社会、民主主義社会を守るためのひとつの役割を担っているという位置づけなのです。
事実、スウェーデン若者市民社会庁は毎年約30億円ほどの予算を、子ども若者団体や市民活動につけていますが、そのことからもいかに第三セクターが重視されているかが伺えます。スウェーデンの生徒会は、学校教育と市民セクターの架け橋となっているといっても過言ではないでしょう。
ちみにリナさんはこの組織の代表で常勤の職員として働いてる、23歳の大学生です。前の代表は現在、国会で政策秘書をしているようです。生徒会の目的が個人の成長ではないにしても、結果的にこのように優秀な人材を輩出していることにもなっているのです。