このブログ・筆者のプロフィールはこちらから

政治好きな若者が「増えている」国、スウェーデン

この記事は約5分で読めます。

スウェーデン版 子ども若者・白書(2012)がおもしろい。”Ung Idag 2012 (今日の若者2012)”という青年事業庁が発行している白書なのですが、そこに出てくる数字や指標が日本のそれと全然違うのです。この中でも「影響力と代表制」という章がおもしろく、ぜひ多くの方に読んでもらいたいので手短で本の一部の訳ですがシェアいたします。

ung idag 2012

要旨

政府はスウェーデン青年事業庁に若者の生活状況の向上を、いくつかの省庁に指標のモニタリングを編纂することで明らかにするように要請した。本文は報告された指標の要旨である。年度指標はそれぞれの指標の最新の数字を表示している。若者政策の主な対象グループは13歳から25歳の若者である。報告書は、教育と学習、健康と脆弱性、影響力と代表性、仕事と暮らし、そして文化と余暇活動の5つの主要な分野を基本とし、全てで87の指標から成り立っている。

影響力と代表制

この分野は12の異なる指標から成る。2010年の総選挙における18〜21歳の投票者の初回の投票率は79%であり、2006年の国政選挙から3%の増加であった。全ての選挙において男子よりも女子のほうが投票した割合が多かった。2006年と比べて2010年の選挙では18〜25歳の指名された候補者、当選者の両方が飛躍的な増加という結果になった。指名された候補者、当選者は女子よりも男子のほうが多かった。地方と国の政府の両方で18〜25歳の退職した議員がおり、それは2012年の時点で他のどの世代の人口よりも多い割合であった。2008年から2012年にかけて若い世代の退職者は増加した。

2012年に16〜25歳の若者で政治的な活動に参加した若者の割合は71%であった。2012年において社会的な問題についてインターネット上で支持を表明することは最も一般的な政治的な活動であったが、16〜25歳の若者のうち50%がそのような活動をしたことが報告された。女子と比べて男子の大部分がインターネット上で政策について議論やコメントをしており、一方で女子は男子よりも政治的な製品を倫理的・環境的な理由で購入していると報告された。2004〜2012年の期間における若者の政治的・社会的な関心は相対的に安定していた。2007〜2012年の間、他国で起きていることに関する興味・関心は減少したように見受けられる。男子は女子に比べて政治に興味・関心を寄せていることが明らかになった。40%の若者が自分の地域の影響を与えることに興味があると示され、17%が政治家に意思表明する機会があると感じている。地域に参加し影響を与えたいという意欲は男子と女子の間で若干の差があった。政策当局にアイディアを伝えるとい面でも同じ傾向にあることが報告された。16〜25歳の女子の3分の2が労働においての影響力が、同じ世代の半数以上の男子のそれと比べると低いことが報告された。

という感じです。とくに

  1. 2010年 18歳〜21歳の若者の投票率 79%
  2. 18歳〜25歳の若者の議員数増加
  3. 16歳から25歳の若者の3.5%が政党組織所属(過去10年間で変化なし)
  4. 2012年の16歳から25歳の若者の政治活動参加率 71%
  5. うち50%の若者がインターネットを介して社会的な問題への支持を表明
  6. 40%の若者が自分の地域に影響を与えることに興味があり、17%が政治家に意思表明する機会があると感じている。 

という数字がおもしろいですね。もちろん日本とは定義やら被選挙権年齢やらも異なるのでなんとも言えませんが、それでも比較対象としてみると大きなギャップが現れそうです。こういうとき投票率がとくに注目されがちですが、とくに僕はこの上記の6つめの指標「40%の若者が自分の地域の影響を与えることに興味があり、17%が政治家に意思表明する機会があると感じている。」が大事だと思っています。スウェーデンは早くから「若者の社会への影響力向上」を国の若者政策の目標にしているわけですが、「社会参画」・「シティズンシップ教育」がいくら推進されても(日本では昨年この方針を盛り込みましたが)、結局、社会に影響を与えていくという段階まで目指さないと「社会参画」からはほど遠い状態が続くのだと思います。そしてここでいう影響を与える「社会」というのは、自分たちが当事者で住んでいてよく知っている「地域」であることがポイントだと思います。地域の方が国よりも身近で住民の意思が反映されやすい社会になっているからこそ、このような指標が出ているともみれそうです。ぜひ日本でもこれらの指標で子ども若者白書を作ってみたらどうでしょうか。

他のテーマで特に気になった指標だけ以下に掲載します。もし詳細知りたかったらコメントください。

教育と学習

  • 2010-2011年、9年生に属する生徒のうち81.7%の生徒が少なくとも16の科目を修了した。とくに女子生徒とスウェーデン国内で生まれた背景をもつ生徒の割合が多かった。目標に達した生徒の割合は2006-2007年とほぼ同程度であった。
  • 2010,2011年時点で、資格を有する教師の割合は73.0パーセントでああり、100人の生徒に対する教師の数は8.1人であった。
  • 9年生のうち高校からの職業プログラムに通うことができる能力があるとされた生徒は87.7%であった。女子生徒とスウェーデン国内で生まれた背景をもつ生徒、高等教育を受けている親をもつ生徒の割合がその中でも高かった。

健康と脆弱性

  • 2009年に入学した生徒のうち、78%が自分が所属する学校がいじめや品位を傷つける取扱いに対する予防をしていると答えた。4%の生徒が他の生徒から、3%が教師からいじめられたり嫌がらせを受けていると報告された。
  • 約82%が教師は男子女子を公平に扱っていると感じており、95%が学校をいつもまたはたいてい安全な場所だと感じている。これは最近の世論調査では比較的大きな変化はない。

文化と余暇活動

  • 2008,2009年、16〜25歳の若者で過去12ヶ月の間で団体/組織のミーティングに参加した若者の割合は29%

おすすめの本

あなた自身の社会―スウェーデンの中学教科書
タイトルとURLをコピーしました