「人と向き合う仕事」というキャリアを歩んだ7人の若者|母校の卒業生をインタビューした小冊子が完成しました

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静岡県立大学の国際関係学部の卒業生には、北海道から大阪まで全国で、人と向き合う仕事に就いている人たちがいます。「国際関係学部」でありながら、なぜ人と向きあう仕事に就いたのでしょうか?キーワードは「学生サークル」です。

たっぺい
たっぺい

この度、所属する静岡県立大学の研究の一環で、ある小冊子の作成に携わらせていただきました。

 

たっぺい
たっぺい

『人と向きあう仕事をしている7人の先輩』という冊子です。この研究は、人とかかわる仕事(研究では対人支援職と呼んでいます)に就いている全国の7人の静岡県立大学国際関係学部の卒業生への小インタビュー集です。僕はインタビュアー兼ライターとして作成に関わらせていただきました。

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研究に関わったきっかけ

この研究にお誘い頂いのは、2018年の春であり私自身の新たなキャリアの幕開けとほぼ同時期でした。関東のいくつかの大学での新たな仕事に勤しむ中、津富教授から「キャリア概論の副読本を作るから卒業生をインタビューしてくれないか?」と一通のメールが来たのです。

キャリア概論とは津富教授が担当している静岡県立大学国際関係学部の講義であり、私自身も在学時に受講していました。様々なフィールドで働く社会人を招くオムニバス形式の授業は、文字通りにアイオープニング(目が開くような)な内容であり、授業レポートはさておきほぼ毎回、授業後の懇親会でゲスト講師と盃を交わし談笑をしていたのは今ではいい思い出です。そんな授業の副読本を作るとはさぞや楽しい仕事になるに違いない。

私がこの企画に飛びついた理由はそれだけではありません。インタビュー対象が、全国で対人支援に奔走する静岡県立大の国際関係学部の卒業生であったからです。私自身も、国際関係学部出身であり、インタビュー対象の候補には在学時に活動を共にした旧友の名前があがったのです。

  • 全国各地の友人らが奔走する現場とはいったいどのような現場なのか。
  • そこでどんな想いで、いかなる葛藤を抱え、日々の仕事に励んでいるのだろうか。
  • そもそもどういう経緯で今の仕事に就くことになったのか。
  • そして学生時代のサークル活動が、どう今につながっているのか。

私自身の持っているどうしても解き明かしたい疑問が、本企画の研究命題と100%合致してしまったことが研究への参画の動機でした。

問いに悩まされる卒業生ら

インタビューに答えてくれた7名の卒業生
研究命題に関連するいくつかの「問い」が盛り込まれた調査用紙は事前にインタビュイーに送付し、解答を事前に書き込んでおいてもらいました。ある人はきっちり空白を埋め、ある人はキーワードのみを記述していました。中には白紙で当日のインタビューに挑んだ人もいました。どの卒業生も津富教授が作成した調査用紙の問いにはずいぶん悩まされていた様子でした。故に、60分で終えると事前予告していたインタビューが、時間内に終了したことは1つとありませんでした。
しかし、それは一方で「自らの言葉で語ること」に妥協をしない、それぞれのインタビュイーの真摯な姿勢の現れであったのでしょう。それぞれの卒業生の半生をExplore (探求)する問いかけが彼ら・彼女らのこれまでの歩みと、日々の人とかかわる姿勢への直接的な問いかけとなり、絞り出された言葉に嘘はないと確信しました。
対人支援の最前線に立つ7人の旧友へのインタビューは、共に過ごした過去を振り返る「懐かしさ」を伴いつつも、知らなかった過去の経験や、あの時にこんなことを考えていたのかという「驚き」が随所に立ち現れ、そしてあの時から変わらない無垢な「想い」と、今の現場で抱える葛藤に悩み苦しむ様子を垣間みることができた、贅沢な時間となりました。

卒業生はどのようにひて活動を自分に落とし込んだか

インタビューを終えて僕が感じことは、想いを持って生きることの「しなやかさ」です。どの卒業生にも共通しているのは、学生時代に徹底的に自分と他人に向き合ったことです。そして行動の動機づけが元々は外発的(extrinsic)だったものが、ある時点で内発化(intrinsic)したのです。将来のキャリア(国際協力、外交官、英語を使う仕事)を見据えてサークル活動を始める人も、何かしらの劣等感を抱えてサークル活動を始める人も、その時の行動の動機は、賞罰や自己承認など外発的なものに依存していました。

それが活動を続けいく中で、自らと活動を共にする仲間と真剣に向き合わざるを得なくなっていく。その過程で「(自分の所属する」学生サークルの掲げる社会的なミッションとは何か?」「どの方法が課題解決に近づく道となるのか」「どのような価値・原理を大切にしたらいいか?」といった、活動単位のマクロな問いかけが、ある時から「自分は何を大事にして生きていきたいか?」「自分は何を軸にして生きていくのか?」といった自分の生き方への問いかけに遷移したのではないでしょうか。

人とかかわる仕事は自分と向き合うこと

それらの問いを真摯に受け止め、自分の人生に反映していこうとする生き方を卒業生らが選んだのは、人とかかわる「仕事」に学生時代に関わったからであることは言うまでもありません。なぜなら、人とかかわる活動ほど、自らの生き方・あり方が問われる活動はないからです。真剣に人と向き合う姿勢が、そのまま自らと向き合う姿勢となり、それがその後の進路としての「生き方」として現実化したのではないでしょうか。このようにして、卒業生の活動や生き方の動機付けが、自らの価値や興味・関心に即する内発性に徐々に依拠するようになったと言えるでしょう。

オーガニックなモチベーションへの変化

冊子の最後部には、読書ディスカッションで使うことができる考えてみたい「問いかけ」を用意しました。
ステファーノ・バルトリーニ[1]は、教育における内発的動機づけの重要性を唱えます。成績や親の期待を背負い、学びの動機づけが外発化された生徒は、試験や勉強時に不安を覚え、結果的に学びの質が低下するといいます。反対に、学びの動機が自分の興味関心に基づく生徒の学びの質は高いです。これはダニエル・ピンク[2]の、「アメとムチ型」の動機づけは創造性を損ねるという主張の方向性と合致するものがあります。ピンクは新しい時代の動機づけを「モチベーション3.0」と唱え、それは個人の自主性・成長・目的に依拠するものであるとします。ピンクの整理されたこの3要素(自主性・成長・目的)はインタビューの随所に散りばめられていました。
卒業生の語る「モチベーション」は決して浮ついたものではなく、他人から借用した言葉だと感じることはありませんでした。他人と比較するわけでもなく自分の在り方・価値に忠実であるそれぞれの生き方からは、まるで不揃いな有機野菜のようなオーガニックさを感じました。それは卒業生の一人であり長年の友である湯浅のいう「見栄のゲーム」から降りる生き方を選択したことから来ているのかもしれません。
このインタビュー録に綴られた言葉がの意味を100%理解できる人は少ないでしょう。それは卒業生が語った言葉は、それぞれの価値と、日々の仕事と過去の経験の延長から出てきた高度に文脈化された文句であるからです。しかし、卒業生が向き合い続けた「問い」に、読んでいる人も同じように向き合うことはできるかもしれません。
・あなたは日々、何を大切にして過ごしていますか?
・あなたはどのような価値を大切にして人とかかわっていきたいですか?
・あなた何を軸にして、どのように生きていきたいですか?

この冊子が、誰かの何かのきっかけとなりますように。とくに子ども・若者支援、教育、就労支援、学習支援、生活困窮者支援などに興味のある若い人はぜひ。

ご協力いただいたすべての卒業生並びに、研究チーム び津富教授、デザインを担当して下さった磯村さんに感謝申し上げます。

ダウンロードURL
冊子のダウンロードは以下からどうぞ。
津富教授が小冊子『人と向きあう仕事をしている7人の先輩』を発刊 | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学
静岡市にキャンパスのある静岡県立大学のホームページです。入試情報、学部・大学院案内、学生生活などについて紹介しています。
また現物の冊子を希望される方は、お知らせください。直接お渡しできます。
[1] ステファーノ・バルトリーニ, 中野佳裕. 幸せのマニフェスト: 消費社会から関係の豊かな社会へ. 東京: コモンズ, 2018.
[2] Pink, Daniel H, and 大前研一. モチベーション3.0: 持続する「やる気!」をいかに引き出すか. 東京: 講談社, 2010.

 

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