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ヨーロッパにおける「ユースワークの定義」を定めた文書を和訳しました。

この記事は約5分で読めます。

欧州評議会が作成した「ユースワーク:欧州評議会・閣僚委員会により2017年5月31日に採択された勧告CM/Rec(2017)4及びその説明のための覚書」という文書の和訳をしました。

両角 達平 (Tatsuhei Morozumi) - 「ユースワーク:欧州評議会・閣僚委員会により2017年5月31日に採択された勧告CM/Rec(2017)4及びその説明のための覚書」(翻訳) - 論文 - researchmap
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訳出に当たってでも書いてあるのですが、本文書は「おそらく世界で初めてユースワークそれ自体について記述した文書」であり、「ユースワーク」「若者政策」や「シティズンシップ教育」などの用語の定義が用語集としてまとめられている、めちゃ重要文書です。

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こちらが勧告文の原文です。

業界の関係者はどうぞ参考にしてください。全文を読む必要はないので、読みやすそうなところからいっちゃってください。


本文書は、欧州におけるユースワークの定義を初めて明確化した、欧州評議会の勧告文を和訳したものである。

20世紀末、欧州では若者の社会的排除が政策課題として浮上し、それに対応するために若者政策が整備された。汎欧州規模では、1949年に設立された欧州評議会(Council of Europe) によって若者政策は推進されていたが、1968年の世界的に広がった学生運動に応える形で、若者の利益と参画を分野横断的に扱うことが取り決められ、フランスのストラスブールに欧州ユースセンター(European Youth Centre)が設置されたのは1972年のことであった。同年には欧州若者基金(European Youth Foundation)が設立され、欧州規模での若者の活動を財政的に支援するスキームが整えられた 。

さらに、1993年に設立された欧州連合(EU)は若者政策の形成を後押しした。2001年にはEUの若者政策のマイルストーンとなったEU若者白書 が発布され、2009 年に採択された「青少年分野におけるEUの協力についての新たな枠組み(2010- 2018)」では若者政策を担う主要なアクターとして「ユースワーク」が位置付けられた。

2010年より欧州ユースワーク大会が5年に1度開催されることとなった。第1回大会は、ユースワークの共通の基盤を構築することの難しさに直面しながらも、ユースワークの定義と、関連する諸課題を網羅的に扱った。2015年に開かれた第二回大会においては、脆弱な状況にある若者や、過激主義の若者を支援の対象として含めるなど、ユースワークの対象領域・目的の明確化がされた一方で、ユースワークの政策的位置づけ、財政基盤、社会的認知、認証、そしてその定義に課題が残されているとした。

そのような文脈の中で作成されたのが本勧告文である。目次の見出しは以下のようになっている。

―勧告CM/Rec(2017)4
―説明覚書
はじめに
原案作成過程
なぜユースワークに関する勧告か
ヨーロッパにおけるユースワークのビジョン
勧告の内容
フォローアップ
―用語集

欧州評議会のユースセクターの重要な優先事項であるユースワークの政策と実践を発展・強化するよう加盟国に求める「勧告文」ではじまり、ユースワークの未来の欧州社会への貢献を最大化するためのいくつかの提案も含まれている。勧告の付帯文書

こちらが勧告文の原文です。は、「ユースワークの定義」について扱っており、本文書の目玉となっている。

本勧告が欧州の若者政策の文脈で意義を持つのは第二回欧州ユースワーク大会で明確化できなかったユースワークの定義を明らかにした点であり、これまでの数十年に及ぶ欧州におけるユースワークの議論の成果がこの部分に集約されている。欧州評議会の民主参画総局若者部門で2014年から部長を務めるAntje Rothemundは、この勧告文を「おそらく世界で初めてユースワークそれ自体について記述した文書」であり「ここでは手段としてのユースワークが語られているわけではなく、なぜユースワークが大事で、なぜユースワークが支援されるべきで、どのような支援や政策が必要かが綴られている」と評した。

「説明覚書」は、この勧告文の解説であり文脈把握を促す内容となっている。最後の「用語集」には、「市民性」「若者政策」「若者の参画」「ノンフォーマル学習」「ユースセクター」など欧州の若者政策を理解するのに必須となる重要用語がまとめられている。「説明覚書」と「用語集」に初めに目を通していただくと、文脈理解が容易になるだろう。

本訳出が日本における若者支援、ユースワーク、青少年教育に関する議論や施策の形成の手立てとなることを望む。

以上です。訳出のダウンロードリンクは以下になります。

両角 達平 (Tatsuhei Morozumi) - 「ユースワーク:欧州評議会・閣僚委員会により2017年5月31日に採択された勧告CM/Rec(2017)4及びその説明のための覚書」(翻訳) - 論文 - researchmap
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