日本教育学会の機関誌のEducational Studies in Japan Vol.15 に論文を掲載いただきました。
今回は若者の居場所(ibasho)特集で、私からは”Youth policy in the hands of whom?: A comparative study of Japanese youth policy in the eyes of Europe”として近年の欧州の若者政策の枠組みから、日本の若者政策の課題を検討しました。
あわせて、シティズンシップ教育研究大会で日本語で本論文の要旨を発表したので以下に、その内容を掲載します。タイトルは「若者政策は誰の手に?―日欧比較研究が明らかにした日本の若者の社会参画政策の課題―」です。
本研究は、2000 年代の日本の4つの若者政策の社会参画施策を内容分析により検討し、さらに近年の汎欧州規模の若者政策と比較することでその特徴と課題を明らかにしたものである。研究の前半では、日本における若者の社会参画施策をみる視点として青少年教育の歴史的文脈の整理から行った。
日本の青少年運動は、江戸時代の村落共同体を基盤とした若者組や若衆組が起源とされているが、その後は明治期には青年会を経て青年団へ変容し、軍事利用される時期があるも戦後は民主化
が進み、若者の組織活動が多様に展開されていった。
戦後の青少年教育史において、「青少年の社会参加」が政策的に取り上げられるようになったのは 1972 年の青少年問題審議会答申からであるとされている。1980 年代には、「居場所」と「子どもの権利」の関連から参加・参画が論じられるようになった。2000 年代に突入し18 歳への選挙権年齢及び成人年齢の引き下げに向かう中で若者の政治参加が注目されるようになるも 18 歳選挙権が実現した 2015年以降の若い世代の投票率は伸び悩み2019 年の参院選では戦後2番目の低さとなる 48.8%を記録し10 代の投票率は 32.28%、20 代の投票率は 30.96%にとどまった。
また数々の国際的な調査でも日本の若者の社会参加意識には、諸外国と比しても低いことが明らかになっている。日本の若者の選挙投票率の低さの原因は、さまざまに論じられるが、筆者はここで社会参画施策の不備にあるのではないかと指摘する。日本の若者政策は十分に若者の社会参加施策を打ち出すことができてきたのか。それはどのような施策で、この間どのような施策であったのか。以上の問題意識を前提に、近年の日本の国レベルの若者政策における若者の社会参画施策を分析したのが本研究である。
研究の中盤では分析の枠組みとなる「若者政策」と「若者の社会参画」の整理を行なっている。その後、日本の近年の若者政策の文脈整理後にテーマ分析のメソドロジーを提示している。検討の結果明らかになったのは以下の点である。日本の若者政策は施策対象である若者を社会の形成主体と位置づけながらも社会参画施策においては教育及びボランティアの推進を基軸としている。投票行動の促進などに代表される政治参加促進の傾倒が解消され、若者世代の意見聴取策を講じながらも、欧州の若者政策と比すると若者主体の政治運動の認知や構造改革の着手には踏み込みきれていない実態が明らかになった。
以下のJ-Stageのリンクより読めるようになっています。
J-Stage
Youth Policy in the Hands of Whom?: A Comparative Study of Japanese Youth Policy in the Eyes of Europe
Tatsumaru Times