2011年に豊田で講演したときの講演録をいただきました。掲載いたします。僕にとっての「若者の社会参画」です。
若者の社会参画にかんするこれまでの研究の集大成は、こちらの記事で紹介しているスライドをどうぞ参考ください。
「若者の社会参画」 豊田市 ㈶明るい選挙推進協議会総会
ただいま御紹介にあずかりました両角達平と申します。今日はよろしくお願いしま す。まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。今、自分は、静岡県立大学の国際 関係学部というところで4年生をしています。先ほど紹介いただいた若者エンパワメ ント委員会――通称YECと呼んでいるんですが、ここで前に代表をやっていました。 今は代表を次の世代に引き継いで、普通のメンバーとしてこの団体にかかわってやっ ています。そして、もう1つ、NPO法人Rights というのをやっているんですが、 これは 18 歳選挙権の実現だったり、政治参画と政治教育というのを促進する活動等を やっています。東京の明るい選挙推進協会の方と、このRights の勉強会で知り合い になりまして、そこからこうやってちょっとお話ししてもらえませんかというふうに 紹介いただいて、今日こういうふうにお話しさせていただくことになったという経緯 でございます。また、ラボ・パーティーという国際交流や英語の表現活動もしていま した。僕の母がその活動の先生をやっていまして、それで幼稚園の年長か小学校1年 生くらいからその活動をずっとやっていました。なので、中学1年生の時にアメリカ に留学というかホームステイに、1カ月ほど行きました。それで国際交流というのに 興味を持ち、国際系の何かをしたいという動機でこの静岡県立大学の国際関係学部に 入りました。なのに気づいたらこの若者支援の活動をやってしまっているんです。人 生はわからないですね。そんな感じです。
今日お話しすることですが、『若者の社会参画』という演題をいただきまして、簡 単に僕のやっているYEC(若者エンパワメント委員会)の紹介を中心に、その活動 内容だったり、YEC設立のきっかけだったり、事例の紹介、活動を通して若者当事 者として感じていることや抱負というのを簡単にお話しさせていただきます。『若者の社会参画』というと、社会参画というのは何かと政治参画や政治教育とい うふうにすぐ頭の中で結びついてしまうと思うんですが、必ずしもそういうわけでは なくて、そして、今求められている社会参画というのは必ずしも政治教育ではないん じゃないかなと僕は思ったりしています。だけど、いつかそれは絶対に政治教育、政 治参画に結びつくことだと思っていますので、この時代に求められている社会参画と いうのを皆さんと一緒に考えていけたらなと思っています。
では、YECの紹介をします。YECは、Youth Empowerment Committee という、 ちょっと格好いい名前の団体でして、若者、大学生を中心に活動している団体です。2009年にできた団体で、主にやっている活動としては、1つは若者の社会参画事 業、もう1つが啓発事業をやっています。今からその具体的な活動の内容について説 明していきます。
まずは、「もうひとつの放課後探しプロジェクト」というのを若者の社会参画活性 化事業の1つとしてやっています。この「もうひとつの放課後探しプロジェクト」で は、中高生がやりたいことを学校以外の場で実現することを支援します。例えば、学 校以外の場で文化祭をやりたいというのがあったら、「じゃあ、それやろうか」と言 って、その実現を支援するという、本当にただそれだけのシンプルな活動です。簡単 にスケジュールを説明しますと、8月の半ばぐらいで1回、参加者と一緒に、やりた いことは何だろうというのを企画立案するキャンプをします。その企画というのは半 年の間で実現しなければいけないという条件があるんですが、そのキャンプの後に実 現に向けたミーティングを定期的にしていきます。その時には、サポーターメンバー をカゴメン――放課後メンバー、というんですが、その人たちと一緒にミーティング をしていきます。そして、「こうしたらいいんじゃない」、「いや、このほうがいいよ」 とか、ああだこうだ言って一緒にサポートをしていきます。それと、メンターという 社会人の方で、アドバイスなどをくれる人たちからもアドバイスをもらうミーティン グなども開いたりして、より実現を確実にしていくものにしていきます。そして、1 月、2月、3月とかの冬あたりで実現します。最後に報告会、YECの活動報告会み たいなのがあって、そこで一緒に今回こういうイベントをやりました、その中でこう いうことを一緒に考えたりしましたというのを社会人や大人、あとは若者に向けて講 演会という感じでやったりしています。それが「もうひとつの放課後探しプロジェク ト」です。
中高生を真ん中に据えて、それを支えるカゴメンやYECが、二重になっ てサポート、さらに、社会人の方がメンターとしてたまに面倒を見てくれるという感 じ体制でやっています。 去年、この放課後探しプロジェクトを初めて始めたんですけれども、そこで出た企 画を簡単に紹介したいと思います。「キラキラフェスティバル」というのが最初に出 ました。これは、簡単に言えば、学校以外の場での、学校の枠を超えた、いろんな学 校と一緒に1つの文化祭をやろうよという企画です。これを企画した高校3年生の女 の子は、もうちょっと他校の人たちとつながりをつくりたいという思いがあったんで すね。では、その思いを達成するにはどうしたらいいかなと考えて、このキラキラフ ェスティバルをやることになりました。ファッションショーだったり、ダンスだった り、あとはバンドなどをやりました。
そして、もう1つの企画が、「We are ONE ! ~ぶっちゃけTALK ~」というイベントです。これは高校1年生の9名の女の子が 企画したんですけれども、事のきっかけは、これを企画した女の子が恋愛話やぶっち ゃける話がすごく好きだった。「じゃあ、それをいろんな人と一緒にやっちゃおうよ」という、たったそれだけですが、それから企画実現をすることになりまして、最終的 には恋愛だけではなくて世の中のまじめな話とか、あとは自分のことや家族のことを 話せる仕組みをつくって、 30 ~ 40 人ぐらいを招いてというか、公募して、大人の方も 含めた色んな方と話す場をつくりました。また、「ランナウェイなう」というのをや りました。「逃走中」というテレビ番組はご存知でしょうか。ゴールデンタイムでた まにやっているんですが、超本格的な鬼ごっこみたいな感じです。芸能人が逃げるん ですが、逃げるときにいろいろ携帯電話などで課題が与えられて、それをクリアしな がら鬼から逃げるというテレビ番組があるんです。それを見た中学生が自分たちでも やりたいと言って、最初、学校のレクリエーションで提案したんですが採用されず、 この放課後探しプロジェクトでやりたいと言って持ち込んできたんです。それに賛同 した高校生2、3人がこれを実現することになりました。本当にすごい規模で、富士 山こどもの国という静岡県の県営のテーマパークみたいなのがあって──半径2~3 キロでしょうか、その中でこれをやりました。
今まで説明したのが若者の社会参加活性化事業で、今からお話しするのが啓発事業のほうになります。これは何のためにやるかというと、YECの支援者や理解者を増 やすためにやっています。僕らがやりたいことをいろんな人に理解していただかない と、さっきの放課後探しプロジェクトも社会人の方の力をかりることができませんの で、こういうこともやったりしています。具体的に何をやっているかというと、講演 会・ワークショップ、視察報告、「YECわかもの白書」という冊子も作って配った りしています。白書はインターネットからダウンロードできますので、是非ご覧くだ さい。もう1つ、若者に対してアンケートをとって、若者は今こういうことを考えて いるんだよというのを、僕ら若者自身でやるのが大事ではないかと思い、アンケート を実施、公開したりしています。 1つ1つについて簡単に説明しますと、講演会・ワークショップは、実際に若者支 援についてあちこちで活動されている詳しい方をお招きしてやりました。
例えば、関 口さんという横浜市のこども青少年局でバリバリやっている職員の方だったり、NP O関係者の方、NPO運営者の方、学者さん、あとは「ゆう杉並」という東京にある 児童館の職員さんを招いたりして実施しました。テーマは、子どもの権利条約とか、海外の事例とか、あとはシティズンシップ教育――市民教育とか、そういう分野もち ょっとかじりつつ、やりました。また、「子ども・若者ビジョン」という、去年の7 月に内閣府が発布した、子ども・若者政策の大綱みたいなものですが、それについて 一緒に考えようということで、実際に「子ども・若者ビジョン」に携わった方をお呼 びして、一緒にそれについて話を聞いて、みんなで考えるみたいな会を何度かやりま した。僕らYEC自身の勉強にもなったし、来られた大人の方との理解を深めるため の機会にできました。 視察報告というのは、去年のゴールデンウイークにスウェーデンのスタディーツア ーというのがありまして、スウェーデンは若者政策がすごく進んでいるということで、 僕も参加して視察をしまして、その報告会を静岡でやりました。また、YECには、 顧問というか世話人のような方で津富教授という静岡県立大学の教授がいるのですが、 最近またスウェーデンに行ったということだったので、またその報告会をし たりしました。
さっきお話しした「100人アンケート」ですが、実際にとった結果を簡単に紹介します。静岡とスウェーデンでとったんです。最初は2年前に、静岡の町の中で10 0人の人に、「アンケートに答えてもらえますか」と言って1人1人に声かけながら 書いてもらいました。その後は、さっき言ったスウェーデンのスタディーツアーに参 加した最後の日に、町に出て、100人に英語で話しかけて聞きました。それで、そ のアンケートを比較したらすごく面白い結果が出たんです。まず、Q1「自分がダメ な人間だと思いますか?」という質問をしました。そうしたら、これに対して「はい」 と答えた人が、静岡の若者は100人中5 8人、スウェーデンの若者は100人中 14 人 という結果になりました。
そして、Q2「社会は自分の力で変えられると思いますか?」 という質問をしたんですけれども、これに対して「はい」または「そう思う」と答え た人は、静岡の若者は100人中たった 24 人、スウェーデンの若者は100人中65人 が答えました。こんなことも調べて公開したりしています。 それから「YECわかもの白書」ですが、これは先ほどお話しした講演会に招いた 講師の方の講演録を全部文字起こししたものです。先ほどのアンケートも入っていま す。放課後プロジェクトに参加した中高生による感想も中に入っていたり、YECの紹介も入っていて、YECが丸わかりな報告書になっています。YECのホームペー ジで公開していますので、ぜひご覧いただけたらと思います。この白書があるといい なと思うのは、講演会に来られなかった人も後々ゆっくり見て、こんなことを言って いたなと勉強になると思ったんですね。文字媒体にして共有すると、無くなることが ないと思ったので、そういった意味でも深い理解にもつながると思ったんです。全部 読んで、また自分たちのふだんの生活のことを考えたりというときに、深い理解にな ると思って作りました。
次に、YECを始めたきっかけだったり、今後のこと、あとはYECをやっていく 中で大事にしていることをお話しします。YECを始めたきっかけですが、静岡県立大学にはNPOや社会貢献系の学生団体 がいっぱいありまして、僕も大学2年生くらいのときにそういう学生団体をやってい ました。その運営にどうしたらいいか困っているときに、NPOでいう中間支援団体 みたいな、学生団体の活動をサポートする学生団体に助けてもらってすごく助かりました。自分のやりたいことを助けてもらえるのは、本当に助かると思ったというのが まず1つ目のきっかけです。もう1つのきっかけは、学生団体の活動をしていくに当 たって、先程言ったYECの世話人の津富教授という静岡県立大学の教授の研究室を 結構使わせてもらっていました。そこに色んな若者が来て色んな話をして新しいアイ ディアが出てくるというのがすごく楽しくて、そこでミーティングをしたり、パソコ ンをいじったりと、そういう場所があるのがすごく大事だと思ったんです。場所があ るだけでこんなに違うなんてすごいなと。だから、そういう場所をもっと大学の中に もいっぱいつくりたいと思ったんです。
今の2つのきっかけ、つまり、「やりたいことを助けてくれる」というのと、「そう いう場所があるといい」という話を津富先生とあるとき話をしたんです。そうしたら、 先生は学会の関係でたまたまフィンランドに行ってきたところで、フィンランドにそ ういうユースセンターというのがあると言っていて。ユースセンターというのは若者 が学校以外の場で集まれる場所ですが、児童館のもう少し上の年齢の若者を対象にし た感じです。フィンランドに行ったら、こういうユースセンターがあった。若者が来 て、そこで働いている職員さんが世話してくれるとか、やりたいことがあったらそれ を一緒に考えて実現するとか、まさに今、YECがやっているようなことが、フィン ランドでは場所もちゃんとあるという話をしてくださったんです。そういえば僕の地 元にもそういうのがあったなと思い出したんです。僕は長野県の茅野市育ちで、中学・ 高校と通っていました。その茅野市の駅のビルの中に「CHUKOらんどチノチノ」 というのがありました。ちょっと恥ずかしい名前ですが、CHUKOというのは中高 生のCHUKOで、中高生しか入れない施設です。その中にはライブハウス、ライブ スタジオだったり、キッチンとか、ダンスができるところだったり、何にもないただ の広場とか、机、いすがあったりして、僕はそこでいつもたむろしていて、勉強した り、友達と会ったり、遊んだりしていたんです。「そういえばそういうのが地元にあ ったよ、先生」と言ったら、「じゃあ、それ、静岡にはないからつくろうか」みたい な話で、それでYECが始まりました。
YECを始めたのはそういうきっかけですが、活動するに当たっての問題意識とい うのは何かと言うと、やっぱりさっきのアンケートの結果で、日本の若者は自分に自信がない、社会に対しての信頼がないのではないかというのが、僕自身、若者当事者 としてもそう思ったんですね。だから、自信を失っている、社会もすごく遠いものと 考えてしまっているのではないかと思って、社会に対して蚊帳の外感を持っているの ではないかというのが、YECの問題意識であります。
YECはYouth Empowerment Committee という団体ですが、このエンパワメン トというのはどういう言葉なのかちょっと簡単に説明したいと思います。まず、差別 や偏見を減らすこと。例えば、どうせ今の若者はこんなだからとか、若者は大人より 未熟だからというのは偏見、差別だと思うんです。そもそも、まずそういう考えを減 らすというのが1つあります。その後に、そういった差別、偏見があったとしても、 若者が力を発揮できるようにすること。これがエンパワメントの考え方です。皆さん も御存じとは思いますが、そのルーツは公民権運動、ブラック・エンパワメント―― マーティン・ルーサー・キングが行った黒人と白人の立場を平等にしていこうという 運動ですが、それとまるっきり同じです。黒人だから、黒人は馬鹿でうすのろだから と言われていた、そういった差別、偏見を減らすこと。そして、もし仮にそうだとしても、黒人はそもそも力がないわけではなくて、もともとあったんだけどそれを発揮 できないのは社会のせいなんだ、と考えていくというのが、エンパワメントの発想で す。なので、単に教育というのとちょっと違って、社会自体の環境を整えていくとい うのがエンパワメントでは大事だとされています。 僕らはこの考え方を大事にしているので、若者に対する支援だけではなくて、社会 に対する啓発事業もやっています。そういうふうにして理解を深めていくことが、若 者にとって住みやすい環境になっていくのではないかと思いまして、このエンパワメ ントという概念を大事にしています。
先ほどYECのきっかけのほうで話したんですが、YECはそもそも、「じゃあ、 そういう若者が集まれる場所をつくろうよ」ということで、最初は場所をつくろうと 思ったんです。なので、実は最初の名前は「若者エンパワメントセンター設置委員会」 という名前だったんです。すごく長くて、YECには変わりないんですが、「Youth Empowerment Center 設置委員会」と言う名前だったんです。だけど、場所という のは結局ハードです。よく箱物になって終わるとか、ありますね。 そういうものではなくて、場所よりも機会が大事なんではないかと思ったんです。そもそも施設をつ くること自体、すごく時間がかかったりしますので、まずはそういった機会をつくっ ていく、それは目に見える形のハードの物ではなくて、そういう機会をつくっていく ことを大事にしていこう、ということで「若者エンパワメント委員会」という名前に なりました。実際にイギリスなどでは、若者政策がすごく進んでいて、さっきのユースセンター というのも、町に1個は当たり前にある。そこには、デタッチト・ユースワーカーと いう若者の支援活動をする職業の人たちがいます。イギリスでも若者というのは必ず しも自分から施設に来るわけではなくコンビニとかあっちこっちにたむろしていたり します。そういう人たちに「ちょっとユースセンターにおいでよ」とちょっとくらい 言っても別に来るわけではないんですね。なのでそのユースワーカーが、そういった 若者たちには何度も会いに行って関係をつくっていくというのが、実際に向こうで行 われたりしています。そういう考えはやっぱり大事だなと思って、YECは場所より も機会を大事にしていこうというふうになりました。
社会参画の話をします。これは、社会 参画はこういうふうに考えられるのでは ないかという図です。YECでお招きし た講師の川中大輔さんという方が、京都 市ユースサービス協会というところで話 し合って考案して、できたのがこの図に なります。この図は何を示しているかと いいますと、まずこの社会参画という言 葉を考えるときに、まず社会というのは 何なのかという話をされました。「社会」 という言葉は、明治維新以降に海外から 輸入された言葉です。そのときはソサエティーという言葉で入ってきたんですが、福 沢諭吉はこれを「人間交際」と名づけたらしい。だから、人間交際という機会に参加 していくことではないのかと考えられます。参画と参加があるんですが、YECでは参画を大事にしたいなと思っています。一体何が違うのかというと、参加というのは その場所に行くとか、イベントに参加するとか、出席するとか、ただそれだけです。 物理的なことでいうと、そこに行くというだけですが、参画というのは企画の「画」 なので、そういうイベントを企画する側になるとか、その運営主体になることを指し ている。だから、そこまでできたらいいなという意味で、この社会参画という言葉の 説明をします。 社会参画はこの6つに分類されるのではないかという話をされていまして、1つ目 が、「経済参加」です。これは日々のお金を払ったりなんだったり、労働とか、対価 をもらってというので、経済的に社会参加していると言われるのではないかという考 え方です。「文化参加」というのは、芸術活動、バンドやアート的な活動を指してい ます。「地域参加」は、お祭りなんかを指しています。「市民活動参加」というのは、 ボランティアとか、僕らがやっているような活動にかなり近いのではないでしょうか。 「政治参加」は、まさにこの明るい選挙推進協議会さんでもやられている、選挙とか そういうものの参加を指します。「司法参加」は、この前から始まった裁判員制度で裁判員になることとか、そういうものを指しています。 「ではYECは若者をエンパワメントするに当たって、どういう社会参画を若者に やってもらいたいのか」と考えるのは、僕はちょっとおかしいなと思います。という のも、例えば、YECが市民活動参加、地域参加、政治参加をやりたいというふうに やってしまうと、さっき放課後プロジェクトでいろんなイベントが出ましたが、学校 を超えた文化祭、なんかが出たと思うんですが、若者がやりたいというそういうイベ ントすらも、「これはどう考えても文化参加だからだめでしょう」と、否定してしま うことになってしまうんですね。だから、僕らはそういうのは考えないで、若者がや りたいと言ったらそれを大事にして、主体性を出せる企画を引き出してやっていくこ とが大事だと思ってやっています。なので、YECでは特にこの分野を活性化してい くということはやったりしていません。福沢諭吉は社会を人間交際と言ったように、 社会参画には、すべて根っこに人間交際、人間関係があると思います。どんな企画で もそこに通ずるものは絶対あると思うんですね。1人でやる企画では1人しかいない んですが、複数の人数でより多くの人を巻き込んでやると、人間交際はすごく活発になると思うんです。そういうことが起きることが社会参画につながるのではないかと 思っています。なので、YECでは、放課後プロジェクトでは、どんなイベントでも ウエルカムだという感じで、オープンな感じでやっています。その中で人間交際を学 んでいくことが大事かなと思っています。なので、僕らのミッションは「すべての若 者が思いを形にすることを通じて、社会のつくり手となるために」ということになり ます。いろんな学校を超えた文化祭をやりたいというその思いを形にしていくこと。 その中で、社会というのはこういう感じなんだというのを少しわかってくると思うん ですね。それは必ずしも政治についてよく知ることでなくても、すごく身近な友達で はなくて、ちょっと遠い大人の人や先輩、中高生と普段関わらない大学生、そういう 人たちと関わる中で、人間関係がわかったり、それが社会なんだとわかっていくと思 うんです。すごく規模は小さいかもしれないですが、それが大事ではないかと思いま す。そうやって活動していく中で、自分とちょっと離れた人と信頼関係ができると、 社会というのはこうなっているんだなとわかっていくと思うんですね。それで、社会 のつくり手にちょっと近づくのではないかということで、このミッションができました。
次に簡単に海外の事例を紹介させていただきます。先ほどの視察報告の時にスウェ ーデンの視察に行ったと言ったんですが、そのときの話をします。向こうの現地でど ういう取り組みをやっているのか、「若者政策・若者参画政策の先進国であるスウェ ーデンを視察し、日本の若者政策・若者参画政策への示唆を得る」という崇高なビジ ョンを掲げまして行きました。期間は2010年5月2日から5月9日のゴールデン ウイークです。主催は特定非営利活動法人Rights です。参加者はRights のメンバーと、 大学教授、大学院生、中学・高校の教員、ジャーナリスト、そして大学生──僕とY ECの後輩ですが、参加しました。ちなみに、今、僕はRights のメンバーをやって いますが、これに参加したときは、僕はまだメンバーではなくて、YECとして行き ました。スタディツアーの紹介動画でだいたい様子がつかめるかと思います。
報告の前に、そもそもスウェーデンというのはどんな国なのかという話を簡単にし ます。人口は930万人。日本の約1・2倍の面積ですが、人口は930万人で、神 奈川や大阪とほとんど同じ規模です。だから、人口密度がすごく少ないです。首都は 25 ストックホルムで、人口が 80 万人ほどです。豊田市が 40 万人ぐらいですね。なので、 そのちょうど2倍ぐらいです。僕の住んでいる静岡市が70万人ぐらいなので、ちょう ど同じぐらいです。有名どころでいうと、IKEAという家具メーカーですごく有名 だったり、H&Mというユニクロといい勝負をしているファストファッション業界の 産業が有名です。あとは、ソニーと提携しているソニー・エリクソンの、その創業者 エリクソンの出身の国です。よく高福祉・高負担の国と言われていますが、実際に税 金も、買うものによって違うんですが、 20 ~ 30 %です。すごく高くて、そういうふう に見られているので、国際競争力や資本主義は弱いのではないのかと言われているん ですが、そんなことはなくて、最近アメリカを抜いてスイスに次いで国際競争ランキ ング2位になりました。そのぐらい高い経済活動をやっています。また、このデータ は本当にびっくりしたんですが、 24 歳以下の投票率は70%を超えているらしいです。 日本でいうと、 24 歳以下の投票率は 20 ~ 30 %です。日本だと6 0代後半の方ですと7 0~ 80 %ぐらいの投票率になるらしいですが、そことほとんど同じだということが注目さ れています。あとは、最近1 9歳の国会議員が誕生しました。そんな感じの国でございます。
訪問先はどこへ行ったのかというと、結構あちこちに行きました。日本でいう文科 省みたいなところや、全国規模の若者会。青年事業庁というのは、後で説明しますが、 若者政策を担当している庁があるんですが、そこに行きました。スウェーデン全国生 徒会という生徒会の全国組織みたいなところに行ったり。あとは、フリーシュセット というユースセンターのすごく大きいもので、日本にもボーリング場やバスケットな どが有料でやれるラウンドワンという娯楽施設があちこちにありますが、それが完全 無料でできるような感じの施設です。中にクラブハウスもあったりして、何でこれを 無料で使わせているのか、と思うようなのがあったりしましたが、そこにも行きまし た。あとは、党の青年部、中学、高校、全国青年協議会。そして、後で紹介しますが、 「学校選挙2010」にも行きました。最後に先ほどの若者100人アンケートを実 施しました。
この中から簡単に幾つかピックアップして紹介しますと、まず「青年事業庁」です。 ここは若者政策を担当している庁です。省ではなくて庁です。その上に社会統合平等 27 省というのがあるんですが、その社会統合平等省の下にある庁としてやっています。 ただ、実際に若者政策をやっているかというと、そういうわけでもないんです。日本 と同じように色んな省庁がスウェーデンにはあるんですが、若者を対象にした政策は 色んな分野が一緒になっていますよね。雇用もそうですし、学校教育も労働もそうで す。あとは文化的なこともそうなので、あちこちと結びつけて統合的にやっていかな いと難しいだろうとなっている。だから、青年事業庁はそれぞれの企画、政策を全部 やるわけではなくて、いろんな庁の中で若者を対象としている政策を監視してチェッ クしているような感じです。実際にその政策が今の若者に対してちゃんと効果的なの かどうかというのを、青年事業庁は監視して、チェックしてという感じでやっていま す。本当にそれだけしかやっていません。そのためには今の若者の実態をしっかり知 っていかなければいけないので、調査研究をすごく熱心にやったりしています。地域 の若者政策のモニタリングといって、その地域によっても結構若者の実態も違うので ──すごく人口規模が少ないところだったり、すごく犯罪率が高くて荒れているとこ ろだったりすると若者の状態も違うので、地域ごとで分かれて調査研究もやったりし ています。それから、補助金や地方政府が若者政策をやっていくのを助けたりしてい ます。僕が面白いなと思ったのが、「若者自治体オブザイヤー」というもので、各自 治体で面白い若者政策があったら、そこに賞金を200万円あげるというもので、毎 年1つの都市が選ばれて、地域の若者政策のモチベーションを上げたり、インセンテ ィブにしたりということをやっています。つまり、実際の政策とか、実現レベルでは なくて、ほとんど確認や、地方政府がやることのモチベーションを上げさせるような ことをやっているという感じです。 次に、全国若者会を紹介します。スウェーデンでは地域ごとに若者会があります。 日本でいうなら、静岡市で1つ若者会があって、豊田市で1つ若者会があってという ふうになっています。その若者会が何をやっているかというと、地域の政策に若者の 声をできるだけ反映させていくという活動をやっています。そして、全国若者会は、 それぞれの地域の若者会との交流や教育をやっています。これらを全て若者がやって います。代表の人にも会ったんですが、 23 歳なので、今年僕と同じ年齢になります。 その人がこの全国若者会のトップとして全国若者会を運営していました。 そして、今度はLSU(全国青年協議会) です。先ほどの全国若者会との関係はこんな 感じです。
LSUは、政府やEUと、 全国の若者団体をつなげる役割をやっていま す。若者の声をLSUという拡声器を通して 大きくすることで政府に伝えていく、そんな 活動をしています。なので、LSUに入ると いうのは、団体ごと入っていく感じです。L SUに会費を払い、LSUは、加盟団体同士 の交流の機会を提供したり、リーダーシップ などの講座などの機会を提供したりという関 係になっています。あとは、ロビイングで若 者の声を政府に届けるという活動をやってい ます。政府については、さっき言った青年事業庁とも仲よくやっていまして、一緒にEUの若者のフォーラムに行ったりして、若 者当事者としての意見を述べるというのがあります。この図中の写真の人はニルマー さんという人ですが、この人も 23 歳でしたが、 23 歳にしてEUのユースフォーラムに 行ったりして、ロビイング活動をやったりしていました。 皆さんにも関係するのではないかと思うんですが、「学校選挙2010」という団 体もありました。これは学校で行われる模擬選挙です。本物の選挙ではありません。 学校の中でやっている選挙で、スウェーデンの国政選挙、地方選挙、あとはEU選挙 というのが最近あるんですが、そういう選挙に合わせて同時期に実際に学校内で選挙 をやるという活動です。ここには、青年事業庁や中央生徒協議会、全国若者会がサポ ートに入っています。各団体は、学校選挙2010のWEBサイトの運営、学校から の質問対応、マニュアルづくり、情報発信などを行っています。マニュアルは質がバ ラバラにならないよう青年事業庁の方で結構しっかりと作っていました。社会統合平 等省も一緒にマニュアルをつくって、模擬選挙をやりたいと言った学校に届けて、や ることになっています。 これは何がすごいかというと、学生団体、若者団体、学校選挙2010と国、政府 が一緒になって事業をやっています。そこがやはりすごいなと思いました。実際の選 挙ではないんですが、各政党はこういう政策をやっているというのを生徒に調べさせ て、それでプレゼンなどをする。生徒会選挙とは全く別で、国政選挙の選挙を学校で やるんです。例えば、社会民主党がこういう政策をやっていますというプレゼンを生 徒が生徒にむけてやり、それを聞いて、他を調べた生徒が他の党のことを話したりし て、最後に本物の投票用紙を使って秘密選挙をして、それを実際の国政選挙の開票日 に合わせてそちらも開票するという手順です。面白いことに、この選挙の開票結果は、 現実の選挙の結果とほとんど同じらしいんです。そういうふうにやって、学校の中で 選挙の体験を中学・高校からやっているので、結果として投票率もあんなに高いので はないかと思います。
最後に、活動を通して感じたこと、今後どうしたいのかという話をさせていただき ます。 若者支援や教育というと、年上の大人や経験ある大人が未熟な若者に対してやる、というのがこれまで考え方であったと思うんですが、僕らはそうではなくて、若者に よる若者支援が大事ではないかと最近すごく思います。「当事者が専門家」という言 葉があるんですが、だからといって僕が若者の代表だとか、大人にはわからないでし ょうと言うつもりはありません。女性だったり、障害者だったり、患者だったり、社 会的にマイノリティーとこれまで見られた人たちも、自分たちの権利実現を求めてこ れまで数々の運動をしてきました。その中で、医者と患者の例でいえば、これまでは 医者という専門家が患者のことを全部知っていて、「あなたはこういう治療がいい」 と言って、全部医者が勝手に物事を決めてしまっている、自分以外の人が全部決めて くれるというふうになっていたんですが、最近はそうではなくて、患者にちゃんと理 解を求めて、最後は患者が決めるという形になっています。そういうふうに、女性の 社会進出も女性の団体がやっていたり、障害者の団体も全国自立センターの運営は障 害者の人が半数以上を占める団体にしていくというふうに、今、大きく変わっている んですね。当事者がやっていくほうが効率がいいし、それが本物なのではないかと。 YECも全く同じなのかなと思ったんですね。社会的にも今、若者はマイノリティー、社会的弱者になりつつあると、講演会にお呼びした放送大学の宮本先生もおっしゃっ ていたんですが、そういった中で当事者の声を大きくして伝えていくことがすごく大 事ではないかと思っていて、「当事者が専門家」という言葉をすごく大事にしています。 これは大事だなとつくづく感じます。
先ほどスウェーデンの話もしたんですが、日本 は欧州の若者政策から大きく遅れていると思いました。向こうにはユースセンター、 ユースワーカー、ユーススタディーというのがすごく身近にあって、ユースセンター は町の中に必ず1つはある。ユースワーカーという職業は日本にはほとんどないと思 うんですね。学校とか、市の職員さんが施設の運営をやっていて、そのついでに若者 の世話もしてやっているというぐらいだと思います。だから、職業としてあるという ことが、まずそこで大きく違うなと。ユーススタディーというのは学問なんですが、 向こうにはユーススタディーズ学部という若者学みたいなものがある。そういうのが 学問として確立してずっとやってきたと思うと、はたして日本は大丈夫かなとすごく 思ったりしています。僕は今、留学の準備をしているんですが、スウェーデンにこの 冬から行ってこのユーススタディーというのを勉強しに行きたいと思って、今、英語の勉強をしています。
日本もこれまでの日本社会のあり方を見直すときが来ているのではないかと思いま す。去年、「子ども・若者ビジョン」というのが内閣府で出ました。その内容は、こ れまでの社会のあり方を見直していこうというふうになっています。これまでは、若 者というと何かしら問題視されていたんですね。若者は未熟で、何かあるといけない から、若者の対策をしようというように、これまでは問題視していた。ただ、今、少 子高齢化になって、次世代が頑張らないと日本はやっていけないとなったときに、そ んな考えではもうだめでしょうと、社会のそういう考え方を大きく変えていこう、僕 らが考えている社会は間違っているのではないかといった内容が、「子ども・若者ビ ジョン」です。だから、国でも少しずつそういった理解が始まっているのではないか と思います。 これは僕が勉強したことですが、僕の実感からいうと、学校教育もすごく窮屈で、 社会の縮図が学校と言いますが、すごく同じ価値観の中でしか過ごす仲間がいなくて、 且つ、中学・高校生は今、部活や受験勉強ですごく忙しくて、それ以外の活動が全くできない状況になっていると思うんですね。まずそういうふうになっていていいのか。 それと、今の時代はすごく先が見通しにくい時代だと思うんです。 80 年代や高度経済 成長期には、大学に行けば企業に入れる、企業に入ってしまえば、あとは会社が守っ てくれるからといって、すごく見通しがつく社会だったんですが、御存じのとおり、 就職率もすごく悪くて、且つ、転職もどんどん起きてくる時代なので、そういった時 代ではない。1つの価値観にとらわれている時代ではないとなったときに、何が大事 かとなったときに、僕は主体的に物事に取り組む機会がなかったら、次世代の若者に よって次の時代の社会を作っていくことができないのではないかと思います。窮屈な 学校教育の中でも部活やサークルはありますが、あれは先生に「とりあえずこれに入 っておけ」みたいに言われる。だから、学校が、生徒はこういうものに入るものだと 決めてしまう。そこで、自分のことを自分で決められない。大学受験のときも、大し た経験がないと、さて何を基準に決めればいいんだろうかとなったときに、偏差値や ブランド名や都市で決めてしまったりする。外部のもので決めてしまうというふうに なっています。僕はたまたま国際交流を中学生の頃にやっていたので、自分の価値観 で学部を決めることができました。だから、そうやって自分から主体的に何かに取り 組んだり、決めたりするという機会が余りにも少ないのはまずいのではないかと思う んです。だから、学校教育ももうちょっと緩くなったらいいなと思っているのと、そ ういう学校以外で様々な経験ができる機会が多くあったらいいのではないかと思いま す。
最後に、社会参画というと、何かしらちょっと固いことだったり、ニュースだった り、政治だったりというのをイメージしてしまいがちですが、放課後プロジェクトや YECでやっていることを通して思ったのは、社会というのはつまりは人間交際で、 人間関係の延長なのではないかと思ったりするんです。先日、Rights の勉強会でユ ースワークの専門家の方を招いて知ったことですが、ユースワーカーの仕事とは、社 会関係資本を作ることなんだそうです。社会資本の中には、経済資本と文化資本とい うのがあって、経済資本はお金であったり、文化資本というのは知識だったりします が、それとは別で社会関係資本というのがある。それは何かというと、それは人間関 係の資本だと言っています。単に友達が多いといいとか、仲がいいからいいというわ けではなくて、そういう親密な関係ではなくて、ちょっとだけ遠い人、親の知り合い や、中高生と全く別の大学生──YECの関係がそうですが、あとは、例えば僕がこ こで今日知り合った方との信頼関係ができていくことが大事ではないか。そういうの をつくっていくのがユースワーカーの仕事ではないかと言っていていました。確かに そうだなと、そういうちょっと自分より遠い人との信頼関係をつくっていくことの積 み重ねが社会への信頼になると思ったんです。スウェーデンでも、職員さん、大人の 方と若者団体をやっている人たちの間でいい関係ができていて、それでアンケートの 差もできてしまうのかなと思ったんです。だから、投票率を上げること、「若者よ、 選挙へ行け」と言うのももちろん大事ですが、その前にまずはちょっと離れた人との 信頼関係をつくる機会に若者をどんどん送り出していって、信頼関係ができていくそ の延長として、いつか地域の政治に興味を持つ。知り合いが多いと自分の地域のこと にもすごく関心を持てると思うんですね。そして、さらにその延長として国の政治な どにも興味を持てたりすると思うんです。だから、社会参画は人間関係、社会関係資 本というのを大切にしていくことが大事ではないかと僕は思います。こんなところで講演を終わりにしたいと思います。御清聴、ありがとうございまし た。
いいね!近いうちに語ろうか。笑
個人的に日本が欧米に遅れている部分は近年、日本が欧米化されてきた部分に多いと思う。欧米は大学が何百年も前から設立されているし哲学的にも科学とは何かと問われてきて学問というものが根付いているからね。日本の現代の学問は欧米の見よう見まねだからね。哲学として成り立ってきた訳ではないから。経済学の必要さを哲学的に理解せず勉強している日本人学生は多いと思う。ただ日本式だけど数学って開国する前からそこそこ盛んだったんだよね。でも学問としてでなくパズル的な感覚で取り組んでた。だからそういう関係もあって日本は自然科学や工学とか得意なんだろうなと思う。まあそこは哲学なく取り組めるしね。ただ社会科学系は日本人の哲学では何も育ってきてない。だから文化的にも一致しない。だから欧米式の発展を目指してきた結果でできた問題も解決するのがなかなか難しい。結果、何が必要かって日本は日本のやり方で生きるべきなんだよね。原発の問題だって欧米と争うために欧米式で発展を目指した結果だからね。
日曜空いてる?笑