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経済学者がおすすめするお金を貯める10の方法|お金について知りたいけどどうしても聞けないこと②

この記事は約10分で読めます。

By: John Liu – CC BY 2.0

前回のこちらの記事で、お気に入りのポッドキャスト「ラジオ版ヤバい経済学(Freakekonomics Radio)」のあるエピソードの前半を紹介しました。「お金についてみんなが知りたいけどどうしても聞けないこと」というエピソードの前半部分では、金融リテラシーがあるかどうかがわかる3つの質問にチャレンジしていただきました。

今回は、このエピソードの後半部分である「お金を貯めるために従うべしたった10個の法則」についての解説です!

こうして生まれた「お金を貯めるために従うべしたった10個の法則」

「40歳になるまでお金の使い方などまったく無関心だった」

と答えるのはシカゴ大学のシカゴ大学のHarold Pollack教授 (以降:Pollack教授)。

Gentleman came to change my light. Innocently asked if I knew where to buy index card book on my shelf.#mademyday pic.twitter.com/L6ddj8QpO9

— Harold Pollack (@haroldpollack) 2016年5月19日

あるとき身内に不幸があり生活状況が一変し「このままでは金がなくなる!」と悟るった。それからお金の使い方を猛勉強する中であることに気づいた。「金融のプロ」や「投資家」と称する、(胡散臭い)テレビで引っぱりだこの人のアドバイスよりも、専門家や学者からのアドバイスのほうが、はるかにシンプルでわかりやすいということ。そのアイディアをこのブログで発信するようになった。

教授は、

金融業界の最大の問題は「金融の最高のアドバイスが図書館で無料で知れる」ことであり「索引カード(index caed)におさまる」くらいにシンプルなものだ

と冗談をいいふらしていた。索引カードとは、索引・分類用の仕切紙のこと。日本語では情報カードとも呼ばれます。

受賞経験もあるファイナンス系のジャーナリストであるHelaine Olenをインタビューをした時に、あるとき読者から「じゃあその索引カード教えてよ!」とコメントがあった。

教授はすぐにキッチンへとんでいき、引き出しの中の娘が学校で使っていた索引カードに 「お金を賢く使う9つの簡単ルール」 を書きなぐった。その時間、わずか2分。

実際のブログと索引カードがこちら

Harold Pollack 教授の作ったインデックスカード

ブログは50万アクセス!カードはBoing Boing やライフハッカーなどのウェブメディアでもとりあげられ、ルーマニア語にも翻訳された。ワシントンポストも取り上げる事態に!

ちなみに和訳するとこの通りです。

あるユーチューバーに内容をパクられたりもしましたが、最終的には “The Index Card: Why Personal Finance Doesn’t Have to Be Complicated” という本の出版に繋がった。

というわけで、ここからはラジオ版ヤバい経済学のホストのダブナーと、Pollack教授による「お金を貯めるために従うべし法則」の解説です。ダラダラと長い解説だとそれこそ「シンプル」ではなくなるので箇条書きでお届けします!

お金を貯めるために従うべし法則その1: 収入の10〜20%を貯金する

  • 貯金をしだすと生活のストレスが一気になくなる 。
  • もともとのルールは「20%」だったが、ある読者から「28歳でバツイチ子持ちでレジで働いている私に収入の20%も貯金するというの!?ファ○クユー!」とメッセージが相次ぎ10%からに変更した。

お金を貯めるために従うべし法則その2: クレジットカードの支払いを滞納しない

  • 滞納しなければ15%以上もかかっているカード使用料が課されることはないから。
  • カード会社のあらゆるリワードプログラム(ポイント還元!など)はできるだけ無視したほうが良い。あらゆる調査で、このようばプログラムは単に浪費を促すことが証明されている。

お金を貯めるために従うべし法則その3:401kなどの非課税の税制を最大限に活用すべし

  • 401kとは自分で運用するタイプの年金のこと(日本では確定拠出年金と呼ばれており、2017年の法律改正で公務員や主婦も加入可になりました。)
  • メリットは掛け金が非課税になること。つまり、かけたぶんのお金は税金が課せられなくなる(控除)ということ。
  • ヤバイ経済学のダブナーは、

    税制の優遇措置は「富裕層への特権だ!」と非難することもできるが、それをいい出したらきりがない。税制の草案を書いている政府の委員会に友達がいない限り、仕事しまくって、今ある非課税の制度を利用するのがベストでは?

と冷静なアドバイス。

お金を貯めるために従うべし法則その4とその5:株を買う場合は一社に依存しない。 買うなら安価でリスク分散させた投資信託や上場投資信託

  • ヤバイ経済学もこれまでこのトピックを扱ってきた。結論は、「株式投資で生計を立てる人は、ダーツをする猿よりも悪い仕事をする」ようなもの
  • 猿は手数料を取るようなことはしないが、(株式投資は)低いリターンの割に会社が綺麗ななオフィスをかまえ、家やボートを買えるくらいに投資者に「課金」をする
  • だったらコストが低いインデックスファンドのほうがましとのこと
  • Pollak 教授のアドバイスは高価な投資家の誘惑は無視すること

    投資信託には、高リスクながらも高い収益を追求するアクティブファンドと、低リスク低信託報酬なパッシブファンドがあります。ここでいうインデックスファンド(インデックス投資)とは、後者のパッシブファンドのことで、人の手を入れずに機械的な指標(インデックス)の上がり下がりを基本とし、集中投資ではなく分散投資をするリスクの低いファンドのことを示します。

  • 学術的な裏づけのあるアドバイスは投資先の多様化 。例えばなん種類かの投資信託を組んだりすること。

    若いときは株式投資しかやらないとしても、徐々に資産が増えるに従ってリスクを下げるために「公債基金」への投資を増やすことも一つのやり方です。
    ー世界最大の低コストインデックスファンドVanguardの創業者ジャック・ボーグル談)

難しくなってきましたね…素人にはこれらすべてのアドバイスを実行するのが難しいので「ファイナンシャルアドバイザー」でも雇いたくなったら‥

お金を貯めるために従うべし法則その6: ファイナンシャルアドバイザーにはfidutiary standard (受託者の義務を定めた規律)にコミットさせろ

  • これはクライアントの投資利益を最大化することに専念して出し抜く行為はしないことを定めた、米国の1940年の投資アドバイス法により規定された規律
  • 実際にお金持ちの「役者」を送りつけたあるハーバード大学の調査によると、多くの年金運用会社は今の投資信託をやめて、より高価な運用プランを提案する傾向にあったという
  • だからといって全てのアドバイザーが悪巧みをしているわけではない。Ritholtzが経営する資産管理会社は、(ポートフォリオを組んでいる)顧客が3年間突飛なことを「(逆に)何もしなかったら」手数料を15%引きにするという報酬を設定している。こうすることで顧客の投資ギャンブルをしたい!という衝動を抑え運用が安定するという。
  • 少額ではあるが確実に利益を出すポートフォリオは保守的なものが多く、顧客は常にIPOやベンチャーキャピタルへの投資の誘惑があるが、その誘惑に負けずに「堅実に」運用するためのインセンティブをこのように与えているというわけだ。

日本でもこういう良心的なサービスあったら教えて欲しいです!

お金を貯めるために従うべし法則その7: 家は資産の準備が整ってから購入すべし

  • 「家の購入こそが大人になる証」だと生まれたときから自動的にインプットされているが、その考え方は気をつけたほうがいい
  • 家は裕福さの「柱」ではなく、時が経つに連れて「消耗していく」ものであるという認識が必要
  • 家の購入は高レバレッジではあるものの最も分散化されていない投資なので慎重になる必要がある
  • 経済学者は家の購入はある種の「コミットメントデバイス」と呼ぶ。コミットメントデバイスとは「最適な結果のために行動を制御するデバイス」という意味。
  • つまり「ローンを組んで散財せずに資産形成する」ならまだしも、「住宅担保貸付」をすると、万が一住宅価格が落ちたときの被害が大きいので避けるべし
  • それ以外の収入や資産などで借りれるローンなどの「信用」が準備できた時にこそ、家は買ったほうがいい

この部分、ぼくも意味がとれなくてKeita Aさんの以下の解説を参考にさせていただきました。感謝です!

Commitment device自体は「最適な結果のために行動を制御するdevice」なのでここでは「ローンを組んで散財せずに資産形成する」ならいいが、住宅担保貸付だと住宅価格が落ちたらやばいのでやめとけ、それ以外の信用(収入や資産などで借りれるローン)が準備できた時に買え、という意味だと思います。

— Keita A (@Keita43) 2018年10月4日

  • 保険に入る目的は、人生を変えるような一大事が起きたときに身の安全を確かにすること
  • 自分が死んだときに身近な人が困らないようにするためにあるのが保険
  • できるだけ控除額が大きい保険に入ることをPollak教授は推奨
  • 多くの読者がこの9つ目のアドバイスを嫌うのは政治的だから
  • しかしPollak 教授はこのルールが自分の本音だという
  • というのも彼自身、義理の兄弟が患ったときにセーフティネットに助けられたから
  • ここでいうセーフティネットとはMedicareなどの連邦政府の高齢者・障害者向けの公的医療保険制度など。

    「もちろん毎年4月15日に税金を快く払うわけではないけど、もし自分に不幸があったときにはアメリカの納税者が守ってくれると思っている。だから自分も同じことを他の人のためにすべき(Pollak教授談)」

  • 近年の多くの社会科学の研究によると、シンプルなこのような法則(nudgeともいえる)は実に効果的であるということ。
  • 人が真っ当な意思決定をしないのは、大抵の場合、ルール自体が複雑すぎるから

エピソードの最後は再び、88歳になるVanguardの創始者ジャック・ボーグルからのアドバイス。

彼は31歳で心肺停止を経験し、謎の病気を患い、終いには医者に死を宣告される。しかし生き延びて、それから数十年後、65歳で心臓移植。それからさらに21年も生き延びて、今日に至るというとんでもない人生を送ってきた。そんな彼からのお金の扱い方のアドバイスはこちら。

「感情的にならないようにして『経済』に集中するだけ。長期的に投資して、投機(トレード)はするな。短期的にみると市場の上下は予測不可能だから」
ージャック・ボーグル

まとめ

2回にわたって、「ラジオ版ヤバい経済学(Freakekonomics Radio)」の「お金についてみんなが知りたいけどどうしても聞けないこと」を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。まだ聴いていない人は、内容は掴めたと思うので、今度は英語で聴いてみるといいですよ。

ぼくは初めて聴いたときには全く理解できませんでした。それこそインベスターZを読んだりしてようやく、難しい用語の意味がわかるようになった程度でした。「お金の使い方」や「投資」と聞くと、ちょっと前までは怪しいイメージがありましたが、尊敬するシカゴ大学の教授がこのテーマで話していたので随分と見方が変わったものです。

ぼくも去年までは完全にフリーランスで個人で確定申告をしたりしていたので、お金の使い方に関してはかなり敏感になった方でしたが、今回のこのラジオを聴いて、まだまだできることはあるなと思いました。

一昔前と違って、低成長なこの時代にはただ貯金をしていても十分ではありません。年金も若い世代がもらえる額は果たしてどうなるのやら、と不安だらけです。

かたや、ネット上には怪しい誘い文句の金融商品ばかりが溢れ出す昨今、このように信頼できる人が確かな根拠でこのようにお金の使い方に関するアドバイスをまとめてくれているのは、ありがたいことです。

ただここでのアドバイスは、アメリカ社会を前提としているので部分的には日本であてはまらないこともあるかと思います。ぜひ、ぼくよりもこの辺りで詳しい方にさらに解説していただけたらと思います。

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