スウェーデンの学習サークルにみるシティズンシップ教育|JCEF連載「ヨーロッパの動きから考える」Vol.3

スポンサーリンク
こちらの投稿は、日本シティズンシップ教育フォーラム(JCEF)の機関誌への寄稿記事になります。転載の許可をいただいたので、ブログにて本文を掲載します。紙媒体での購読はJ-CEF NEWS no.14からどうぞ。

これまでの連載では、ヨーロッパにおける分断社会の到来、スウェーデンの若者会、そして特集記事ではスウェーデンの生徒会活動について紹介した。今回は角度を変えてスウェーデンの民主主義の根幹をなす「スタディーサークル」の取り組みについて紹介したい。 2017年6月、スタディーサークルの元締めの一つである学習促進協会 (Studie främjanet:以下SF)を訪問しコーディネーターのアンネさんにお話しを伺った。

スポンサーリンク

スタディーサークルとは何か?

/Users/Tatsu/Documents/20171012162731/IMG_0813.JPG

左から筆者とSFのコーディネーターのアンネさんと津富宏教授(静岡県立大学)

スタディーサークルとはスウェーデン語でStudiecirklar (英:Study Circle)と表記されるので、「スタディーサークル」と呼んでもいい。スタディーサークルは、小規模のグループ(通常5~8人)が協働で主体的にある特定の科目について学ぶことを活動の基本としている。科目は、語学、文学、芸術、工芸、演劇、社会学、音楽、自然科学など多岐に渡り、各々のグループが選ぶか、もしくはその科目を学ぶグループに個人が加入する。学習方法は、文献の輪読、講師の招待、ワークショップ、ゼミナール形式、ネットを使った遠隔学習など科目や参加者のニーズに応じて自己編成することができるのもまたスタディーサークルの特徴である。大抵の場合、月2回の学習会が4カ月継続することになる。

それぞれのスタディーサークルの活動を支援する「学習協会(Studieförbund)」が10種類ほどあり、それぞれ母体とする運動体や政治団体が異なるのでそれぞれに特色があり。例えば、ABF(労働者教育連盟)という学習協会は1912年に設立され労働・消費者運動を起源に持つ故に、左派の労働組合や社会民主党と連携している。反対に、Mbsk (市民教育連盟)という1940年に設立された学習協会は中道右派の穏健党と連携している。他にも、FSやKFUK、SKSは教会運動が母体となっているので宗教色が多少みられる。そんな中で、政治色も宗教色も持たないで、自然、動物、環境、文化を主な科目として扱っているのがSFなのである。

個々のスタディーサークルはこれらの学習協会

 

 

 

に加盟することで、少額の助成を受けたり、学習協会が所有する施設を利用したり、教材を提供してもらうことができる。

/Users/Tatsu/Documents/20171012162731/IMG_0826.JPG

ストックホルムの一等地に所在するABFの施設。カフェ、会議室、ホール、教室などはABFに所属するスタディーサークルなら無料で使用可能

スタディーサークルの参加者の募集や施設の予約なども、各々の学習協会のホームページ上で管理するができる。さらに、それぞれのサークルのリーダーに運営方法に関するセミナーを開講したりと中間支援的な役割も担うことで、スタディーサークルの活性化を促す。

2015年には、これら10種類の学習協会に登録しているスタディーサークルの数は、27万2000団体に及び、合計の参加者数は170万人であった[1]。今年、ようやく1千万人に達したスウェーデンの人口に比べると、いかにスタディーサークルが盛んであるのかを察することができる。

スタディーサークルの原理原則

学習協会に加盟した場合にはその学習協会のルールに従うことが求められるのは、国からの助成金の規定があるからだ。参加費はほとんどの場合が無料であるが一部、実学系の個人ベースでの学習をする講座については費用を負担してもらうこともある。何故ならば、それらは共同学習を原理原則に置くスタディーサークル的な活動ではないからだと、アンネは語る。

「スタディーサークルでの学には、個々人の学習がベースの大学などとは違って、より自発性を大事にます。スタディーサークルは、19世紀の終盤の新たな政治運動の中で生まれました。当時は市民の識字率が高くなかったので、字が読めて知識がある人から他の人が話しを聴くというスタイルが普通になったのです。それは知識を共有することが目的であるので、もちろん試験もなくて強制されることもありません。学び方自体が民主的なので、学校とは違って一人一人が自らの意思で参加をするので、すべての人がその場に貢献できるのです。」

その上で、スタディーサークルの活動はスウェーデンの「民衆教育(folkbuildning 英:citizen education)」 の根幹を成していると教えてくれた。民衆教育とは、図書館、民衆大学(北欧特有の18歳以上の成人が通うことができる教育機関)、そしてスタディーサークルなどの教育活動を通じて、社会を構成する市民の一人一人が、民主的で平等な方法で、新たな知識と価値を獲得することを目的としている。

スウェーデンにおけるシティズンシップ教育とは、この「民衆教育」を基盤としているのかもしれない。ただし、アンネによるとスタディーサークルは、助成金獲得のための規定による年齢制限(13歳以上でなければいけない)や、アフターワークや休日ではないと活動ができないので、子ども・若者の参加率は限定的であるという。そのような点からするとスウェーデンのこの民衆教育は、成人の生涯学習の意味合いが強いように思われる。

参考文献


[1]

スウェーデン全国教育審議会.(2017). Studieförbund

retrieved from http://www.folkbildningsradet.se/Studieforbund/

澤野由紀子.(2008). 北欧における民衆成人教育の伝統

retrieved from http://ejiten.javea.or.jp/content.php?c=TkRReU5qRTQ=

野崎俊一. (2013). スウェーデンのスタディーサークルと受講生の意識調査 (その Ⅱ).

日本シティズンシップ教育フォーラムとは、地域や社会の変革と創造に参画していく社会デザインの担い手を育む「シティズンシップ(市民)教育」や、関連する様々な教育の実践、研究、政策形成のためのプラットフォームのことで、2013年に設立されました。事業の一環で、会員向けに定期的にニュースレターを発行しており、現在「ヨーロッパの動きから考える」という連載をやらしていただいています。

Comment

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
投稿を見逃しません