「世代間対立」をのりこえる試みが若者議会:若者の政治参画 マイノリティーの声も社会へ ②

先日のこちらの投稿に続き、今回もまたSJF アドボカシーカフェの講演録をアップします。今回は、愛知県新城市で若者議会の取り組みを推進した、穂積市長の講演部分です。

この投稿は全4回にわけています。

  1. 両角による講演「スウェーデンに学ぶ若者参加を支える思想」
  2. 穂積市長の講演「自治体若者政策-新城市の挑戦
  3. 質疑応答
  4. 参加者との全体共有&全体

愛知県新城市の若者議会とは?

 

穂積市長
穂積市長

若者議会は新城市という、いち地方都市でやられていますが、こうして全国の問題意識を持ったみなさん方から、とくにソーシャル・ジャスティスという視点から、新城市の若者議会を検証していただくいい機会かなと思って参加をさせてもらいました。

新城市は、愛知県の一番東に位置し、隣が静岡県の浜松市になります。人口はわずか4万7千人、世帯数が1万7千で、高齢化率は全体で30%を超えています。山間地に行きますと40%・50%という集落があります。面積全体の80%が森林ですので、これから中山間地が始まるよというところです。第1次産業と第2次産業の構成比率(8.5%と37.3%)が全国平均より少しずつ高いかなというところです。

まずは昨年放映されたニュース番組を少しご覧ください

~番組の概要~

消滅可能性都市の挑戦 1千万円の予算内で政策を提言する若者議会(2017年6月13日放送、CBCテレビ 「イッポウ」)

新城市の若者議会は、議員は主に市内に住む高校生から20代の若者たち。この若者議会は単なるデモンストレーションではない。年間1千万円の予算が付き、その範囲内で政策を提言するという議会。地方自治の優れた実践団体をたたえるマニフェスト大賞の最優秀賞を2016年に受賞。過疎化に悩む全国の自治体から注目を集めている。

(穂積市長)「若者の可能性を信じて、若者と共にこれからのまちをつくっていくという新しい若者政策として他のまちのモデルになる取り組みだと思います。」

2015年の若者議会の立ち上げに動き、初代の議長を務めた竹下修平さん。5年前の2000年、イギリスでの交流イベント、世界新城アライアンス会議に参加して衝撃を受けたのが始まりだと振り返る――「イギリスでは、もう若者たちが自分のまちをどうしたいか、何が課題かを常に考えていて。それに比べて、自分たちは全然まちづくりについて考えたことがなかった」。

竹下さんは帰国後、友人とともに新城ユースの会を設立。外国の若者たちを招いて、新城の魅力をPRする活動を始めた。

この活動に注目したのが、新城市の穂積亮次市長。人口減少と高齢化が進む新城市は、愛知県内の市で唯一、消滅可能性都市に指定されていて、この問題をなんとかしたいと市長は思っていた。

(穂積市長)「人口が減っていく日本社会を考える時、どうしたって若者の力が必要じゃないですか。必要にもかかわらず、彼らの考え方や要望や求めるものは、じつは余り聞いていないのが政治の現状。」

こうして発足した若者議会。メンバーは公募で集まった、主に新城市内に住む高校生から29歳までの20人で、任期は1年。

若者議会の年間スケジュール。メンバーは5月の所信表明の発表後、月2回のペースで市の若手職員らと政策を立案する。8月の中間報告では、政策の方向性について市の幹部とも議論。そして11月、練り上げた政策を市長に答申し、議会の承認を経て正式に市の事業となる。

若者議会は2015年4月以来の2期=2年であわせて13の政策を提言した。実現した政策はどんなものか。

1期生の浅井さんが新城市内の図書館を案内。若者議会の議論によって、2階の郷土資料室にあったジオラマを撤去。学生が利用できる自主学習スペースにした。これまで禁止されていた飲み物の持ちこみも可能にした。公共の図書館を若者がリノベーションするという全国初の取り組み。利用者も大幅にアップした。

(浅井さん)「学習スペースが少ないというのが、若者議員の感覚や感想としてあって。どんな世代の方も使えるというのもあったので図書館を変えていくのが一番いいんじゃないかとなりました。」

浅井さんは、若者議会に参加していた大学時代は名古屋で一人暮らしだったが、就職を機に新城の実家に戻ってきた。現在は隣の豊川市のジュエリーショップで働いている。

(浅井さん)「自分と関わりが無いと思っていた市や市役所の活動が、人ごとではないという感覚。とくに地元に残っている若い人たちがより関心を持つ必要があるなと感じました。」

第3期若者議会(2017年度)の初顔合わせの日。今回のメンバーは、市内在住の15歳から20歳までの20人に、市外からの参加者5人を加えた25人。

「新城市を変えていくのを手伝ってみたいなと思ったので。」

「私たちの年代の人は居場所が無くてみんな外に遊びに行ってしまうので、まずはスタバがほしいです。」

2期生のアドバイスを受けながら、公募チームやこれまでの事業を引き継ぐチームなど3つのチームに分かれ、1年間の計画を立てる。

3期生の一人、山本くん、16歳。防災担当を務めることになった。新城高校柔道部の一員だ。山本くんが若者議会に応募したきっかけは、中学生の時に地元の消防出初式に参加したことだという。

(山本くん)「防災意識が自分から高まって。地震なんか、いつ来るか分からないのに。こんな暇があったら議員とかしたいなと思いました。」

熊本地震であらためて注目された日本最長の活断層、中央構造線が市中を横断する新城市。愛知県の自治体では最初に東海地震の対策強化地域に指定されている。

今期1回目の若者議会が始まる日。緊張するメンバーもいる中、山本くんは自分の丸刈り頭をネタに冗談を飛ばす。

3期生それぞれが所信表明を行う。

「若者議会に参加したのは、新城のことが好きというのが一番大きな理由です。」

「僕の住んでいる地区でも若者はおらず高齢者が増えるばかりで、とても大変なことになっています。なかには50年以上、舗装が直されていない所もあります。新城市はこういうところまで目が届いているのかと僕はとても思います。」

いよいよ山本くんの番。

「あまりに同級生の防災の意識が低いとあらためて思いました。なので今年一年、若者議会に入り、もっと新城を良くしていきたいと思います。」

1千万円の使い道を決める重責を担った若者たち。消滅可能性都市に活気を呼ぶ。新城市と若者たちの挑戦が続いている。

政治は遠いものではなく、生活そのものなんだよということを若者議会を通して教わったように思います。

~~~番組終了~~~

 

穂積市長
穂積市長

ざっと、現状を肌で感じていただければと思いました。

若者政策の立ち位置、いろんな角度から検証することができますし、語ることができますが、今日は私の方から二つほど大きなポイントを出させていただきます。

 

これからの家族や働き方を決める人たち――若者――の意思を反映した社会政策を

 

穂積市長
穂積市長

一つは、人口減少時代への入り方。つまり日本で若者政策、若者議会というのが大きな課題となっていると感じられるのは、いろんな時代状況がありますが、間違いなく今までで初めて高度経済成長時代以来はじめて人口減少時代に入っていくということ。

この時代は、家族とか地域とか企業とか政府とかの関係性そのものがどんどん変わっていきます。従来の家族関係というのが変わっていきますし、すでに単身世帯が子どものいる世帯を上回る時代になっています。さらに生涯の未婚率、結婚しない人も増え、あるいはLGBTのような性的少数者の方もおられる。それから子どもの貧困もある。

人は一人では生きていけないのだけれども、どこに帰属するのかという帰属の相手と意識がどんどん変わっていきます。その変わっていく中で、私は市長という立場ですから、行政・政治のことをやっています。

社会不安が非常に大きな時代の中にこれからの社会政策、社会保障をしっかりと制度設計していこうと思うと、これからの家族や働き方を決める人たちの意思が政治に反映され、組み込まれない限り、その制度設計は 絵に描いた餅になる。いくら政府が、専門家が、有識者が100年通用するぞと出した制度でも、政府への信頼性がなかったり、政府が想定する家族関係とまったく異なる形態を当事者の方が選んで行きだせば、その制度は1年と持ちません。

そういう時代的な緊張感の中で、これからの社会保障、社会政策は形作っていく必要があるが、その時に一番肝心のこと――若い女性とそのパートナーたち、つまりは若者と女性たちの社会参加、政治的な意思決定への参画――というのが決定的に欠落しているのが日本の現状だと思います。いろんな政党の立場や価値観は異なるでしょうけれども、その一番肝心のことを組み入れる仕組みを構築すること無しには、日本の社会のあり方、将来というのを共有して描いていくことはできないと思います。

いまの時代の変革の中で、若者政策が大きな課題として浮上してきたというのが、私の一つの理解です。いろいろな見方があると思います。

 

政治的な民主主義の保障を問うている若者議会

 

穂積市長
穂積市長

もう一つが、民主主義のあり方です。自由を放棄する「自由」はあるか。自治を返上する「自治」はあるか。これは昔からいろんな方が問うてきたテーマではあります。

自由を放棄する自由は一度はあるのですけれども、自由をいったん放棄すれば、その時は放棄する自由はあるかもしれませんが、その後は永続的に自由は無くなっていきます。

自治も同じで、地方自治を返上して政府に任せれば楽じゃないかと。そういう感覚が一部で生まれているのも現状です。

あるいは、どうでしょうか。極端な例かもしれませんけれども、刑務所は最高の最大の究極の福祉施設だと言われている。例えば高齢者の方で、仕事が無い。じゃあどうするか。頼る家族も無い。じゃあ軽犯罪を犯して刑務所に入れば生存だけは保障される。ならば自由を放棄して身柄を拘束されてでもそっちへ行った方がいいんじゃないのという究極の選択が起きかねない状況が一方で在ると私は感じています。

いまの若者たちがこれから人生を切り拓いていく時に、自分自身が自分の人生の主人公だという道を切り拓いていくためには、政治的な民主主義が保障されていなければ、それは絵に描いた餅になるということは歴史が教えていることです。

ですので若者政策、若者議会というのは、日本の民主主義をいまひとつブラッシュアップする大きな課題だと思っています。民主主義は一度できあがればそのまま在るものではなく、絶えず拡大したり、内容を充実させていかなければいけないものです。いま世界的に議会制を含めて、民主政治の在り方があらゆるところから問われていると思います。日本でも同じかと思います。

 

新しい世代へのリレーを通じて社会的公正を獲得する若者議会

 

穂積市長
穂積市長

論点としまして、若者政策を世代間の対立として語られることもあります。いわゆるシルバーデモクラシー。高齢者が増えれば、高齢者の有権者が選挙に来る率が高いですから、高齢者の要求は政策に反映されやすいけれども、若者が政治に行かなくなれば若者の利益は政策に反映されないと。それで高齢者だけに偏った福祉政策だけが肥大していくと。これに関して、若者が割を食っている状況があり、その若者がこれから非常に大きな負担を強いられてくる。それゆえに今度は逆に若者たちに政策資源をより重点的に配分すべきだと。だから若者政策が必要なんだと語る方もおられるかと思います。

そういう面も無きにしもあらずなのですが、本市が消滅可能性都市と言われているように、大きな人口減少時代に入っていくと、今日の若者は明日の高齢者ですから、「世代の継承」、「世代の更新」が本当に地域でできるのかというギリギリのことを探っていかなければなりません。

そうすると、いわゆる高齢者と若者との世代間の戦いとしての若者政策という立ち位置をとることはできないし、むしろそこからいかに「世代間の交流」、「新しい世代へのリレー」、そしてそのことを通じて「社会的公正」を獲得していく。いわゆるソーシャル・ジャスティスということでしょうけれども。そのための仕掛けとしての若者政策、若者議会なのだということを、私としては強調しておきたいと思います。

とくに若者議会、若者政策をやっていきますと、若者が地域社会と関わりを持っていきます。若者は流動性が高いから、いつかは高校生・大学生になればどこかに行く、就職をすれば名古屋や東京に行くというように、地域社会の中では「通過する人」あるいは「成長する人」とは見られていても、「地域社会を継続的に構成する主体」とはほとんど見られていませんが、若者議会・若者政策をやりますと否応なしに若者が地域社会と向き合っていきます。その時に若者自身が地域をどう見るか、そして地域の方から若者にどういう要求を出していくか。これで新しい意識の交流が始まっていきます。

先だって若者議会から今年度の最終答申を受けたのですが、その中である若者議会のメンバーが「地域社会から応援される若者議会ではなく、地域社会に必要とされる若者議会をつくっていきたい」と表現しました。若者議会の登場によって、そのように意識が劇的に変わっていき、そして地域の中で世代間をもっとしっかり結びつけて行く必要があるということが、高齢世代にも強く意識されて行きます。

 

教育委員会と若者議会で協議 中学校でシティズンシップ教育 

 

穂積市長
穂積市長

若者自らが持ち込む主権者教育――学校と社会的自立についてお話します。

高校生以上が新城市の若者議会の主体なのですが、小学校や中学生に若者議会のメンバーが学校に入っていってシティズンシップ教育をやりたいと若者議会が言いだして、教育委員会と協議をしてもらいました。最初は教育委員会は非常に頑なで、カリキュラムがあって授業に関わるのはそんな簡単なことではないというように言われながら、ただ何とか折り合いをつけようということで、昨年度はじめて一つの中学校をモデルにして、まちづくりへの参加意識を高めるワークショップを若者議会のメンバーが自ら入ってやりました。

そのように若者ということを一つの媒介にして、上の世代と下の世代が連携をしていくつなぎが具体的に見えてくる。そして中学生議会の中から若者議会への参加者が出てくる。

先ほどのテレビで見ていただいた若者議会の初代議長の竹下修平君は、若者議会を卒業した後、実は昨年10月に市長選挙・市議会議員選挙があって、市議会議員の選挙に立候補し、みごと最年少の議員として当選しました。

まちづくりのワークショップで「10年後の新城市がどうなっているか予測してください」とグループ討議をしてみなさんに書いてもらいました。その中のかなり大勢の方が、10年後には市議会議員の半分は若者議会の経験者になっているだろうと書いていました。若者議会を見てきた市民がそう書いているのです。実際にそうなるかどうかは別として、間違いなくそういう予測が起こっているのです。

それは効果が非常に早く現れ、かつ関わった人たちのインパクトが強くなっている。

アメリカのいくつかの州や都市では、教育委員会に高校生が入ることを必置にしている所があります。日本は、教育委員会は法律上は25歳以上しか入られませんが、私は教育委員会と若者――高校生以上ぐらいの世代―とが恒常的な協議を持つべきだと思っていて、教育委員会にもできるだけそういうふうに働きかけていきたいと思っています。中学生でも不登校やいじめなどの問題がたくさんあります。進路の問題もたくさんあります。そういうことに教育委員会がきちんと関われるかどうかは、きのう中学生だった高校生、おととい中学生だった社会人が、教育委員会で学校のことをしっかりとお互い話せるかどうかが1つの大きな試金石かなと思います。

いま一部ではブラック校則と言われていますけれども、暗たんたる気持ちがいたしますが、そうした状況を打破しない限り、若者の政治参加、主権者教育といっても絵に描いた餅です。

高齢化が進む地域社会と、これからの社会を担っていくであろう子どもや若者たち、それをつないでいく役割は間違いなく若者政策・若者議会の大きなポイントだと思っています。

いまの社会的な格差、孤立、あるいは政治的無関心、こういうものと若者議会は自ら戦っていくことを通じ成長していくわけですし、より多くの参加を呼び掛けていくことを通じて自分たちの役割を自覚し、そこに誇りを持っていけるだろうと思います。

若者議会は自治の原点だということをご報告申し上げたいと思います。

(講演終わり)


続きの質疑応答部分は、次回の投稿でアップします。

    1. この投稿は全4回にわけています
  1. 両角による講演「スウェーデンに学ぶ若者参加を支える思想」
  2. 穂積市長の講演「自治体若者政策-新城市の挑戦
  3. 質疑応答
  4. 参加者との全体共有&全体対話

 

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