先日、日本若者協議会の主催するある「民主主義の担い手育成パッケージ第一回勉強会」にて機会をいただき、日本の若者政策の課題について講演しました。私にとって特に意味が大きかったのは、後半で「生活世界とシステム」という視点を使いながら、若者の生活世界の再構築の必要性について、発信したことです。
この記事では、当日の内容を振り返りながら、私自身の問題意識とこれからの課題について整理したいと思います。
スウェーデンから見えてくる「日常にある民主主義」
スウェーデンは、人口約1000万人の小さな国ですが、若者の社会参加や幸福度に関する国際的な調査で、常に上位に位置しています。私はこれを「制度(システム)と生活世界が地続きであることの結果」だと考えています。
講演では、スウェーデンの若者政策の3つの柱を紹介しました。
学校の民主化:クラス会議や給食協議会などを通じて、生徒の声が学校運営に反映される仕組みが日常に組み込まれています。
若者団体への支援:多くの若者が団体に所属し、自治的に活動しています。ここで民主主義を“習う”のではなく、“体験”しています。
ユースセンターの存在:1500以上の施設が、若者にとっての居場所や対話の場として機能しています。
こうした仕組みは、若者を“未来の担い手”としてだけではなく、“いまの社会の一員”として認めている所以だといいます。
「生活世界とシステム」という視点
この講演で最も強調したかったのは、後半で取り上げた「生活世界とシステム」という理論的視点です。これは、社会学者ユルゲン・ハーバーマスの概念に基づいたもので、私自身、ユースワークの研究を通じて強く意識するようになった問題意識です。
生活世界:人と人との関係性、価値観、感情、語り…つまり、私たちが日々生きている世界そのもの。
システム:行政、教育、経済など、目的合理的に動く制度の世界。
今の日本では、制度(システム)がどんどん生活世界に侵入し、「効率」や「成果」が若者の育ちや関係性を押しつぶしている、というのがテーゼです。
若者の声は届いているか?
日本でも「若者の声を聞く」こと自体は、ここ数年でずいぶんと推進されてきました。意見聴取や模擬選挙、政策提言の機会などが増えているのも事実です。
しかし、私はそこに強い違和感を覚えます。
本当に若者の声が「制度を変える力」になっているのか?
その声は、誰に向かって、どのように届いているのか?
つまり若者の生活世界を再構築することこそが、いま必要な問いなのではないでしょうか。
提案
講演の最後に、4つの行動の方向性を示しました。ここで改めてまとめておきます。
✅ 1. 学校を、もっと“社会”に近づけること
学校を一方通行の教育の場ではなく、若者の声が生かされる日常の政治空間にする。
✅ 2. 制度の外側にある若者の声に耳を澄ませること
意見聴取や政策提案だけでなく、対話、沈黙、感情といった非言語の表現にも価値を認める。
✅ 3. “生活の現場”から制度を編み直すこと
若者のリアルな生活世界を起点に、制度設計や支援のあり方を見直す。
✅ 4. ユースワークやユースセンターの可能性を広げること
制度に絡め取られない“自由な場”としての価値を再評価し、その維持・支援を政策的に整える。
終わりに──「見えない世界」を語り続ける
若者の生活世界は、システムの論理では捉えきれない複雑さと豊かさを持っています。システムと生活世界を逆転させ、システムを若者生活世界が使い慣らす。それが「若者の生活世界の構築」という視点になります。
システムの“外側”にある声にこそ、社会を変える力が宿っている──そんな思いを込めて、これからも発信していきたいと思います。



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