なぜある人は北欧礼賛に反対するのか?

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“「毎年一時帰国するたび、日本で、福祉大国の理想郷としてスウェーデンが語られることを苦々しく思っています。税金が高く、『高負担』は確かですが、『高福祉』には疑問点も多く、日本よりはるかに優れた社会という見方には賛同できません”

http://ww16.fukushi-sweden.net/news/2010/sv.news.1016.html?sub1=20240517-2039-023e-9fd0-756b2215b0ad

こちらは『富山は日本のスウェーデン』(井手英策)で紹介されていた、2010年の朝日新聞のスウェーデンの小学校教員からの投書であり、当時、注目を集めたという。さてこの投書のスウェーデンへの「価値づけ」はどこからきているのでしょうか?

北欧礼賛への反発

もちろんそれは、当時の日本でのスウェーデンを持ち上げる風潮でしょう。「約束の地」と日本で賞賛されていた国への、一面的な価値づけに現地の人が違和感を持ったことによる反発とみることができます。北欧を無条件に褒め称える「北欧礼賛主義」と、それに反対するアンチ北欧礼賛主義の構図が見え隠れします。

人間の本能からみる北欧礼賛への反発

一連の応酬はハンス・ロスリングのFactfullnessで紹介している、人間の事実の認識を歪める「本能」に依拠しているのでは?と考えることもできます。

例えば、同書で紹介している10種類の人間の本能のいくつかを、北欧礼賛主義とアンチ北欧礼賛主義に当てはめてみるとこのようになります。

・分断本能(日本と北欧は全く違う世界)
・ネガティブ本能(日本/北欧はどんどん悪くなっている)
・過大視本能(北欧で見聞きしたことを過大評価すること)
・パターン化本能(北欧での1つの経験をすべてに当てはめてしまう)
・単純化本能(北欧/日本が良い/悪いことの理由は〜だからだ)
・犯人探し本能(北欧の治安の悪化は移民のせいだ!/ 日本の格差は〜政権のせいで悪化した!)

いかがでしょうか?

スウェーデンのこの日本人小学校教員の投書の内容は、もちろん事実を含むでしょう。しかし、一方で投稿者の生活実感と事情が個別具体的かもしれないのに、意見を「固定視点」的に「ネガティヴ」に「一般化」している部分もあるのではないでしょうか?それを拡声器としてのメディアによって拡散したことで、さらに注目を集めました。

現地在住者によるアンチ北欧礼賛主義の根拠は、自分の生活の中での経験と現地の人の声、現地のメディアなどがほとんどです。もちろん事実の提供はありがたいことです。しかし、だからといってそれらすべてが100%事実とは限らないのです。バイアスはつきものです。

現地在住者こそが現地の国の「専門家」と取材されたり、ご意見番になったりしますが、果たして本当にそれで大丈夫なのでしょうか。現地のことに詳しくても、情報発信や伝達者としてのプロであるとは限らないのにも関わらずです。

人には様々なバイアスがあるのでそれによって、対象の印象を価値判断してしまうことが多々あります。たまたまスウェーデンにいった時に、冬で雨だったので「暗そうな国」と感じる人もいれば、事前の高評価という「色眼鏡」を通じてみた現地の教育実践を「みよ!日本も手本とすべし!」という人もいます。

現地在住者に関していえば、外国人だからこそ感じる生活の苦労があります。それを知らずにスウェーデンを礼賛する日本人に対しては、当然、一言申し上げたくなるでしょう。しかし、だからといって一面的に生活の不満の矛先として国の制度の欠陥ばかりを指摘してはいけませんね。自分の「思うこと」がどの感情からきているか、ひと呼吸置いてみましょう。

逆に北欧について知っている人は、北欧を持ち上げる傾向にありますがそれもまた一面的であることに自覚する必要があります。(自戒も込めて)

ではどうしたらいいか?

紙面やテレビでとりあげられる出来事は、基本的に「劇的(dramatic)」であると捉えて「事実」に真摯に向き合うこと。一方で完全に中立な客観的な基準など、あり得ないと認めること。その辺りをウロウロしながら、対象(北欧・日本社会)に「良し・悪し」という価値判断を、すぐにくださないことが大事なのかもしれません。

以上、北欧礼賛とアンチ北欧礼賛という(本当は架空な、しかし言論空間ではよくある)二元論をドラマ化しようとしている、僕のバイアスの産物をお届けしました。

ちなみにFactfullnessの著者、故ハンス・ロスリングもスウェーデン出身の研究者です。
同書によるとファクトフルネスとは

「今すぐに決めなければならない」と感じたら自分の焦りに気づくこと

ということです。焦りに気づいたら

・深呼吸をする
・データにこだわる
・占い師に気をつける
・過激な対策に注意する

ことが大事とのことです。
人間の世界への理解を歪める本能について綴った本書、おすすめです。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)

ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド/上杉 周作/関 美和 日経BP 2019年01月12日頃
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