ヨーロッパのユースワークの現在地〜新自由主義の荒波の中で〜

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僕が所属する文教大学の研究所の紀要に、ユースワークに関する論文を投稿し、公開されましたのでここで共有します。執筆にあたり助言をいただきました津富教授(静岡県立大学)に感謝申し上げます。

論文の目的は、EU(欧州連合)の若者政策においてユースワークがどのように定義され、論じられてきたかを明らかにすることです。手がかりにしたのは第1回欧州ユースワーク大会宣言と第2回欧州ユースワーク大会宣言の決議文書です。

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欧州ユースワーク大会宣言とは?

2009 年 11 月EU 理事会は「青少年分野における EU の協力についての新たな枠組み(2010-2018)」を採択しました。この枠組みの中で、若者の「余暇活動」「学校外」教育の分野に属し「ノンフォーマルな学習過程と自発的な参加」に基づくユースワークを、若者政策を担う重要なアクターとして位置づけました。

EUの若者政策の変遷

そのうえで、ユースワークの社会的認識、方法論、研修、移動の保障などにかんするさらなる議論を続ける必要性が強調されました。この要請に応える形で、ベルギーのゲントにおいて開催されたのが第一回欧州ユースワーク大会でした。

欧州ユースワーク大会の様子

2010 年 7 月に開催され、50カ国から 400 人以のユースワーク従事者および関連の仕事をする人、そして若者が参加しました。

それから 5 年後の 4 月に再び EU 議長国ベルギーのもとブリュッセルで開催されたのが、第2回欧州ユースワーク大会です。どちらの大会も、ユースワークに携わる参加者が 400~500 人規模で欧州各地から集結しました。

その成果物としてまとまったのが第1回欧州ユースワーク大会宣言と第2回欧州ユースワーク大会宣言です。

この2つの決議文を比較することでヨーロッパのユースワークの現在地や課題を明らかにできるのではないかと考え、まとめてみました。

例えば2つの宣言の見出しだけみてみるとこのようになります。

それぞれの内容を要約した後に、以下の3つの観点から比較考察をしました。

  1. ユースワークの定義に関する議論
  2. ユースワークの実践の質の保障と社会的認知
  3. 緊縮財政下におけるユースワークの意義の強調と道具化への懸念

特に3点目の観点は、新自由主義的な緊縮財政の中で公助がやせ細っていく日本の状況と照らし合わせて読まれるといいかと思います。

新自由主義の荒波にユースワークがのまれないために

簡単にまとめると、ヨーロッパではユースワークが政治的にも財政的にも支持されつつも、ある国では緊縮財政の犠牲となっている状況があります。これまでは余暇の充実や社会教育の一環として取り組まれたユニバーサル(普遍主義的なアプローチ)をとっていたユースワークが、「問題のある若者」を対象にして就労支援や犯罪防止、学習支援などの問題解決型のターゲットアプローチになるという帰結をもたらしました。(新自由主義が強い英・米が顕著ですが日本でも同じような状況かと思います。)

格差社会化が進行し、これまで以上に誰もが「転落しやすい」世の中になっているからこそ、ターゲットアプローチが必要になっているわけですが、こればかりをやっているとユースワークの本来のあり方が霞んでしまうという危機感が、この宣言でも明示されています。対処療法的なユースワークをしなければいけなくなっている、そもそもの社会のあり方(自助・共助に頼り過ぎな新自由主義社会)が問われてきている、と考えることもできます。

関連してユースワークに「アウトカム」を特定し計測するべし圧力がかかっていることに懸念を示し

「アウトカムや影響の計測が重視されるべきではあるが、ユースークは若者の過程とニーズに集中すべきであり、アウトカムは報告されるものであり、導き出すものではない。」

と釘を刺しています。強いメッセージです。

後半部では、さらに語調を強めユースワークは「贅沢品ではなく必需品」であるとし、ユースワークに資することを怠
ることがもたらす 3 つの帰結を提示しています。

マニアックな内容ですが、お手すきのときにご覧頂ければと思います。2つの宣言の違いの比較をまとめた表をみながら読まれるといいと思います。

ダウンロードは以下から可能です。

ユースワーク大会宣言比較.両角.2019.3

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