公約比較をしても「若者のミカタ政党」がみつからなかった理由

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水曜日にとあるイベントで登壇しました。

日本若者協議会という、若者の声を集約し政策に反映させる協議会による「ワカモノの見方」である政党はどこかを議論する会でした。

第48回衆議院選挙サミット『ワカモノのミカタ政党はどこだ!』

若者の意見を政治に届けよう!

もともと参加する予定だった立候補者は中立性観点から参加ができなってしまったので、僕を含めたゲストと参加者の若者らで公約を読んでオープンに議論する会となりました。

ぼくは若者政策の若手専門家という立場で招待いただいたので、念のため事前にマニフェストを読み込んで会に備えました。冒頭、参加者全員が自己紹介をした後に「ではどうぞ!」とゴングが鳴ったので早速、若者参画政策の視点でコメントさせたいただきました。

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若者のミカタの政党はどこか?

僕からコメントしたことは以下のとおり。

  • 18歳選挙権実現に伴い、被選挙権年齢への引き下げもほとんどの政党のコンセンサスにある点は評価できる
  • しかし「何歳へ」「いつ」引き下げるのかという足並みはそろっていないし、そのプロセスと引き下げ( or ない)の背景にある理由を知ると政党の若者参画への考え方が垣間見える
  • 一部、「若者団体」や「審議会への若者の登用」について触れている政党もあるが、基本的には選挙における「政治的な参加」程度にしか参画政策は意識されていない。
  • 若者の参政権の障壁となる環境整備(供託金廃止など)についての言及をしている政党も部分的
  • 若者の参画政策の参画のチャンネルを多様化していく努力が必要。
  • 現状では、内閣府が実施しているユース特命委員会(ネットで登録した人が意見を送信できる。また政策立案者との直接的な懇談会も最近は実施)や、子供若者育成推進支援検評価会議(専門家がほとんど)、子供若者白書による実態調査に限定されている。
  • 例えば、各地の若者団体に参加する若者、最近の子供・若者白書で重要性が認識された全国の「居場所(児童館や若者総合センター、勤労青少年会館など)」に集まる若者、全国のジュニアリーダー的な活動やボランティア、国際交流に参加している若者、政党青年部、各位の若者会議(若者議会)などの自発的な若者の地域参画の促進に取り組む若者、生徒会・学生自治会に関わる若者、などから声を集約するのみならずこれらの参画の機会を支援することはまだまだできる
  • そしてこれらの機会が、若者の積極的な市民性を培う機会となるという位置付けること
他にも指摘すべき点はありましたがひとまずここまでで終わり。残りは以下の記事を読めばわかります。
先日、自民党の若者の政治参加検討チームで講演した際も、若者団体協議会の位置付けや若者団体の活動に助成金を捻出することなどを提言したが、時間が限られていたこともあり、それらの意義を十分に伝えることはできなかった。 そういうわけで、今一度ここで補足してみる。

若者参画以外の若者向けの政策に関しての雑感は以下の通り。

  • 自民党・公明党は、地方創生や農林水産分野で「若者の活用」の言及が多い。その上で自民は雇用面に関しては就職内定率の高さなどをアピール
  • 公明党は、手広く若者について言及。自民党でカバーされていなかった、災害復興や社会包摂政策においても若者について言及
  • 希望の党は、供託金の見直し、電子投票、ベーシックインカムの導入など革新的な政策において若者について言及
  • 共産党は「5、この国のすべての子ども、若者が、健 やかに育ち、学び、働くことを可能にするための保育、教育、雇用に関する政策を飛躍的 に拡充すること。」という野党の共通政策にて若者について言及。その上で「予算の改革をし、社会保障・教育・子育 て・若者を優先して格差と貧困の是正」を目指す。というがそれ以上の言及はない。
  • 立憲民主党は、「若者」という単語は使用していない。しかし、若者の生活状況を良くするための前提条件となる包摂社会の強調が明確。
  • 教育無償化、働き方改革、子供の貧困是正に関しては、政策の細部に相違点はあるものの向いている方向はどこも近い

あと公約読んでつぶやいたこともついでに。

その後、参加者らと議論。財政問題、教育無償化、憲法改正などなど各々の視点でコメントがありました。しかし、若者政策に限った議論に限定しているわけでも、そもそもの共通の議論の素地となる若者政策の定義などなかったので、議論が拡散してしまった感がありました。

公約比較の限界

今回生まれて初めて、公約をがっつり読んでみて思ったことがあります。

公約比較の限界です。

比較をするためには共通の軸や枠組み、そして基準がないといけませんが公約は各党それぞれで書き方も、使っている文言も異なります。単純に「若者」という単語の頻出度を調べると以下のようになります。

自民
7回
公明党13回
希望7回
共産4回
立憲民主0回

これらの言及の前後の文脈だけで「若者政策が充実している政党はどこか?」と判断していいのか?

この判断基準でいうと例えば立憲民主党は、若者政策を一切掲げていないように見えますし、上述したコメントも薄いです。しかし、実際は立憲民主党の元である旧民主党(おそらくリベラル派)政権下で子ども若者育成支援推進法は成立し、発展して行ったわけです。

そういうことは公約だけからは何もみえてきません。

だから公約は若者に言及して具体的であればあるほど良いわけでもなく、何でもかんでも盛り込んでいればいいわけでもないんです。

メニューが多すぎて何を選んでいいのかわからないレストランの如く…

若者について考えている政党=若者について触れている政党ではないんです。

若者政策の共通の枠組みがなかった

なぜ若者政策の比較ができなかったのか?若者政策は、「若者」という言葉で輪切りにできないくらい幅広い政策であるからです。そして「若者」自体が移ろい行く概念であるからです。

だから若者政策の共通の枠組みをまず定義することがもっと一般化して、各政党が「若者政策」を作れるくらいに情報提供していかないといけません。例えば、僕が所属するベルリンのシンクタンクYouth Policy Lab の若者政策のファクトシートでは若者政策の分析を世界190カ国以上でやっていますが、ここの分析枠組みを使うこともありでしょう。

現在の政策を、ここで提示されている若者政策の項目(若者の定義、法的年齢、法律・政策、ガバナンス、若者の代表組織、予算)と若者政策に間接的に影響を与えるその他の指標(教育費、若者の失業率、GDP、HDI、GINI係数、腐敗指数、報道の自由指標、人口ピラミッドなど)の理想を、それぞれの政党に書き込んでもらうということはできます。そうしたら実質的な比較は可能になりますし、議論も若者政策に重点的に置かれることになるでしょう。

「子ども・若者ビジョン(2010)」は、「子供若者大綱(2016)」でこう変化した

あとは現在の政策がどう変化しているかをみるパターンで、若者政策を議論することも可能です。

日本の法制化された若者政策とされる、「子供若者育成支援推進法」は2009年に時の民主党政権下で成立し、それを元に大まかな方針を示す大綱「子ども若者ビジョン」が2010年に決定されました。この大綱は数年ごとに改定されることになっており、2016年に新たに「子供若者育成支援大綱」が自民党政権下で成立しました。どちらも子供若者育成支援推進法を基礎にしており、その枠を出ることはありませんが政策の細かい方針やコントラストは、この大綱でより具体的に定めることになっているのです。

ですので、時の政権下でどうこの大綱が変化したかをみることによって、政党の若者政策に対する考え方がわかってきます。例えば、「若者参加」がこの二つの大綱でどのように打ちだされたのか確認してみましょう。ぼくの考える若者参画政策に該当する項目を抜き出して、その部分を比較してみます。

まずは2010年の子ども若者ビジョン。

子ども若者ビジョン (2010)の若者の参画政策

(2) 子ども・若者の社会形成・社会参加支援

1 社会形成への参画支援

(社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)の推進)

社会の一員として自立し、権利と義務の行使により、社会に積極的に関わろうとする態度等を身に付けるため、社会形成・社会参加に関する教育(シ ティズンシップ教育)を推進します。

具体的には、民主政治や政治参加、法律や経済の仕組み、労働者の権利や 義務、消費に関する問題など、政治的教養を豊かにし勤労観・職業観を形成 する教育に取り組みます。

(子ども・若者の意見表明機会の確保)

政策形成過程への参画促進のため、各種審議会や懇談会等における委員の公募制の活用、インターネット等を活用した意見の公募等により、子ども・ 若者の意見表明機会の確保を図ります。

子ども・若者育成支援施策や世代間合意が不可欠である分野の施策につい ては、子ども・若者の意見も積極的かつ適切に反映されるよう、各種審議会、 懇談会等の委員構成に配慮します。

2 社会参加の促進 (ボランティアなど社会参加活動の推進)

ボランティア活動を通じて市民性・社会性を獲得し、地域社会へ参画する ことを支援します。

(国際交流活動)

若者の国際理解や国際的視野の醸成、日本人としてのアイデンティティの 確立を図るため、国内外の青少年の招へい・派遣等を通じた国際交流や異文 化体験の機会の提供を行います。

子ども若者ビジョンでは、社会参加に関する教育として[シティズンシップ教育]を盛り込み、さらに意見反映のために子ども・若者の意見表明機会の確保」を打ち出しました。ボランティア活動も「市民性」、「市域への参画」という文言とともに打ち出されています。

ちなみに根拠法である、子ども若者育成支援支援推進法(2009)において、意見の反映は第12条において

「国は、子ども・若者育成支援施策の策定および実施に関して、子ども・若者を含めた国民の意見をその施策に反映させるための必要な措置を講ずる」

と力強く打ち出されています。さらには、「子ども・若者の意見を聞きながら、子ども・若者育成支援施策の実施状況を点検、評価」することによって、政策の影響を受ける当事者である子ども・若者を政策の意思決定過程に巻き込んでいくという、これまでにない非常に参画度の高い項目もできました。

(※ぼく自身も、実は「内閣府子ども若者育成支援点検評価会議」という、子供若者育成支援推進法の実施状況の点検と評価をする委員会に、「若者枠」として参加していました。当時の委員会 (十数名)の構成でも20代はたった2名で、EUやスウェーデンと比べると大した数字ではありませんが、これまでにない大きな前進であったことは間違いないでしょう。)

子ども・若者育成支援大綱 (2016)の若者の参画政策

2016年2月9日、子ども・若者育成支援推進法(2010)に基づき設置された子ども・若者育成支援推進本部は、「子ども・若者育成支援大綱」を改定しました。これによって2009年に定められた子ども・若者ビジョンは廃止されました。

大綱における若者参加の項目をみてみましょう。

(4)社会形成への参画支援

(社会形成に参画する態度を育む教育の推進)

社会の一員として自立し、適切な権利の行使と義務の遂行により、 社会に積極的に関わろうとする態度等を育む教育を推進する。 民主政治や政治参加、法律や経済の仕組み、社会保障、労働者の権利や義務、消費に関する問題など、政治的教養を育み、勤労観・職業観を形成する教育に取り組む。

(ボランティアなど社会参加活動の推進)

ボランティア活動を通じて市民性・社会性を獲得し、地域社会へ参 画することを支援する。

もっともわかりやすい変化は、「社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)を推進」を削除したことです。またいみじくもビジョンにあった(子ども・若者の意見表明機会の確保)の項がバッサリなくなっています。大綱の「(4)施策の推進等」には、

(審議会等の委員構成への配慮)

若者育成支援施策や世代間合意が不可欠である分野の施策については、子供・若者の意見も積極的かつ適切に反映されるよう、各 種審議会、懇談会等の委員構成に配慮する。

(関係施策の実施状況の点検・評価)

本大綱に基づく子供・若者育成支援施策の実施状況について、有識者や子供・若者の意見を聴きながら点検・評価を行う。

として、子ども若者の意見を聴くことを盛り込んでいますが、政策形成過程への参画を全面的に押し出していたビジョンと比べると明らかに、トーンが弱くなっています。

いずれにせよ、「子ども若者の意見を聴く」が参加の限度であり、それ以上の高い参画は求められていないことがわかります。「意見は参考にする、しかし決めるのは私たち」という解釈もする人もいるかもしれません。総じて、ビジョンも新しい大綱も、ヨーロッパの若者政策と比較すると大差はありませんが、新しい大綱はビジョンの劣化版、つまり昔ながらの若者政策へと逆戻りしたバージョンであるといえなくないです。

***

こういった具合に分析ができます。大綱のその他の部分も読んでみて比較してみてもいいでしょう。

響のいい若者政策を超えて

いずれにせよ、若者政策は全体的に良くはなっているようにはみえますが、現実はスタート地点に立ち、歩み始めたばかりです。すべての政党の公約で掲げる若者政策の要素が盛り込まれたらなかなか「響のいい若者政策」にはなりますが、そこには若者票を取りたいという裏の目的があります。これは若者を投票者という限定的な視点で捉え、その背後には若者と大人の間での「権力関係」の変化は起きていなく「大人が若者を正してあげる」というパターナリスティックな思想が見え隠れします。

ぼくらがみるべしは、投票以外で若者に託していく政策を打ち出してくれる、つまり本質的な意味で若者参画を保障しているかどうかです。それが社会をアップデートするはじまりになるからです。

最後に先日投稿した「なぜ人は路上ギターに投げ銭するのか?|ノーベル経済学受賞者はこう考えた。」の一文を掲載します。

選挙が残酷なのは、選挙戦略で勝つためには浮動票が多い地域を優先して応援演説をしたりと、とてもイーコン(経済的合理主義)的な側面があることです。選挙が終われば投票率が出て、思った以上に投票率が伸びていなくて「何であんなに盛り上がっていたのに…」「この人たちが投票すればあの政党が勝っていたのに」と落胆する人もいるでしょう。

しかし、僕らが本当に向き合うべきはこの数字に出てこなかった、生の人間なのかなと。それこそ行動経済学がアドボケートする、本物の人を見ること。昨年は、ブレクジット、ドナルド・トランプ誕生と欧米の政治が激動した年でしたが、どちらの選挙でも投票率はスウェーデンほど高くはなく、むしろ様々な局面において経済・社会的な分断がますます加速してきています。日本も大局的には同様の文脈の中にあるでしょう。最近友人から借りた『ワークシフト』いう本では、さらなる都市のメガポリス化、新たな貧困層の表出がこれからさらに起こることが予言されています。

大事なのは、選挙以外の場面で社会に参画できるようにしていくことですし、選挙投票しない層と向き合うことです。イーコン的な教育アプローチがうまくいっていたら苦労してないはずです。若者政策やユースワークは、そういう意味で偏差値の高い私立高校で限定的に展開されている「主権者教育」よりも射程は広いし、意義深いものであります。しかしまだまだ領域分断的であることは否めないでしょう。

そして選挙に際しては、一人一人の個人を「1票」としてみなすのではなく、(選挙投票するかしないか関係なく)人として向き合うこと、それがセイラー教授からの教えなのかなと思いました。

さて期日前投票、いってきます。

ちなみに今年ノーベル経済学賞を受賞したセイラー教授によると、投票率を高めるためには以下の手段が有効だそうです。

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先日、自民党の若者の政治参加検討チームで講演した際も、若者団体協議会の位置付けや若者団体の活動に助成金を捻出することなどを提言したが、時間が限られていたこともあり、それらの意義を十分に伝えることはできなかった。 そういうわけで、今一度ここで補足してみる。

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