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スウェーデンの学校選挙2026、投票率81.9%で過去最高|参加校の偏りと残る論点

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スウェーデンでは、国政選挙にあわせて、中学・高校の生徒が学校で投票する「学校選挙(skolval)」が行われています。以前、このブログで政党の来校をめぐって騒動が起きても、スウェーデンの学校が政治を教え続ける理由について書いたことがあります。2026年9月の総選挙にあわせて行われた今回の学校選挙について、確定した結果が公表されました。

学校選挙については、拙著『若者からはじまる民主主義』(萌文社、2021年)の第3章「教育政策と学校」で「中・高生が投票するスウェーデンの模擬選挙『学校選挙』の秘訣」として取り上げたほか、共訳したスウェーデンの主権者教育の教材『政治について話そう!』(図書出版アルパカ)でも書いています。今回はその後の最新の動きとして、2026年の学校選挙を読んでいきます。

スウェーデンの若者政策・市民社会政策を担当する国の機関、スウェーデン若者市民社会庁(Myndigheten för ungdoms- och civilsamhällesfrågor、MUCF)は、2026年10月21日のニュースで、「国会学校選挙(Riksdagsskolvalet)2026」の最終結果を発表しました。投票した生徒は41万人を超え、投票率は81.9%と、2002年以降で最も高い水準になりました。一方でMUCFは、すべての生徒が投票の機会を得られているわけではない、とも書いています。この記事では、MUCFの公表資料に沿って、何が起きたのかをできるだけ正確に紹介し、そのうえで考えた問いを書きます。

MUCFが公表した学校選挙2026の確定結果

MUCFの学校選挙2026の結果ページによると、参加した学校は1,456校、参加校の生徒数(Antal elever)は502,344人で、そのうち411,364人が投票しました。投票率は81.9%です。MUCFのニュースは、これを2002年以降で投票した生徒の数、投票率ともに最も高いものだとしています。

投票のうち有効票は382,582票(93.00%)で、白票(blanka röster)は18,401票(4.47%)でした。スウェーデンの学校選挙では白票は無効票として扱われ、政党の得票率の計算には入りませんが、投票率の計算には含まれます(MUCF「学校選挙についてのよくある質問」)。

前回の国会学校選挙である2022年の結果では、参加校は1,449校、投票した生徒は390,120人、投票率は77.9%でした。参加校の数はほぼ同じで、投票した生徒の数と投票率が伸びたことになります。

なお、MUCFは同じニュースで、最終結果は9月13日に公表した速報値から「わずかな(marginella)」違いしかないと述べています。

学校選挙(skolval)はどのように行われるのか

学校選挙は、生徒が学校で投票する選挙の練習の場です。MUCFの学校選挙のページによると、スウェーデンの学校では60年以上にわたって学校選挙が行われてきました。MUCFは1998年から中心的な役割を担い、2002年から国会学校選挙を、2014年からEU学校選挙(欧州議会選挙にあわせたもの)を担当しています。2002年以降に投じられた若者の票は230万を超えるとされています。

仕組みの要点は、MUCFのよくある質問のページに書かれています。

・参加は学校ごとの申し込み制で、申し込みは無料です。2026年の締め切りは8月21日でした。
・対象は中学校段階(högstadiet、7〜9年生)と高校(gymnasiet)の生徒です。
・各学校は、責任者となる教員と生徒を決め、教員と生徒がいっしょに準備を進めます。
・2026年の国会選挙に立候補しているすべての政党に投票できます。政党の投票用紙がない場合は、白紙の用紙に政党名を書きます。
・投票期間は8月24日から9月8日まででした。

同じページには、「学校は公共の場ではないため、政党が招かれずに学校に来ることはできない」こと、政治家を招くかどうか、どのような基準で招くかは校長が決めることも書かれています。学校が政治を扱うことを避けるのではなく、学校の判断で政党を招き、生徒が政党と出会う機会をつくる、という考え方がうかがえます。今回のMUCFの学校選挙のページでは、国会に議席をもつ政党の青年部による討論ツアーの録画も紹介されています。

選挙の季節のスウェーデンでは、政党と出会う場は学校の外にも広がっています。私自身、2026年9月11日に、大学の北欧研修で訪れたボートシルカ(Botkyrka)のTumbaで開かれた「Tumbaの日」に居合わせ、芝生の上で開かれた政党討論会を目の当たりにしました。

広場のにぎわいの中で政党の主張が交わされ、同じ場にはユースカウンシルやユースセンターの姿もありました。学校選挙が「学校の中の練習」として成り立っているのは、こうした選挙を日常の風景として経験できる環境があるからではないか。そう感じた場面でした。

生徒の票はどこに向かったか

2026年の結果では、有効票に占める割合は、穏健党(Moderaterna)32.70%、社会民主党(Socialdemokraterna)19.31%、スウェーデン民主党(Sverigedemokraterna)13.85%、左翼党(Vänsterpartiet)12.10%、環境党(Miljöpartiet de gröna)7.48%、中央党(Centerpartiet)6.06%、キリスト教民主党(Kristdemokraterna)3.01%、自由党(Liberalerna)1.16%などでした。

2022年の学校選挙では、穏健党27.23%、スウェーデン民主党20.80%、社会民主党16.13%、キリスト教民主党9.29%、左翼党7.86%、中央党7.85%、環境党4.69%、自由党4.40%でした。4年前と比べると、穏健党、社会民主党、左翼党、環境党の割合が伸び、スウェーデン民主党、キリスト教民主党、中央党、自由党の割合が下がっています。

同じ年の本選挙と比べてみたくなりますが、注意が要ります。スウェーデン選挙管理庁(Valmyndigheten)の確定結果によると、2026年9月13日の国会選挙では、社会民主党28.02%、穏健党19.85%、スウェーデン民主党17.48%の順で、投票率は84.9%でした。学校選挙の投票率81.9%は、参加した学校に在籍する生徒を分母にしたもので、全国の有権者を分母にした本選挙の投票率とは、そもそも数え方が異なります。また、後で見るように、参加している学校には偏りがあります。学校選挙の結果を「若者全体の政治的な意見」と読みかえることには、慎重であるべきだと思います。

「すべての生徒が投票できるわけではない」——参加校の偏り

今回のMUCFの発表で、私がもっとも注目したのは、投票率の記録よりも、参加した学校の内訳です。MUCFのニュースは、学校選挙を「スウェーデンで最大級の若者向けの民主主義の取り組み(en av Sveriges största demokratisatsningar för unga)」と位置づける一方で、「すべての生徒が参加して自分の声を届ける機会を得られているわけではない」と書いています。その理由は、すべての学校が申し込むわけではないからです。

同じニュースによれば、内訳は次のとおりです。

・コミューン立の学校(kommunala skolor)の参加率は53%で、2022年の55%から下がりました。
・独立学校(friskolor)の参加率は46%で、2022年の45.5%からわずかに上がりました。
・支援付き基礎学校(anpassade skolor)の参加率は41%で、2022年と同じでした。
・統計局(SCB)の地域区分(RegSO)で「社会的な課題のある地域」とされる地域類型1・2では、195校が参加しました。これは該当する学校の約45%にあたります。
・全国290のコミューン(基礎自治体)のうち、少なくとも1校が参加したコミューンは265で、2022年の258から増えました。

つまり、参加したコミューンは広がった一方で、学校単位で見ると、コミューン立の学校、独立学校、支援付き基礎学校のいずれでも、参加しているのは半数前後かそれ以下にとどまっています。投票率81.9%は「参加した学校の中での」数字であり、そもそも学校が申し込まなかった生徒は、この経験の外にいます。

両角
両角

支援付き基礎学校(anpassade skolor)とは何か気になった方は、『福祉大生、スウェーデンへいく』に詳しいことを書いていますので参考にしてください。

MUCFのニュースは、支援付き基礎学校向けの教材を含む民主主義の教材パッケージ(Demokratipaketet)を、学校選挙の後も民主主義の取り組みを続けるための支援として紹介しています。一方で、支援付き基礎学校 の参加率が2022年から変わっていないことは、参加を学校の判断に委ねる仕組みの限界を示しているのかもしれません。ここは私の推測であり、学校がなぜ参加しないのかについては、次に述べる評価報告を待つ必要があります。

評価報告と、これからの動き

MUCFのニュースによると、生徒と学校の職員が学校選挙についての意見を述べる評価(utvärdering)がすでに行われました。この評価は、政府に提出される学校選挙の最終報告書(slutrapport)とあわせて公表され、遅くとも2027年4月までに mucf.se/skolval で公開される予定です。学校選挙が生徒の知識や関心にどのような影響を与えたのか、そして参加しなかった学校にどのような事情があるのかが、どこまで明らかになるのかに注目したいと思います。

関連する動きとして、MUCFは2026年11月10日から12日にかけて、自治体や地域(region)で若者政策を戦略的に担当する職員向けに、LUPP 2027のオンライン・キックオフを開きます。LUPP(lokal uppföljning av ungdomspolitiken、自治体の若者政策のフォローアップ調査)は、自治体が若者の生活や参画の状況を調べるための調査で、案内のページでは改訂された質問票や新しいポータルが紹介される予定とされています。また、MUCFは12月2日に、若者についてのカンファレンス「若者会議(Ungdomskonferensen) 2026」を開く予定です。学校選挙という一回の投票の経験を、自治体の若者政策や日常の参画とどうつなげていくのかは、これらの場でも議論されていくはずです。

おわりに:投票の「経験」を誰が受け取れるのか

今回の発表から受け取った問いは、学校選挙の価値が高く評価されるほど、その経験に届かない生徒のことをどう考えるか、という点です。学校選挙は国の機関が全国規模で調整しながらも、参加するかどうかは各学校に委ねられています。この「自主参加」の仕組みは、学校の自律性を尊重するものである一方で、どの学校に通っているかによって、民主主義を経験する機会に差が生まれうることも意味します。MUCF自身が、参加校の内訳をあえて公表し、「すべての生徒が投票できるわけではない」と書いていることは、この点を課題として認識していることの表れだと読みました。

日本で比べるとすれば、個々の学校で行われる模擬投票の実践そのものよりも、全国で同じ日程・同じ方式で投票を行い、結果と参加状況を集計して公表する仕組みがあるかどうか、という点が比較の軸になると考えます。ただし、制度の前提が大きく異なるため、単純な比較には注意が必要です。

2027年春に公表される最終報告書と評価で、学校選挙に参加した生徒、参加しなかった学校のそれぞれについて、どのようなことが見えてくるのか。引き続き追いかけたいと思います。

参考文献・参考リンク


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