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若者に「席」だけでなく「権限」を|欧州評議会が若者に求めた「責任の共有」

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以前、「若者参加」はもう古い?という記事で、日本の議論が「若者の声を聴く」段階にとどまりがちなことを書きました。意見を聴くことは出発点にすぎず、その声が実際の決定にどう反映され、若者がどこまで決定の担い手になれるのかが問われている、という問題意識です。

ちょうど同じ問いを、欧州評議会(Council of Europe)がより明確な言葉で掲げています。2026年1月、欧州評議会の議員会議(PACE)は「若者とともに民主主義を強化する:参加から責任の共有へ」と題する決議2639と勧告を採択しました。本稿では、その中身と、閣僚委員会が同じ時期に採択した地方レベルの若者参画に関する勧告を整理し、日本の意見反映の議論への示唆を考えます。

PACE決議2639:「協議」から「責任の共有」へ

決議2639(2026年)は、2026年1月28日に採択されました。まず、若者の民主的参加が欧州全体で不均衡かつ断片的なままだと指摘します。社会的な格差、不安定な雇用、住宅や教育へのアクセスの制約、市民的・文化的な空間の縮小が世代間の分断を深め、多くの若者が意思決定から締め出されている、制度が自分たちを代表していないと感じている、という認識です。

そのうえで決議は、若者の参加は「相談される」段階から、意思決定に実際の影響力を共有する段階へと進まなければならないと強調しています。タイトルにある「責任の共有(shared responsibility)」は、若者を政策の対象や意見の提供者としてではなく、決定とその結果を大人と分かち合う主体として位置づける考え方だと読めます。

加盟国に何を求めているのか

決議は加盟国に対して、幅広い要請を並べています。主なものを整理すると次のとおりです。

  • 制度的な参画の仕組み:測定可能な指標をもつ国の若者政策の策定・更新、意思決定権限や諮問権限をもつユースカウンシルや対話の場の設置
  • 参加の前提となる権利:教育、職業訓練、雇用、住宅、医療への普遍的なアクセス、メンタルヘルス政策の優先
  • シティズンシップ教育とユースワーク:学校の正規課程へのシティズンシップ教育の統合、ノンフォーマル教育とユースワークの支援、教員とユースワーカーの専門性の向上
  • デジタル参加:オンラインでの参加のための透明な枠組みづくり、デジタル・リテラシー教育
  • 選挙権年齢:16歳への引き下げを「世代間の平等に向けた具体的な一歩」として強く支持し、加盟国に、すべての選挙での引き下げの法的・制度的な実現可能性を検討するよう求める
  • 世代間の対話:議会や省庁への若者諮問委員会(youth advisory councils)の設置、政党の青年部や候補者育成の促進

注目したいのは、参加の仕組みと並んで、住宅や雇用、メンタルヘルスといった生活の条件が挙げられていることです。参加は「場」を用意すれば生まれるものではなく、生活の基盤が揺らいでいる若者にとっては、そもそも参加する余裕がありません。参加と社会的権利をセットで論じるこの構成は、若者の生活世界をどう取り戻すかという私の問題意識とも重なります。

地方レベルでの参画:閣僚委員会の新たな勧告

もう一つ重要なのが、欧州評議会の閣僚委員会が2026年3月に採択した勧告CM/Rec(2026)3です。これは、欧州評議会の地方自治体会議が2025年10月に採択した新たな「地域・地方生活への若者の参画に関する欧州憲章」(1992年に採択され2003年に改訂された憲章を、改めてつくり直したもの)を、加盟国が実施するよう求めるものです。(平野裕二さんがnoteで和訳版を公開しています。)

この憲章では、若者は個人としてだけでなく集団としても影響力をもちうるとされ、表現の自由、信頼できる情報へのアクセス、プライバシー、集会・結社の自由が参画の前提として挙げられています。若者は権利の主体、自治体は若者の参画を保障する「義務の担い手(duty-bearer)」と位置づけられ、参画を支える仕組みとしてユースセンター、ユースワーク、若者の市民社会組織が明記されています。もちろん、新憲章は国にも法的枠組み・資金・能力形成などの条件づくりを求めています。

さらに、地方自治体と若者・若者団体(youth organizasations)・ユースカウンシルが、参加型・透明な方法で憲章の実施状況を定期的に評価し、必要な措置につなげることを求めています。参画を支えるインフラとしてユースワークやユースセンターを位置づける発想は、欧州各国のユースワークを調査した際にも見られたものです。

欧州評議会自身の「共同管理」という実践

決議は、欧州評議会のユース部門が採用している独自の「共同管理(co-management)」の仕組みを、他が見習うべき基準であり手本だと評価しています。これは、政府代表と若者団体の代表が同じ席について、若者部門の優先課題や目標、予算の大枠を決める仕組みで、以前からJoint Council on Youthとして欧州評議会には設置されています。

「責任の共有」を加盟国に求める欧州評議会が、自らの組織運営のなかで若者と決定を分かち合ってきたことは、この決議の説得力を支えている点だと思います。また閣僚委員会は、勧告2302(2026)に対する回答(PACE Doc. 16460)において決議2639(2026)が求めた選挙権年齢引き下げの議論にも触れており、加盟国における実施状況を注視していくとしています。

日本の意見反映の議論への示唆

日本では、こども基本法の施行以降、こども・若者の意見を政策に反映する取り組みが広がってきました。これまで「意見聴取止まり」という言葉で、その課題を論じてきましたが、欧州評議会の議論と並べると、次のような論点が見えてきます。

1. 「聴く」の先にある「分かち合う」

意見を聴き、反映状況をフィードバックする仕組みは重要ですが、それは依然として大人が決める構図のなかにあります。「責任の共有」は、決定の場そのものに若者が席をもつこと、つまり「権限委譲」の問題として参画を捉え直す視点です。

2. 自治体を「義務の担い手」とみなす

欧州の地方レベルの憲章は、国だけじゃなく自治体を若者の参画を保障する責任主体と位置づけています。日本でも、こども計画づくりなどで自治体レベルの意見反映が進んでいますが、それを任意の努力ではなく、自治体が担う責務として捉える議論は、まだ十分ではないように思います。

3. 参画を支えるインフラとしてのユースワーク

欧州の文書では、参画の仕組みとユースワークやユースセンターが一体のものとして語られます。若者が意見を形成し、仲間と話し合い、行動に移していくには、日常的に通える場と、それを支える専門職が欠かせないからです。日本の意見反映の議論でも、こうした基盤の整備をどう位置づけるかが問われています。

おわりに

欧州評議会の決議や勧告は、加盟国を法的に拘束するものではありません。それでも、「参加から責任の共有へ」という言葉は、若者参画の議論がどこに向かうべきかを端的に示していると思います。若者を「聴かれる存在」から「ともに決める存在」へ。この転換を、制度、生活の条件、そして日常の場の三つの層で考えることが、日本の議論にも求められているのではないでしょうか。

参考資料


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