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価格が下がったら通知を知らせるスウェーデンの優秀アプリ「プライスライザー」開発者が語るスタートアップの秘訣

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近年、日本でもシリコンバレーに次ぐスタートアップシーンとして注目をあつめるストックホルム。この街で今、始まったばかりのスタートアップが「プライスライザー(Pricelizer.com)」です。プライスライザーは、オンラインショッピング市場において画期的なサービスを提供しています。今回は、創業者の一人であり現在はCEOであるカール(Karl Lillrud)にストックホルムのオフィスにてインタビューをおこないました。

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CEOのKarl Lillrud

 

欲しいものを欲しい価格で買うサービス

まず初めにプライスライザーのサービスについて教えて下さい:

プライスライザーは顧客により楽しく、効率的なオンラインショッピングを提供します。ユーザーが高くて買えない商品があったとき、それを登録しておくことで、価格が下がったときに知らせてくれるのです。下がりもしない商品の価格を何回もチェックする必要はありません。ユーザーが指定した価格まで下がったら、お知らせしてくれます。良い商品なんだけど、値段が予算オーバーなんだよな、という思いをしたことはありませんか?プライスライザーに保存しておくと、自分の買いたい値段になった時に買うことができます。

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16歳から始まったアントレプレナーシップ

CEOのこれまでの生い立ちを教えてください:

子供の頃はまだインターネットも普及していませんでしたね、私は発明家になりたいと思っていました。それからしばらくしてITの波が押し寄せているとき、たくさんのビジネスアイデアと、ソリューションを考えるのが好きだった私は、発明家ではなく起業家のほうが向いていると感じたのでした。そうしてスタートアップを生業にするようになり、初めての会社は私が16歳の時で小規模の、会社向けにコンピューターの導入を手伝うコンサルタント会社でした。その当時1996年は、インターネット産業自体大きくなく、コンピューターでさえそんなに普及していませんでした。今では複雑すぎて大企業が何億とかけてシステム導入を行っていますが、私が手伝っていた頃は一人でも容易に理解できるぐらいコンピューターの機能は簡潔で、メール、プリンター、ファイル管理機能さえあればよく、とてもシンプルでした。私は20人ぐらいの規模の会社に飛び込み営業をかけ、コンピューターの導入を提案していました。学校ではIT教育というとプログラミングではなく、回路などの電気系を指しましたから、当然導入に必要な知識は基本的に独学で獲得し、事業に活かしていました。小さい頃から自分で取り組んでいく気質があったのかもしれません。

私はすべてのメンバーによくここで「働かないで」ほしい、と言います。

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(出典:http://www.pricelizer.com/price/PressUserRegistration)

 

プライスライザーを始めたときのことを教えて下さい:

2013年がプライスライザーを始める年になのですが、私は当時、様々なビジネスアイデアを抱えており、これをどうしたらいいものかと悩んでいました。どれも良いアイデアだったからです。そこで思いついたのが1ヶ月ごとに新しいアイデアを実際に試してみるというものでした。毎月新しいアイデアで、新しい会社をスタートさせるのです。そうして7番目のスタートアップを走らせている時、1番目の会社が1番手応えがあったように思いました。そうしてのちにプライスライザーとなるサービスに注力することに決めました。そこから眠らずに仕事にのめり込むようになるのです。

こういう信念のある仕事するのは本当に面白いものです。私はすべてのメンバーによくここで「働かないで」ほしい、と言います。その代わり私は社員になにがおもしろいと思うか尋ね、それを好きなだけやれと言います。もちろん私達がスタートアップカンパニーであり、常に仕事がいくらでもあるからできることなのですが、好きなことを仕事でも実行するのは1番大切なことです。興味のあることは愚直にできますし、なにより社員が幸せに業務をこなせます。そうすれば、会社としての結果も自然とついてくるのです。

ある時、デザイナー志望だった女性メンバーがデザインよりも数学が好きだと、話してきたことがありました。私はすぐに彼女をマーケティング部門の数字を分析する部門で働けるようにしました。「興味のあることをする」これはプライスライザーの創業時から守られていることの1つです。

命名から今日までの道のり

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話は脇にそれましたが、このようにして私はプライスライザーを本格的に始めることにしたのです。まず初めにとりかかったことは、このアイデアに名前をつけることでした。ふさわしい名前を探すため、ブレインストーミングをしました。名前は単なる音ではなく、何か論理的な意味を含んでいる必要があります。例えば私の名前はカールですが、これはただの音だけです。カールという文字に意味はありません。PricelizerはPriceとRealizeからきています。これは最新の「価格」に「気づく」ことができる当社のサービスを表しています。

加えて、唯一無二の名前を持つことには、SEO対策としてのメリットもあります。その特異な名前のためにGoogle検索をかけた時に、他のサイトがなかなかヒットしませんから。

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そのあと私がしたのは、サービスのランディングページ作成です。サービスの完成を前にして、ユーザーに登録してもらえるサイトですね。現在3000ほどいる登録ユーザーの行動を分析し、サービス向上に役立てています。そのユーザーがどのサイトからの飛んできたのかを調べることで、ユーザーの性格、欲しい情報など絞り込むことができます。ユーザーのニーズを知る鍵になるランディングページができたあと、最初のプロトタイプを完成させました。次に、単なるビジネスアイデアをビジネスモデルへと成長させていったのです。ビジネスモデルを後から考えるのは他のスタートアップではなかなか見られないかもしれません。多くの場合、サービスのどこで稼ぐのかというマネタイズをビジネスアイデアの段階で考えます。私はそれが良い方法だとは思っていません。良いアイデアがあれば、稼ぐチャンスはあとから見つかるものです。というのも、マネタイズを意識するあまり、クリエイティビティを殺してしまいかねないからです。名前をわすれましたが、Googleの創業から現在までを取材した本を読んだことがあります。その中でも同じことが書かれていました。初期のGoogleに対して投資家たちは、バナー広告などのマネタイズ方法を提案したそうですが、彼らはいずれもっと良い方法が見つかるはずだと信じ、バナー広告に反対しました。現在までGoogleは単純なバナー広告の代わりに、Google Ad と呼ばれる検索結果という形で広告を載せ、世界一のIT企業に成長しています。

そうしてプライスライザーは現在まで成長してきました。他のスタートアップと比べたとき、彼らが多額の投資額を使って成長してきているのに対して、プライスライザーはほぼ予算を使わずに拡大することに成功しています。ユーザーの確かなニーズとロジックで裏付けされたプライスライザーという製品がそれを可能にしてきたのでしょう。よく解決策を提示するのではなく、問題を作り出している会社があります。本当は問題になっていないことに目を向けて製品づくりをしているのですね。例えば今までよりももっと良い木工用ワックスがあったとします。ユーザーが使っても違いが分からないような改善を行っているのでしょう。このような商品でも莫大な予算をかけ、マーケティングを行えば、リターンを得ることもできるのです。多額の資金調達に成功したスタートアップ、大企業などは資金力を活かした戦略が可能ですが、ユーザーのニーズを満たせているかは別問題なのです。論理に基づいたユーザーのニーズがあるという点がプライスライザーの強みといえるでしょう。

 

スタートアップ都市としてのストックホルムについて、どのように思いますか?:

一度エディンバラというイギリスの都市で事業プレゼンをしたことがあります。終わった後何人かが私のところへきて、しばらくの間詳しい話を続けました。そこでこの会社の本拠地がストックホルムであることをいうと、彼らは驚きを見せてこう言いました。「なんでそれをプレゼンで触れなかったのですか?そうすればもっとたくさんの人から注目を集めていましたよ。」ストックホルムは今やそのぐらい影響力、実績のあるスタートアップ都市なのですね。

私は以前ストックホルムの会員制コミュニティに所属していました。会員になる条件が幾つかありまして、例えば自分の会社を始めている、とか忙しく働いているとかですね笑。そこでは多くのことを学びました。お互いのサービスのことや、起業環境の最新ニューズについてなど、お互いに高めあえたと思います。ひとついえることは、少し前から規模の大小を問わず多種多様なスタートアップコミュニティがストックホルムには多く存在し、それぞれがコミュニティを良くしようと動いていることです。MeetUpというコミュニティSNSができてから、一層ストックホルムのスタートアップ界隈はコミュニティで溢れています。

また政府もこのトレンドの一役を担っているといえるでしょう。スウェーデンは福祉国家と呼ばれるように、政府サービスが充実しています。その分、財源を確保するための税制も非常に複雑に発展してきました。給料の支払いや、雇用契約など会社を運営していく上で、取り扱いが難しいこともあるのですが、実は会社を始めることは簡単なのです。これも政府による起業環境作りの一貫ですね。

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今回取材したのは、EC業界に革命を起こすプライスライザー。Google Chromeのアドオンはすでにリリースされているのでぜひ試してみてください!

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画像出典:http://www.pricelizer.com/price/PressUserRegistration

寄稿者プロフィール

寺嶋 和志。九州大学3年生。スウェーデン、ウプサラ大学に交換留学中。スタートアップ、起業に興味があり、現在シリコンバレーとは違った特徴を持つストックホルムの起業環境について取材している。

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