先日、ラジオ番組 J-WAVEに出演させていただきました。
今話題の、気候変動ムーブメントを世界中で巻き起こした16歳のスウェーデン女子、グレタ・トゥーンベリの解説で出ることになったのです。こちらの翻訳記事がきっかけです。
事前に準備した台本があるので、せっかくなので共有します。
グレタ・トゥーンベリが「学校ストライキ」をはじめたきっかけ
早速なのですが、このグレタさんが行っている活動内容について教えていただけますか?
グレタがやっていることは、学校へ行かないで「気候変動のための学校ストライキ」と書かれたプレートを掲げ、スウェーデンの国会前に座り込むという抗議活動です。なぜそのようなことをやっているかというと、人類に気候変動の危機が迫っているにも関わらず、全く社会が対策をしていないことを8歳のときに聞いて、それが理解ができなかったようです。
ショックを受けたグレタは、その後、鬱になってしまい自閉症と診断されたりしたのですが、そこで行動を起こすんですね。例えば、家族の日々の生活から「炭素排出量」を減らしてもらうために、ベジタリアンになったり飛行機に乗らないことをお願いしたりしたんです。それで、その代わりに彼女自身が社会を変えるために行動を起こすことを約束したようです。
それで、2018年の9月のスウェーデンの総選挙まで学校に通わないと決めて、スウェーデン政府にパリ協定を守って、二酸化炭素排出量を削減することを訴えて、座り込み活動を始めということです。
彼女の活動は世界中にどれくらいの規模で広がっているのでしょうか?
ストライキの元には、次第に賛同者が現れ、数百人を超える規模に膨れ上がりました。中にはわざわざ休みをとり参加した学校の教員もいたようです。それからスイスのダボス会議、ポーランドで開かれた国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)に招待され、そこでの発言やスピーチがさらに注目を集めることになります。グレタの主張に世界中の若者が賛同し各地でストライキが勃発し、2018年11月のオーストラリアでは15000人、12月にはスイスで4000人、年明けのベルギーでは12750人、ドイツでは25000人、と徐々に勢力を拡大し、最終的には、全大陸の2000都市で抗議活動が起きました。ついには、今年のノーベル平和賞にノミネートされました。
なぜ世界中の人がグレタ・トゥーンベリに賛同したのか?
なぜ世界中の人達が彼女の活動に賛同したのでしょうか?
彼女のスピーチが本質的であることはいうまでもありませんが、加えて、今のヨーロッパの若い世代の社会意識の変容も影響していると思います。
確かに先進国ではどこの国も若年世代の投票率は停滞気味で、労働組合などのかつての伝統的な政治的な組織活動に参加する若い人の割合も減っています。一方で、社会問題への意識は相変わらず高いと言う統計があります。特にわかりやすいシングルイシューなどに対しては、ソーシャルメディアなどで意見表明や賛同を募るということがかつてよりもしやすくなっており、これまでにない新しい方法での政治参加をより人々が志向するようになったという傾向も、この運動を拡大させた背景にあると思います。
ヨーロッパは世界的にみても厳しい環境基準を設けているのですが、なぜヨーロッパの人々は気候変動に敏感なのでしょうか?
もともとヨーロッパにおいては、経済発展のみならず社会の不平等を是正したり、社会の持続性を高めるためにどうしたらいいかという議論が、政治的・社会的なムーブメントの中で作られてきたことも影響を与えていると思います。スウェーデンのやフィンランドの教科書では、社会に影響を与える方法の一つとして、デモ行進を教えているほどです。
気候変動問題に限れば、それに加えて、スウェーデン、特に私が住んでいた首都のストックホルムは、バルト海に面する14の島からなる水の都なのですが、そのようなところでは北極の氷が溶けて水位が上昇したらもろにダメージを受けるからというのもあるのだと思います。ヨーロッパの他の低地でも同じでしょう。
スウェーデンの若者の政治に対する意識
スウェーデンの若い人達は気候変動や政治に対する意識は高いのですか?
とても高いですね。日本の内閣府が実施した13歳から29歳を対象にした国際調査で、「自分の参加により社会が変えらえる」と答えた若者の割合が、日本は38%で、スウェーデンは57%でした。世界価値観調査という別の調査では、「平和的なデモ活動に参加したことがあるか」と答えた若者の割合は、日本では0.7%、スウェーデンでは18.8%となっています。ここに20倍以上の開きがあるんですよ。
「参加したことはないがするかもしれない」と答えた若者は、日本では26.7%、スウェーデンでは54.9%と差が開きました。おもしろいことに、日本の若者で「決して参加することはない」と答えた若者の割合は、約50%とスウェーデンと大差をつけています。
日本がスウェーデンから学べる事があるとしたらどんな事でしょうか?
若い政治家が多いこと 若い人の声を聞く行政の制度があること、若いからというだけで差別するような意識が日本より少ないことなどですね。
日本の若者も政治に関心がないわけではない。しかし参加しても変えられないという現実があるので、社会や大人の側が意識としても制度としても、若者にあったものになっていくことが大事かと思います。
未来に残したいスウェーデンの景色を教えていただけますか?
ストックホルムに来るといつも、街に若い人が多く、活気に溢れていると感じます。大学は学費もかからないですし、博士課程(ハクシカテイ)は給料も出るので、世界中から研究者がやってきます。子育てもしやすいので街中にはイクメンが多く、若者が遊べるユースセンターやサークル・団体活動も活発なところですかね。そういう景色を見ると「この街には未来があるな」と感じます。
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