個人が事業主となり、自由な働き方をするフリーランスの人口が増えています。
欧米先進国で増えるフリーランス人口
ランサーズの調査によると、2017年の日本では1,122万人と人口の17%がフリーランスということです。これは2016年より5%増。この傾向はアメリカではより顕著で、2016年のフリーランサー人口は5,500万人で全労働者の35%にも及んでいるということです。アメリカのミレニアル世代においては約50%もの人が既にフリーランスとして働いており、10年以内にはフリーランサーがマジョリティになるという調査もあります。
かくいうぼくも「フリーランス系研究者」として、最近はフリーランスの人とよく絡んでいることもあり雑感としても増えているんだろうなあとは思っていました。もちろん副業としてやっている人も増えているんでしょうが、以前よりもそういう時代の流れになっているということは、明らかなようです。
そんな中、欧州委員会のレポートから意外な数字をみつけました。それはヨーロッパにおけるフリーランス人口です。
Eurostatによると、2016年のEU加盟国における15歳から64歳のフリーランス(self-employed)人口は、3,060万人でこれは全EU雇用統計の14%を占めているということです。
これは2015年と比べると増加傾向にあり、特に若い世代においては増加が目立つということです。数字だけ見ると日本より若干少なめということですが、全EU加盟国の平均ですからね。
フリーランス人口が多いEUの国ランキング
EUでの全体平均は14%ですが、国別でみるとかなり多様です。ギリシャでは3分の1の生産人口がフリーランサーに該当しているということです。
フリーランス人口の多い国順にリストにしてみました。
- ギリシャ:29%
- イタリア:21%
- ポーランド:18%
- ルーマニア、オランダ、スペイン、チェコ:16%
- スロバキア、アイルランド:15%
- イギリス、ベルギーポルトガル:14% (EU平均)
フリーランス人口が少ないEUの国ランキング
次にフリーランス人口が少ない国別順でみてみます。
- デンマーク:8%
- ドイツ、エストニア、ルクセンブルク、スウェーデン:9%
- ハンガリー:10%
- ブルガリア、フランス、リトアニア、オーストリア:11%
ちなみにEEA加盟国を入れるとノルウェーが最低で6%になり、アイスランドは11%、スイスは12%となります。
意外や意外、ぼくの住んでいたスウェーデンやドイツではまだまだフリーランス人口が少ないということがわかりました。ストックホルムの地下鉄の中でもよく、フリーランサーためのプラットフォームの広告などが出ていたので、てっきり日本くらいに増加しているのではないかと思っていましたが、そうでもないようですね。ましてやぼくも住んでいたドイツの首都ベルリンは、スタートアップの聖地といわれるくらいにテック界隈でも有名で、多くの若者がヨーロッパ中から集まっています。
しかし実際にはドイツ全人口でみてみると、まだまだフリーで働いている人は少ないんですね。そもそもテック界隈が盛り上がっているからといってフリー人口が多いというわけではないですからね。
ちなみにEUのフリーランサーの産業別の内訳は、卸売り業(16%)、農業(14%)、建築(13%)、科学技術業(12%)となります。リテール系が多いのは、EUのおかげで国を超えたビジネスがやりやすくなったからなんでしょうね。そういえば昨年、Bla Bla Carという相乗りアプリでヨーロッパを旅しているときに、パリで買った車をポルトガルまで運転して運び、卸売しているカップルに乗せてもらったなあ…。
フリーのジャーナリストも増えているようですが、まだまだ文筆家や文化・芸術的な分野におけるのフリーランス人口は少なそうです。
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ぼくも「海外フリーランス」界隈の人間なので何となく、ドイツでもスウェーデンでもフリーの人が増えている印象を持っていましたが実際にはそうでもないようです。(もちろん例えば、ドイツ国内だったらベルリンとミュンヘンとだと大きな差がありそうですが)
多様な生き方ができることは賛成ですが、フリーランスが大手企業の補完的な「調整便」として利用されてしまう可能性は危惧しています。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会などは、フリーランサーの法的な立場を保障しようと立ち上がった協会ですが、これはまだまだ日本においてはフリーランサーの社会的な立場の低さが背景にあるからといえます。
そういう意味では「ルポ 雇用なしで生きる」で紹介されている、社会的連帯経済を基盤とする協同組合のような枠組みが今後さらに増えていけば、それこそただの調整便としてのフリーランスではない、「新しい働き方」に厚みをもたらすのではないでしょうか。スウェーデンでも韓国でも一般的だった「社会的共同組合」の枠組みは※、日本のNPOなどが取りうる形態の一つのオプションとなるでしょうし。
ちなみにこの統計データをみつけたEURESでは、ヨーロッパのフリーランサーがもっとEURESを使ってくれと言わんばかりに宣伝をしています。記事では、フリーのスウェーデンのオペラ歌手がEURESを使ってオーディションに繋げたことを紹介しています。
ぜひ活用あれ。
参考文献
EURES – The European job mobility portal – European Commission EURES – The European job mobility portal – European Commission