ユースワークの視点を深めるために
2024年1月号の京都市ユースサービス協会『YOUTH SERVICE vol.41』に、「ユースワークを読み解く視点」という記事を寄稿しました。本記事では、ユースワークをどのように理解し、実践に活かすかを考えるために、海外の事例を踏まえた2つの視点を提案しています。
日本におけるユースワークは、青少年教育や児童福祉の領域と交わりながら発展してきましたが、ヨーロッパにおいては異なる歴史的背景のもとで確立されてきました。その違いを知ることで、日本の実践に新たな示唆を得ることができるのではないでしょうか。
ユースワークを理解する2つの視点
海外のユースワークを読み解く際に、次の2つの視点が重要だと考えています。
① ユースワークの対象とアプローチの型
ユースワークは、その対象やアプローチによっていくつかの型に分類することができます。
・ターゲット型:特定のニーズを持つ若者を対象にしたアプローチ(例:学習支援、ひきこもり支援)
・移行型:若者の社会適応を支援する視点(例:社会復帰支援、就労支援)
・フォーラム型:社会のあり方自体を問い直し、若者が社会を変える視点(例:ユースカウンシル、政策提言、アドボカシー)
このように分類することで、各アプローチの特徴を整理しやすくなりますが、同時に分類には限界もあることを認識しておく必要があります。実際のユースワークの現場では、一つの事業や取り組みが複数の領域をまたぐことも多く、単純に「これはユニバーサル型」「これはターゲット型」と分けられるわけではありません。
例えば、学習支援の場が単なるターゲット型の支援ではなく、若者同士が学び合い、社会に対して発信していくようなフォーラム型の要素を持つこともあり得ます。また、ユースカウンシルのような活動も、政治参加を促すだけでなく、特定の若者層に対する支援としての側面も併せ持つ場合があります。
こうした多層的な要素を持つユースワークをどのように理解するかが、実践を深める鍵となります。
② 社会の状況を読み解く
例えば、同じヨーロッパでも、イギリスは新自由主義の影響でユースワークが厳しい状況にある一方、フィンランドではユースワーク施策が手厚いといわれます。
OECDの「より良い暮らし指標」では、フィンランドが5位、イギリスが15位、日本は30位、韓国は32位という結果に。これは、ユースワークの制度設計に影響を与える社会的要素を示唆しています。
ユースワークの未来を考える
この記事のポイントは、日本のユースワークの現場においても、海外の事例を知ることで「共通点」と「違い」の両方を見つけ出し、実践の指針にできるという点です。
特に、現在の日本では、若者の社会参画の機会が十分とはいえず、支援の枠組みもまだ発展途上です。「対象・アプローチの型」と「社会の状況の理解」という視点を活用しながら、日本のユースワークをどの方向へ発展させるかを考えていくことが重要になるでしょう。
ユースワークに関心のある方は、ぜひ本記事をチェックしてみてください。
https://ys-kyoto.org/wp-content/uploads/2024/01/Youth_Service41-4.pdf
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