スウェーデンの「インターネット×直接民主主義」政党の超ハイテク民主主義がすごすぎる

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2014年の都知事選で出馬した家入一真さんが立ち上げた「インターネッ党」の起原ってなんなんでしょうね…。プロブロガーのIkedaHayatoさんのインタビューではこう述べています。

あとはハンガリーの「IDE」とか、スウェーデンの「Demox」とかも面白いと思う。ぼくらの「インターネッ党」にはそういう動きをつくりたい、という狙いもあったりします。

スウェーデンの「Demoex」という政党が、モデルのひとつなんだそうです。

そんなわけで、2015年の6月にこの団体を訪問してきたので簡単に紹介します。(※この記事は僕も同行した、静岡の学生若者支援団体YECのスウェーデンスタディツアーの報告書を参考にしています)

 スウェーデン直接民主党とは?

デモエックス(Demoex)は元々、バレントゥーナ市(ストックホルムの郊外)の政党として活動をしていましたが、現在は「直接民主党」(Direktdemokratena 英名:Direct Democracy)として活動しています。

直接民主党を紹介した動画

インターネットを活用して、間接民主制と直接民主制をの実現を目指し、市民の直接的な政治運営を実現した、まさに「直接・間接民主制主義」の政党です。デモエックス(Demoex)は、Democracy Experiment(民主主義の実験)の略称だったそうで、実際にバレントゥーナ市で実験的(experiment)に、デモンストレーション(demonstration)していたのでそういう意味もあったみたいです。2002年に発足し、2003年にはバレントゥーナ市で実際に19歳の女子学生が出馬をし、当選を果たしました。(2014年のスウェーデンの国政選挙では国政政党を目指し出馬しましたが負けてしまいました)

ネットを活用した「直接民主主義」とは?

直接民主党には党員もいますが、従来の政党と異なるのは特定の「政策・イデオロギー」を持たないことです。

インターネット上の「直接民主党」のウェブサイトに登録した党員たちが、特定の争点について議論した後、評決で立場を決めます。そして選ばれた、直接民主党の議員はその結果に忠実に従うのみです。つまり議員は「伝達役」に徹するだけなのです。そんなことを実際にどうやってやるのかと思うかもしれませんが、それを可能にしたのがVoteIT(ボウトイット)という、オンライン参加型会議のウェブプラットフォームです。

実際に登録してデモ版を使ってみました。(Google翻訳で日本語表示してみました)

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「デモ会議」 とは、これが仮版であることを意味しているだけですが、通常はここに会議の名前がつくようです。「オンライン」は現在参加していてオンラインの人を表示しており、「存在しない機能」と書かれている部分には、この会議の現在の議題が表示されます。この場合、VoteITに存在していない機能は何ですか?という議題です。その下の「提案」という部分では議題を提案でき、「議論」は文字通り、議題を掘り下げることができるようになっています。左サイドバーの「アジェンダ」では、現在進行形のアジェンダ、既に終了したアジェンダ、今後扱う予定のアジャンダが表示されています。

その他、アンケートや投票を実施することもできるらしく、会議の規模や形態(匿名可能にするかどうかなど)によって、様々な設定を会議の運営者が決めることができるのです。今まで100 回以上の会議に利用されおり、10 人規模から 16,000 人規模の会議に用いられています。実際に、スウェーデンの環境党が利用したときには、2000人が参加し、細かく分かれた1万5千の提案が議題としてわりあてられ、さらに小グループで各々のテーマを検討するにいたったとのことです。

ネットを活用したメリットととして、

・時間や場所の制約がないこと

・小規模でも効果的な議論ができること

があげられますが、一方で利用者は、VoteITのソフトウェアが議論を自動で進めてくれると期待するので、ルールを守った議論をするのが当初は、難しかったそうです。

なので、あえてインターフェースを複雑化せず、シンプルに「賛成」「反対」と「それに対する意見」のみに絞ったのです。それによりひとつのページに情報を集約し、パソコンやネットの操作が苦手な人でも、簡単に利用することが実現したのです。サイトのデザインを「参加型」「民主主義型」にし、かつ、構造を単純化することでユーザビリティを高め、会議をファシリテートすることができたのです。

直接民主党はこのようにして、このプラットフォームを使って市民から意見を吸い上げて、政党の方針を作るという訳です。

設立の経緯

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インタビュー相手の直接民主党代表のペル氏

直接民主党の前身「Demoxが創設されることになったのは、「なぜ高校生は政治への関心が低いのか」をテーマにした授業を、当時教員だった、現代表のペルが開いたことがきっかけでした。

自治体と学校の共同の元で実現した授業で、政治家や市の職員なども授業の見学に来ていました。 前半は、生徒たちにパソコンの前に座ってもらい、生徒たちに「街を改善するためにあなたは何をしたいか?」という問いかけをペルがして、生徒たちはそれをオンラインのプラットホームに書き込むというものでした。生徒たちは匿名であるため、気軽に意見を書き込み、「交通状況をよくしたい」「学生が住めるアパートを作りたい」「街に若者の居場所をつくりたい」など、様々な提案をしました。それらの提案から 20題を拾い上げ、優先順位をつくり、順位の高いものから議論をしました。最も高い順位にきたのは「ユースセンター(若者の余暇活動施設)を作りたい」というものでした。この間、ユースセンターを作るという結論に生徒たち が至るまでにかかった時間は、たったの 15 分でした。

授業の後半では、授業に来ていた本物の政治家にバトンタッチ。「こんなにも短時間のうちに、君たちは素晴らしい意見が言えるじゃないか。それならば、私たちの政党に入り、一緒に活動をしないか!」と 生徒に語りかけました。すると、生徒たちの中の一人が「政治はあまり面白いものではない」と言いました。また他の生徒は「政治に参加してもいいけれど、私たちは他にもやることがたくさんあって忙しいのです。だから、優先順位を高くすることはできません」と言い放ち、政治家も納得して、その日は授業が終わってしまいました。

後日、授業に参加した生徒たちに会ってペルが感想を聞いてみると、前半のパソコンを使ったときはとても面白かったかけど、後半の政治家の話はとてもつまらなかったと言っていたのでした。

民主主義の2つのコミュニケーションの方法

その話を聞いてペルは、授業の前半と後半の違いはいったいなんだったのだろうかと考えました。 彼は、前半は政治について「書く(Written) ディベート」で、後半は政治について「話す(Oral) ディベート」であったと分析したのです。「話すディベート」は、誰か一人が話しをしていたら、他の人はその話を聞いていなければいけないし、時間がかかります。

それに対して、「書くディベート」は、ひとつのテーマから様々 なトピックに派生させることができるので、多様な議論ができ、匿名であることから、質問もしやすい。また、議論の流れも可視化できるため、時間の短縮にもなる。そこで、ペルは、こんなにも「書くディベート」のほうが優れていることが明らかなのに、なぜ従来の政治はすべて「話すディベート」なのかということに疑問を持ちました。 そしてペルは、生徒たちに「もし、私がインターネットを用いて特定のテーマについて議論をし、その結果を政治に反映させるような政党をつくったら支持をしてくれるか」と聞くと、生徒たちは「支持する」と答えたのです。それからペルの出身のバレントゥーナ市は人口 3 万程度の街であることからも考え、 インターネットを使った政党は可能だという結論になり、「直接民主党」の先駆けであるDemoexが、2002 年に誕生したのでした。

なぜ、今ネットを使った民主主義なのか?

VoteItのプログラマーである、ロビンは、改めて民主主義の重要性を次のように語りました。

「人々はいま、民主主義を恐れている。ヨーロッパで経済危機が訪れている中で、極端な思想の人達が、躍進をしている。彼らは、民主主義的な考え方をしていない。民主主義の質を高めるには、透明性の確保が必要であるが、ある特定の人達が情報を独占している。そこで誰かが今、社会で何が起きているのかを理解している必要がある。その方法の一つが、 ジャーナリズムだった。ただ、スウェーデンのジャーナリズムも変わってきていている。以前はジャーナリストがしっかりとスウェーデン政府を監視してきた。しかし現在は、景気があまりよくないこともあり、利益追求に目を向けすぎてメディアがエンターテイメント化したことで、ジャーナリストの数はここ10年間で半減している。」

さらにその解決策について。

「そこで、それを解決するために行われている取り組みが、オンラインのプラットフォームを作り、ジャーナリストだけでなく、様々な分野の専門家や有識者が参加し、政府の行っていることを監視するシステムを構築することです。今は公的機関への信頼がなくなってしまっている。なぜなら、公的機関が何をしているのか、市民には何も見えない。そうしないために、インターネットを用いて、意思決定の段階から市民に参加してもらうことが重要なのです。」

最近ではバイラルメディアが力をつけ、インターネットの様々なコンテンツがSNSを通じて、投稿されるようになりましたが、それは結局エンターテイメントとしてメディアを「消費」しているにすぎないのでしょう。さらにメディアも一方向的なものから双方向化、さらには誰でもソーシャルで発信できるようになり「市民化」しています。それゆえに、VoteItのようなプラットフォームが可能となり、参加と監視の両方の役割を担うことが可能になったといえるでしょう。この点についてペルは、海賊党の「液体民主主義」を引用して、その意義を強調していました。

さらにペルは「透明性」についてこう語りました。

「『透明性』とは、政治家がどのような意思決定をしたのか、なぜその意思決定を下したのか、費用の内訳はどうなっているか、などが可視化できることたです。そうすることで、市民は監視をすることができます。ヒエラルキーの下では、すべての情報を上から下へと流していくことは難しい。その意思決定に関して、政治家と市民との双方向のコミュニケーションがあることが、透明性なのです。」

直接民主党代表のペル(この鉢巻きはインタビューのときにわたしたお土産です)

直接民主党代表のペル(この鉢巻きはインタビューのときにわたしたお土産です)

「例えば、次のワールドカップはカタールで開催されます。FIFA のフラッターという会長がいるが、彼は会長に選出される際の選挙で、カタールから多くのお金をもらい、会長に選ばれた。そして、カタールがワールドカップの会場に選ばれた際にも多くのお金を、カタールからもらっている。このように、政治には腐敗と汚職がつきものである。ウィキリークスが行っているように透明性を高めることをしなければ、世論は操作されてしまう。民主主義の基本的な価値観として、男女に限らず、すべての人に同じように価値があります。また、人には平等の権利があり、その権利の一つが「情報に対する権利」です。私たちは、身分もバックグラウンドも全く異りますが、一人一票という平等の権利は、有しています。」

このように直接民主党が実際にネットを活用した「直接・間接民主主義」を実現できたのは、ペルとロビンの民主主義への深い理解と、それを可能にしたツールの開発といっても過言ではないでしょう。国政政党にはまだなっていませんが、今もっともホットな団体のひとつです。

考えてみれば、日本はほとんどが「話すディベート」ばかりです。選挙カーしかり、ポスターしかり、政見放送しかりです。ネットの活用は広まっていますが、それでもまだまだコストのかかる「話すディベート」ばかりです。

いい加減、民主主義のコミュニケーションのあり方を再考し、アップデートする必要があるように思います。まずは「書くディベート」、始めてみませんか?

(VoteItのプラットフォームを日本語化するプロジェクト始めませんか?)