スウェーデンの若者政策とは?

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 youth 123

以前、秋口に翻訳プロジェクトと称して1人で勝手に翻訳をしていたのですが、そのひとつがお世話になっている教授の助けを得て完了しました。(といってもほぼ全面改訂だったので訳出者は僕本人ではありません。しかし序文で丁寧にご紹介をいただきました。ありがたいです。)

この文章はスウェーデンの若者政策の概要にすぎませんが、それを支える根本的な価値観、欧州各国との違い、そしてスウェーデンならではの若者政策の特徴、がわかりやすく記述されています。 3年前に初めてスウェーデンにきて、感銘をうけこの地に昨年来てから1年が経ちました。この間、いくつかの現場に入ったり、訪問したりインタビューなどをしてきましたが、そこで見聞きしてきたことと、この文章を往復するなかで、ときに一貫性を見いだし「なるほど!」と思うときもあれば、疑問が疑問をよぶときもありました。

スウェーデンと日本の違いをあげれば切りがないのですが、この文献を翻訳してみて最初に思ったのはどこの国でも若者は若者であるし抱える問題も似通っているなということであり、若者にとって必要とされる普遍的価値観というものがなんなのか少しわかったように思えました。 ぜひ多くの方に読んでいただけたらと思います。 以下から序文です。

若者と若者政策—スウェーデンの視点

静岡県立大学教授 津 富 宏

 訳出に当たって 北欧、とりわけ、スウェーデンの若者政策は、ヨーロッパの若者政策をリードしてきた。しかしながら、スウェーデンの若者政策に関する資料は日本語では入手困難で、日本の若者政策に関心をもつ行政担当者や一般市民が、スウェーデンの若者政策について知ることは容易ではなかった。そこで、スウェーデンの若者政策を肝要に解説した本資料『若者と若者政策―スウェーデンの視点-(Youth and Youth Policy – A Swedish Perspetive)』を入手したので利用に供したいというのが訳出の理由である。 なお、現地で、本資料を入手し下訳を行ったのは、2012 年11 月現在、ストックホルム大学子ども若者研究学部に留学している両角達平君(静岡県立大学国際関係学部4 年)である。彼の日ごろからの熱心な活動と本文書を訳出しようとした意欲に謝意を表する。

本資料は、2010 年にスウェーデンとトルコの青少年担当部局の協同作業の一環として、EU 加盟を控えるトルコに対して、若者政策においてヨーロッパを牽引するスウェーデンが、スウェーデンの若者政策の概要を伝えるためにつくられた文書である。二国間の利用を念頭に置いて作られた文書であるため、スウェーデン語ではなく英語で作成されており、訳出が可能となった。 本資料の主たる構成は以下のとおりである。

序文

若者政策の特徴

若者を定義する

人間の一生の一時期と社会的分類

人生の諸時期の変容

若者

状況や必要条件の差異

若者政策とは何を意味するか

若者政策の定義

スウェーデンの若者政策-国際的な視点から-

若者政策の対象

若者は問題なのか資源なのか

一つの政策部門としての若者政策

スウェーデンの若者政策の特徴

スウェーデンの若者政策の誕生

スウェーデンの若者政策の内容

スウェーデンの若者政策の目標と展望

この構成を見てもわかるように、本資料は、若者の定義や若者政策の定義といった根本的なところから解き起こして、スウェーデンの若者政策の特徴を示すという構成になっており、スウェーデンの若者政策を原点から理解するために有用である。 本資料のタイトルでもある、スウェーデンの若者政策の視点とは以下の4 つである。

・資源という視点(The resource perspective)

・権利という視点(The rights perspective)

・自立という視点(The independence perspective)

・多様性という視点(The diversity perspective)

要は、若者は社会の資源であり、若者は良質な福祉を享受し社会影響を与える権利があり、若者は依存から自立への成長を支援される存在であり、最後に、若者は一様ではなく多様な存在であるということである。わが国では、ヨーロッパの若者政策の影響を受けた、子ども・若者育成推進法(平成22年4 月施行)や子ども・若者ビジョン(同年7 月決定)が民主党政権下で立て続けに発表されたが、これらの方針で示された、子ども・若者の社会参加の推進は十分な実現に至っていない。それはなぜか。日本の若者政策はこれら4 つの視点のいずれについても理解が浅いからである。日本の若者政策に根幹的に欠けている四つの視点を指摘している本資料が広く活用され、日本の若者政策を大きく後押しすることを望む。原資料の書誌情報は以下のとおりである。 資料名 Youth and Youth Policy―A Swedish Perspective 著者・発行者 The Swedish National Board for Youth Affairs(スウェーデン青年事業庁) 発行年 2008 年 訳稿を以下に示す。 (続きは以下からダウンロードできます)

 若者と若者政策 スウェーデンの視点

Comment

  1. […] いて今度はフィンランドです。スウェーデンの若者政策の概要を記した、「若者と若者政策—スウェーデンの視点」とは違い、こちらは「法」なので全く書かれ方が違いますが、ある意味 […]

  2. […] 第2期“ふじのくに”子ども・若者プランについてのパブリックコメント 国際交流事業と研修に関して 国際交流事業と青少年指導者及び、青少年と関わる人のための研修事業を融合させた海外視察研修事業の実施。具体的に言うならば例えば、英国やスウェーデンなどの若者政策、若者参画の先進国(ユースワークもシティズンシップ教育も英国が発祥)へ、静岡で青少年と関わる仕事をしている人々全般が参加し、現地の実践の事前調査委、訪問インタビュー、そして静岡への施策への具体的な提言等を含む成果報告会を実施するということである。着想は、内閣府が実施している青少年社会活動コアリーダー育成プログラムや、その他NPOによる取り組み(NPO法人Rights, YEC等が実施)である。これは一部の、海外に興味を持ち、ある程度経済的余裕がある人が参加する形だけの「海外研修」ではなく、実際に青少年と現場で関わっていたり、青少年施策の意思決定に関わる政策決定者、政治家、ひいては子ども若者自身が、現地の取り組みを見聞きし肌で感じ、それを静岡における取り組みへと還元することで、静岡の取り組みを発展させることを目的とする。実施する際には金銭的な負担はできる限り自治体が負担し、子ども・若者の参加はもちろん無料で提供する。また、視察は海外に限定せず国内の取り組みに対しても有効である。さらには、視察先団体や実践家との関係を継続できる仕組みを構築することによって、時には静岡に招いて勉強会を実施したり、静岡の取り組みを紹介することも有効だろう。   若者によるまちづくり・若者会議の支援と地域における若者団体の育成 について 若者によるまちづくりや若者会議の目的は、若者の社会参画を実現し、若者が社会に「影響を与えていける」環境づくりを整備していくことである。スウェーデン若者政策の目標のひとつが「若者が、影響力への実質的なアクセスをもつこと」であるが、これは若者の参画自体を目的にするのではなく、若者の参画の結果、若者が実際的に社会に対して影響力を行使できているかどうかを目標に添えているということである。この状態が実現されない限り、若者は社会を身近なものと感じず、受動的な社会参加(例えば消費活動など)に傾倒してしまうのである。これを踏まえた上で、以下に施策を提言する。 若者によるまちづくり・若者会議の支援 案に盛り込まれている「審議会への若者参加の推進」は、若者意見聴衆のためには重要であるが、しかしこれは若者会議の支援には十分とはいえないだろう。若者会議の目的は、上述したように、若者の社会に対する影響力と高めることである。これを体現するのが、ヨーロッパでは最も一般的な「若者傘団体(Youth Umbrella Organization)」である。これは地域の子ども・若者の利益を代弁する組織であり、多くの地域における若者団体が加盟し、束ねる連合組織である。スウェーデンでいうならば、全国青年協議会(LSU)などが具体例になるだろう。(ここでいう若者団体とは、青少年指導などをやっている団体ではなく、若者自身によって構成されている団体である)加盟できる団体は、若者団体であればよく、種類は問わないために、市民活動やボランティア、政党青年部、NGO、学生団体、生徒会のみならず、文化的活動(祭りやバンドやスポーツなど)を行なう団体も加盟ができる。多様な若者団体を束ねることによって多様な若者の声を集約することができ、小さくなりがちな若者の「声」を拡大して社会に発信し、政治家・政策決定者が意見を聞くカウンターパートナーとなる。このパブリックコメントもこのような若者傘団体を通じれば、若者の声の代表性の問題も多少は軽減され、かつより多くの意見が集まるであろう。ヨーロッパでは多くの若者傘団体があるが日本では、ほぼ存在しないor 存在していてもこのような目的に沿って機能していない。 スウェーデンではLSUの他にも各地域ごとの若者会の全国組織である全国若者会や生徒会の連合である全国生徒会が存在している。また英国では英国若者国会の存在が若者声の代弁を担っている。金沢市では「金沢学生団体総会」を実施し、学生団体を束ねている。 さらに、スウェーデン若者傘団体LSUは政府から若者団体に向けの補助金の予算の配分も行なっている。LSUのメンバーは様々な若者団体の代表者であるためもちろん20代前半である。予算の配分基準は、申請団体の構成員に25歳の若者の割合が多いことである。それは構成員が高齢の若者団体に補助金を落とさないようにしているためである。このようにして、財政的な政策における意思決定を若者自身である若者傘団体に行なってもらうというのも非常に有効である。 地域における若者団体の育成 「地域における若者団体の育成」の目的もこれに沿うならば、すでに盛り込まれている「若者または若者団体の研修会への招聘及び社会的評価」ももちろん重要であるが、多くの若者団体が直面する困難は財政的な面である。財政的理由により活動が継続できないことが多いため、若者団体・学生団体の育成のためにより多くの補助金を支出することを提言する。 その他 ボランティア活動や、青少年活動従事者育成セミナーの参加・履修の証明書の発行。ヨーロッパでは、Youthpassという証明書がこの役割を担っており、多くの若者支援・若者団体従事者がこれを利用することにより、就職活動やキャリア構築に役立てている。   […]

  3. […] EUは2001年には完全に若者の「参画」をその若者政策の中核に添えることに舵を切った。欧州委員会の白書によると、例えば、2000年には加盟国間で17の全国規模の会議を開催し、数千人の若者が関わり440の提案をした。EUの若者政策をリードしてきたスウェーデンの若者政策では、若者が社会に影響力を与えることができるようにすることを、若者政策の目標に掲げている。(EU、スウェーデンの若者政策の取り組みを引き合いにだせば、それこそ「きりがなくなる」のでここでは長く触れない。)そういった中で、日本は周回遅れの状態だった。 […]