なぜヨーロッパの若者政策が注目されるのか?

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Downing Street |PM during youth discussion

若者が社会的弱者に転落する(宮本みち子)が2002年に発刊されてから12年。その間、日本の若者支援は、政策・現場ともに様々な取り組みが実施されてきた。Facebookでシェアされていた厚生労働省の図はこれまでのの本の若者政策の変遷を簡潔に示している。

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加えるならば、平成21年に「子ども若者育成支援推進法」がそして、その翌年に大綱「子ども・若者ビジョン」が成立されたことだろう。同法・ビジョンともにゆっくりではあるが確実に若者の社会的包摂を推進してきた。

背景にあるのは、グローバル化による若者への文化経済的な影響かつ多元的価値観の表出、少子高齢化による人口動態の不均衡化、バブル崩壊による若年層の雇用的排除などだ。さらに、若者自身のライフスタイルがこれまでの「直線的」、「単一的な」形態から多様化した。より就学期間が長期化し、学生をしながら仕事をし、時には家族と同居するといった状態を行ったり来たりし、家族や結婚などの伝統的な集団型モデルがより「個別化」するようになった。

これらの背景を認識して日本の子ども若者政策はこれまでの「健全育成」「パターナリスティック」な政策を改善して、社会包摂の枠組みへと舵を切った。一方で伝統的な価値観に基づいて揺り戻しを試みる動きも未だにある。

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全く同じような若者の変化がヨーロッパではより早く起こった。上述した若者を取り囲む社会・経済的な変化は、何も日本だけでなく欧米先進国間での共通の課題なのだ。欧州が早かったのは、その対応だ。EUや欧州委員会の枠組みが整備され、その拡大に伴い様々な社会経済的課題がアジェンダとして取り上げられて解決策が練られたのは2000年前後であった。では一体どのようにしてヨーロッパでは若者政策が発展し実施されるようになったのだろうか。

この度、「欧州若者白書(2001)」の翻訳が完了した。静岡県立大学 津富宏教授 と共訳という形で大学の紀要となった。(本当にお世話になりました。)本白書は、日本の若者政策の議論でたびたび引用されており、ヨーロッパの若者政策を掴むには必読の書と言えるだろう。興味深いのは、政策を形成する際にいかにして若者を政策形成過程に「参画」させたか、その手法と規模だ。ただの政策ペーパーではなく、理念でありアイデンティティであり、その取り組みの「証明」である本白書は、本当に示唆深いのでぜひ一読をお勧めする。

以下が前書きで、本文ダウンロードはこちらから。

欧州委員会白書「欧州の若者のための新たな一押し」

津富宏・両角達平

訳出にあたって

『欧州若者白書』として知られる本白書は、伝統社会の変容とグローバリゼーションの波の中にある欧州の若者を出発点とし、彼らをその政策の中の立役者すなわち「完全な市民」として位置づけ、彼らとともに議論を重ねて作り上げた若者政策の体系化を狙った文章である。

欧州のあらゆる若者関連の政策は、1993年発効のいわゆるマーストリヒト条約の第3章(「教育、職業訓練、若者、スポーツ」)(現行の、リスボン条約の第7章)を基盤として発展が始まった。なかでも若者の参画、社会的包摂、率先力に関する取り組みは、欧州議会並びに議長国からの継続的な支援を受けてきた(Commission of the European Communities, 2001)。

1999年11月23日 若者の領域を担当する閣僚会議(Council of Ministers)において、理事のVivane Redig は若者政策についての白書を作成することを公表した(European Youth Forum, 2002)。この動きは、当時の加盟15か国において、欧州の若者の課題へのアプローチを開発するための真の政治連帯を形成しようとする決意であり、その結果、2001年11月に本白書が発行された。

本白書は、2000年5月から2001年3月にかけて、若者と、国・欧州レベルのステークホルダーを寄せ集めて実施した協議の成果物で、社会への参加の方法を変革することを目的とし、①若者政策におけるEU加盟国間の協同を加速化するとともに、②個々の政策に若者の側面を考慮に入れるという新たな枠組みを提示している。本白書をそれぞれの国の取り組みの基盤に置く国は、当初は15か国であったが、その後25か国、27か国へと拡大した。その結果、各国の若者政策において若者の参加はその中核を占めるようになり、各国の議会と全国若者協議会(national youth council)、また、欧州委員会と欧州若者フォーラム(European Youth Forum)のつながりは強固なものとなった。

さらに注目すべき点は、2004年以降に欧州連合に加盟した新たな12ヶ国のほとんどが、若者政策の基礎をこの白書に置いたことである。その結果、これらの国では、若者団体、若者参画、奉仕活動、ユースワークの質的基準の支えとなる法律、戦略、行動計画が発展を遂げた(Griet et al., 2009)。

本白書の全体は付録を含む9章から構成されるが、翻訳を試みたのは、本白書の本編部分である以下の章である。

前文

  • 背景
  • 課題
    • 人口統計の動向
    • 移ろいやすい若者
    • 公共生活に若者を巻き込む
    • 欧州の統合
    • グローバリゼーション
  • 生産的な協議会の実施
    • キーメッセージ
  • 新たな抱負
    • 若者に関わる具体的な領域
      • 裁量的政策調整
      • 若者領域における裁量的政策調整を用いた取り組みの余地
    • その他の政策に若者をより考慮に入れること
    • ユースプログラムの役割
  • 結論

日本では、本白書に影響を受けて、子ども・若者育成支援推進法が2009年に、子ども若者ビジョンが2010年に施行された。同法には「社会的困難を抱える子ども・若者の包摂」が盛り込まれ、子ども・若者ビジョンには「意見表明機会の確保」や「シティズンシップ教育の推進」が明記されるなど、伝統的な「青少年健全育成」の文脈を脱する画期的なものであったが、具体的取り組みは今後にかかっている。本訳出が、日本の若者政策、若者の社会的包摂、若者の社会参加の議論に活用されることを望む。

資料名

Commission of the European Communities. 2001. European Commission White Paper: A New Impetus for European Youth. Brussels, 21.11.2001 COM (2001) 681 final.

出典 http://europa.eu/legislation_summaries/education_training_youth/youth/c11055_en.htm

訳稿を以下に記す。

本文ダウンロードはこちらから。