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デジタルユースワークとは?|ヨーロッパのデジタルユースワークのガイドラインを解説!

この記事は約10分で読めます。

以前、ヨーロッパにおけるデジタルユースワークの秘訣についてまとめた記事がありました。今回は、この記事でも引用しているヨーロッパのデジタルユースワークのガイドラインを訳しました。

下訳をしたのは、宮寺孝之さんです。情報提供をいただきありがとうございます。

全訳ではないのですが、必要そうと思われる点を訳しました。元の文章はこちらになります。

以下からどうぞ。

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わかりにくいところもあるので、途中で私の解説もいれます。

デジタルユースワークの欧州ガイドライン

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デジタル・トランスフォーメーションは、社会に計り知れない影響を及ぼしています。これらの変化によって若者の生活全体が影響を受けるでしょう。ユースワークの目的は、若者の個人の成長と若者の社会の発展を支援することです。ユースワークの型にはまらないノンフォーマル教育的なやり方は、デジタル社会における若者のニーズに応え、デジタルデバイドを解消し、包摂を促進するために重要な役割を担う位置付けにあります。

デジタルユースワークは、テクノロジーを利用してユースワークをより身近にすることができます。デジタルトランスフォーメーションに対して批判的で、革新的で、それでいて価値に基づいた視点を若者が養い、デジタル社会の未来の共同形成者となる機会と空間を提供し得るでしょう。

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「デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)」とは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱しました。総務省もこちらのページでこの定義を採用して、社会・経済システムのICT活用を論じています。

 デジタルユースワークとは?

デジタルユースワークは…

  • ユースワーク分野及びユースワーク実践における、デジタル化とデジタル・トランスフォーメーションに焦点を置きます。
  • ユースワークの実践において、ツール、活動、コンテンツとしてデジタルメディアやテクノロジーを積極的に使用し、扱うことを意味します。
  • あらゆるユースワークの環境で用いられる、様々な方法と取り組みを含みます。
  • 一般的なユースワークと同じ目的を持ち、同じ倫理、価値、原則に支えられています。
  • 対面でもオンラインの場でも展開されます。

 

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ガイドラインによるとこの定義は、欧州委員会の「若者のデジタル化」専門グループによって作られた作業定義とのことです。

デジタルユースワークの成果(outcomes)とは?

 

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続いて、デジタルユースワークが目指さんとする「成果」です。箇条書きになっています。

デジタルユースワークの成果は…

  • ユースワーク及び若者政策は、先を見越して技術の発展やデジタル化を十分に検討し、社会やユースワークの実践に対する、デジタル化の効用と悪影響の両方を特定すること。
  • ユースワークは、地理的にも社会的にも孤立している若者にとってより身近なものとなること。
  • ユースワーカーが、デジタル技術にたいして俊敏(agile)で批判的な思考態度を獲得し、質の高いユースワークを提供する資質(competences)を身に着けること。
  • 他機関との連携や国際的なネットワークを築くこと。

デジタルユースワークが目指す若者像

 

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そしてデジタルユースワークをした結果、若者が「こうなること」としての成果が続きます。

デジタルユースワークにより、若者が…

  • デジタル社会に参加し、エンパワーされている、積極的かつ創造的になる
  • デジタルスキル、STEAM 、メディアリテラシーを獲得する
  • 自信を持ち、立ち直る力を持ち、未来に対して前向きになれる
  • デジタル時代に、個人的に関係、社会的な関係性、フォーマルな関係性を築くことができる
  • デジタル化のリスクを予見し、十分な情報に基づいた理性的な意思決定をし、デジタルアイデンティティを自在に扱うようになる
  • デジタルな方法で、意見を表明し、社会への関与ができるようになる
  • ネットワークにアクセスし、連携し、社会に参加するようになる

デジタルユースワーク実践の例

 

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ここからはデジタルユースワークを実践に具体的な落とし込んでいきます。おもに3つの活用方法があります。

1.ツールとしてのデジタルユースワークの導入

デジタル化により、ユースワークを最新のやり方で、今まで以上に若者に身近なものとする

・デジタルツールを用いた意思決定への参画
・ソーシャルメディアやアプリを利用した若者へのアプローチ
・脆弱な状況におかれた若者へのオンラインでの相談

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ここは普段のユースワーク活動にデジタルツールを導入しましょうということです。LINEで相談にのったり、SNSで発信して若者にアウトリーチすることなどですね。

2. 活動としてのデジタルユースワークの導入

試行錯誤での学び(learning by doing)、手を動かす活動に(デジタルユースワークを)導入

・ポジティブなゲーム文化を促す、ゲームグループ(の組織化)
・STEAM型の教育やメイカー(Maker educationに参画する主体)プロジェクトのやり方で、21世紀型スキルを培う
・デジタルメディアを創る共同学習

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これかの時代に必要とされるスキルを学べる要素の強いデジタルツールを導入してデジタルユースワークにしましょうということです。例えば、ゲームはゲームでも「プログラミングが学べるゲーム」をやるということです。他にもゲーミフィケーションをとりいれた教育とか学校で取り入れられているようことが想定できそうです。

3. コンテンツとしてのデジタル化を扱う

デジタル化自体をテーマに扱う
  • オンラインとの関わり方やふるまいについて議論する
  • デジタル化やデジタルリテラシーにかんするテーマを探求する
  • デジタル権利を守るために若者をエンパワメントする
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3つめは、「デジタル化」自体をテーマにする活動をするということです。「デジタル社会における若者の権利とは何か?」とかを話し合うということです。3つのデジタルユースワークの種類が想像できたでしょうか。

デジタルユースワークの組織開発のためのガイダンス

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現場でデジタルユースワークを実践するあたって、現場運営を担う組織自体の変革も必要です。ここでは組織がデジタルユースワークを実施するにあたって取り組むべしことをリストアップしています。

  • 戦略(Strategy):デジタルユースワークを組織の戦略とビジョンに組み込む。
  • 文化:革新的・実験的で、新しいやり方を試み、失敗から学び、成功へ導く(という文化形成を目指す)
  • ガバナンスとマネジメント:ポリシー、倫理基準、プロセス、計画に「デジタル化」にかんする項目を反映させる。
  • 人事:職員とボランティアが能力を高め、新しいことにチャレンジできるような定期的な研修会を実施する。
  • 基盤となる設備:スタッフや若者に必要となるであろうソフトウェア、ハードウェア、機器、ツール、接続機器を提供する。
  • 連携:ユースワークの価値を維持しながら分野横断的な連携を進める。

ユースワーカー向けのデジタルユースワーク開発の原則

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ここからいよいよ実践編です。ユースワーカー個人にむけたデジタルユースワーク実践において①実施したいこと、②倫理観、③能力形成のためにできること、で分かれています。

実施 (practice)

  • ユースワークの目標と若者のニーズ・想いに寄り添い、デジタルをユースワークに取り入れて、デジタルユースワークの計画を立て、実施しましょう。
  • デジタルユースワーク活動、ツール、デジタル化を導入し、普段かかわっている若者が革新的な方法を利用できる機会を作ってみましょう。
  • 調べ学習を促進しましょう:若者とユースワーカーに空間をあたえ、試行錯誤してもらい、時につまづき、乗り越え、問題を一緒に解決していきましょう。
  • 「消費者」から「創造者(クリエイター)」になることを可能にしましょう。
  • ツールについての十分な情報提供をして、若者の権利、安全、アクセス、楽しみを考慮しましょう。
  • 企画段階で評価の実施も組み込みましょう。
  • デジタルユースワークの効果を発信し、認識を高めましょう。

倫理
(ethics)

  • 普段のオフラインのときの(実践時に大事にしている原則やルールなどの)基礎と、意思決定のやり方をデジタル化し、デジタル化による新たな課題を明らかにしましょう。
  • プロとしての(若者との)関係性、境界線は維持しましょう。
  • 若者をエンパワメントする方法でかかわり、若者が自身の権利を守る助けとなりましょう。
  • 批判的思考態度を持って若者がデ、ジタル化、デジタルメディア、テクノロジーを自在に扱うことができるようにしましょう 。

能力形成
(Professional Development)

  • 新しい知識とスキルを段階的に獲得するための養成機会の実施。
  • これまでにない考え方に触れて、デジタル化した「アジャイル文化」をとりいれたユースワーク環境に触れていきましょう。
  • ピアラーニング、知識の共有、国際的な連携を進めましょう。
  • 技術の専門家であるよりも、デジタル技術に対する興味とアジャイルな心持ちを大切にしましょう。
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ちょくちょく出てくる「アジャイル(agile)」とは、英語で「俊敏な」「すばやい」という意味がある言葉ですが、もともとはIT業界で使われているソフトウェア開発の手法のひとつです。転じて組織開発の理念やマインドセットとして最近では用いられているようです。

資金提供者と政策立案者

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ここからは資金提供者や政策立案者に向けたメッセージです。わかりやすくするために表記を一部変えています。

現場へのデジタルユースワークの導入事例は多くあります。故に、ユースワーク部門は、すべての若者が機会を得るために、あなたたち、資金提供者、政策立案者の一助が必要なのです。

(ユースワーク)部門が、デジタル社会において若者をエンパワメントする重要な教育実践としてユースワークに価値が置かれるようになるためには、(資金提供者、政策立案者である)あなたが必要なのです。

資金提供者へのお願い

  • デジタル化におけるユースワークのやり方、目標、倫理、プロとしての境界線のひき方への理解が考慮され、その効果に価値を置いてください。
  • 若者なら誰しもがもとから高いデジタルリテラシーとスキルを持っている訳ではないと理解してください。
  • 評価と事後報告においては、反復プロセスと試行錯誤からの学びを受け入れ、新しい試みを勧め、計画してた活動の変更を許容してください。
  • 職員への給料、インフラ整備、設備、職員やボランティアなどの実践者のための能力形成の機会に資金提供してください。
  • デジタルユースワークの効果にかんする継続的な研究へ投資してください。
  • デジタルユースワークの価値を理解してもらい、最良の実践を共有してもらうために、資金提供団体の職員を支援してください。

政策決定者へのお願い

  •  創造性、自己表現、やり直す力、若者の声をエンパワメントする方法で、若者がこれまで以上にデジタル化された生活を送れるように支援するユースワークの価値を認識し、擁護してください。
  • デジタルユースワークを若者政策や法律に取り入れてください。
  • 従業員の仕事の専門的な枠組みにデジタルを組み込み、能力形成に投資してください。
  • デジタル時代における、ユースワーク分野の役割と重要性を探究する分野横断的な働きかけを促進してください。
  • ユースワーク分野、教育の専門家が参加するプラットフォームを支援してください。
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以上になります。コロナ禍で、子ども・若者とかかわる活動ができにく状況は世界中で共通しています。そこで注目を集めるデジタルユースワークですが、その原理・原則、検討したい事項がこのガイドラインには盛り込まれているように思います。このガイドラインを参考にして、オンラインで子ども・若者とかかわるうえでのルールや心がけたいことなど、それぞれの実践現場で考慮してみるとよいかもしれません。

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