「ヤバい経済学」のポッドキャストであるFreakeconomis Radioが好きで、通勤中によく聴いています。

シカゴ大学の経済学の教授のスティーヴン・D・レヴィットと、ジャーナリストでありライターのスティーヴン・ダブナーが共著した「Freakonomics」というベストセラーの日本語版が「ヤバい経済学」という本です。
このブログでも実は何度か「神回」を紹介してきましたが、今回もそのシリーズです。
お金を貯めるために従うべしたった10個の法則
今回の回は「お金についてみんなが知りたいけどどうしても聞けないこと」という、なんともまあ魅力的なタイトル!
この法則、めちゃめちゃシンプルな割りに、しかもちゃんと裏付けがあるんです。
この法則は、シカゴ大学のHarold Pollack 教授が受賞経験もあるファイナンス系のジャーナリストであるHelaine Olenをインタビューをした時に、「お金を正しく使うすべてのことは索引カード(index card)におさまるじゃん!」とババっと書き出した法則。ネットにあげたら、そのわかりやすさが故にいっきに拡散され、しまいには出版にもいたったのです!
というわけで今回は、この法則について解説しているラジオ版「ヤバい経済学」の「お金についてみんなが知りたいけどどうしても聞けないこと」という回の内容をお届けします。長いので前半と後半に分けます。
お金はあっても「金融リテラシー」はまったくない若きアメフト選手たち
ポットキャスト冒頭のゲストはジョージワシントン大学のビジネスプログラムで教えるミラノ生まれのLusardi教授。25年前にアメリカにきて最初に困惑したのは「アメフト」社会のアメリカ。同大学のSTARプログラムでは有望なアメフト選手が集まり、そこで初めてアメフトと出会った。
プログラムにはBaltimore Ravens のプロもいたらしい。選手は規則正しく思いやりがあり、彼女のお気に入りの学生達だった。あるとき経済学の授業中にいつものようにTOYOTAの「カローラ」を例にして教えていたら「先生!僕たちToyotaローラには”おさまらない”のですけど!笑」とつっこまれ、あることに気づいた。
それはこの優秀な学生達がお金の扱い方に無知であったこと。Lusardi教授の専攻は金融リテラシー。
「今日の金融リテラシーはかつての親の世代とは大きく違う。親の世代は年金を心配する必要もなかったし学生ローンもクレカもなかった。しかし今は世界の金融市場は目まぐるしく変化し複雑になっている」(Lusardi教授談)
経済学者は、「複利」や「リスク分散」などの基本的な金融のルールを心得て、それに応じた行動をするのが「普通」だと考えていた。しかし、彼女は経済学者Olivia Mitchellとそれが本当かどうかを検証することにした。使ったのはたった3つの問い。シンプルさが故に世界中からデータを取ることができた。
金融リテラシーがあるかどうかがわかる3つの問い
というわけでLusardi教授が作った金融リテラシーがあるかどうかがわかるこの質問にみなさんも答えてみてください。
正解と解説
正解は以下の通りです。
正答率は3割程度
みなさんいかがだったでしょうか?おそらく高校の現社の知識で解ける程度の問題かと思います。 しかし、実際はこの3問すべて正解した人はむしろ少数派で回答者の3割しかいないとのことです。しかも世界中、どこの国でも同じくらいの割合だったようです。
ちなみにTwitterで回答をしてもらったら、このような結果になりました。
問3でわからないと答えた人の割合が高かったですね。ちなみにぼくは全問正解でした!
(インベスターZ、読破しただけありました。これ本当にわかりやすくて株とか投資とかすごくわかりやすく教えてくれるいいマンガですよ~)
「金融リテラシーの欠如」が問題なのではない
アメリカでは金融リテラシーの有無がクッキリ現れており、「若者、年寄り、女性、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、学歴なし、田舎住まいの人」ほど「(金融リテラシーの)課題を抱えている」とLusardi教授らは指摘する。
しかし、この正答率の低さは「高学歴の人であっても金融リテラシーがあるとは限らない」ことを証明している。お金の使い方は、親が子どもに教えるべきことかもしれないが、気軽な話題でもないし、そもそも「金融リテラシーのない親」から子どもは何も知ることができない。
そもそも問題は「金融リテラシーをつけること」なのだろうか?法学者Lauren Willis教授は、
「金融(素材)が必要以上に複雑で、搾取を目論むものばかりであることが問題であり、よりユーザーフレンドリーな金融(素材)をデザインするほうが、金融リテラシーをつけることより大事だ」
と主張する。さらに
「(金融リテラシーをつけることは) すべての人に自分自身の医者になり機械工になれといってるようなものです。それは効率が悪いだけでなく、『不勉強なのはあんたでしょうが!』という消費者へ責任転換が起こるので、長続きはしないでしょう」
と、Lauren教授は唱える。
しかし、冒頭のLusardi教授はこの見解に賛成しない。彼女が設立したジョージワシントン大学のグローバル金融リテラシー高度化センターの目的の一つが、「普通ではない」暮らしをしている若きアメフト選手らに、金融リテラシーをつけてもらうことだ。Lusardi教授によると、若きアメフト選手らは普通の人が一生で生活するのに必要なお金を、人生の早い時期に稼いでしまうという。
それは逆に選手生命が短いことを意味するので、生産手段がなくなった場合にも備えて「賢く」お金をやりくりしなければならないということですね。
思いたったLusardi教授は、90年代から2000年代にドラフト指名されたアメフト選手らのデータをかき集め、その中で破産した人がどれだけいたかを調査した。その結果、約15%の選手が破産していたことが明らかになった。トッププレーヤーであったとしてもリスクは同じくらいに高いことも明らかになった。この調査は、「金融リテラシーがないこと」と「金融リスクを高めること」の関連を強めることとなった。
つまり、金融リテラシーがないとお金を賢く使えない、ということが改めてわかったということですね。
では何をすべきなのか?
では、金融リテラシーをつけるために何をしたらいいのでしょうか?やはり、難しい本とか読まないといけないのでしょうか?
「40歳になるまでお金の使い方などまったく無関心だった」
と答えるのはシカゴ大学のPollack教授。あるとき身内に不幸があり生活状況が一変し「このままでは金がなくなる!」と悟り、お金の使い方について必死に勉強した。
そして完成したのが、冒頭で紹介した10の法則だったのです!
次回は、その10個の法則を解説するラジオ版「ヤバい経済学」の「お金についてみんなが知りたいけどどうしても聞けないこと」の後編をお届けします。