ビッグイシューオンラインが『若者政策提案書』を公開して、その中で若者政策の必要性を訴えいます。これまでの学校教育、健全育成的な青少年政策に代わるより多分野横断・包括的な「若者政策」の必要性です。
これは何も日本だけでなく、欧米先進国を始め世界的にその必要性が訴えられています。2年前の夏から毎夏、ベルリンで働かせていただいたYouth Policy Press (Youthpolicy.org)では、まさにその若者政策の知識と情報収集を行っています。先日、同団体の同僚から「あのプロジェクトがついに完了したからみてくれ!」と連絡がありました。何かというと、このウェブプラットフォーム、のアップデートです。
(このサイトの概要についてはこの記事参照)
今回のアップデートは、新たなページ追加に伴う大幅なサイトレイアウトとデザインの変更です。Youtgpolicy.orgは、世界のユースワーク、若者政策に関する調査と研究をし事実に基づいた知識の集積をしているウェブサイトですが、中でも一押しなのが195カ国各国の若者政策に関する情報を収集したファクトシートです。195カ国の全ての国ごとに作っています。
このファクトシートに含まれている情報は、各国ごとの若者の
- 定義
- 成人年齢
- 選挙権年齢、被選挙権年齢
- 刑事責任年齢
- 結婚年齢 (男女別、同性婚含む)
- 識字率
- 就学率
- Youth Development Index
- 就業率
- 喫煙率
- HIVの感染率
- GDP、政府予算における教育政策への出資の割合
や、若者政策に影響をもたらす様々な経済・社会的な指標である
- GDP (人口一人当たりの)
- Human Development Index
- GINI係数
- Corruption Perception (汚職の認知度の指標)
- Press Freedom (報道の自由に関する指標)
- 人口ピラミッド
に加えて、各国ごとの「若者政策の状況」に関して、
- 若者政策の有無
- 若者政策に責任を持つ公的機関の有無
- 全国規模の若者の代表組織、協議会、プラットフォームの有無
- 若者政策の予算
をソース付きで記述しています。
これらの指標からわかるように、若者政策は非常に多岐に渡っています。伝統的には、学校などの教育政策や、地域の健全育成政策などがカバーしていましたが、青少年が大人へとなる「移行期」の概念が拡大・多様化し、伝統的な直線的なライフコースだけでは若者を捉えきれなくなったことから(宮本みち子先生ら参照)、教育のみならず様々な社会的な政策を含むようになったと言われています。日本だけでなく、このウェブサイトの存在が証明しているように、世界的な現象といっても言い過ぎではないでしょう。
今回のアップデートで最も変化が大きかったのは、このファクトシートのデータを抽出して世界地図上で俯瞰できるようになったことです。
例えば国レベルの若者政策があるか?という指標で見るとこんな感じ。
青が”Yes”で”赤が”No”。カナダはないんですね!
青が濃い方が年齢が高いということです。日本が少数派だということがよくわかります。日本では選挙権年齢は20歳から引き下げられることが決まりましたが、ヨーロッパでは16歳への引き下げの検討が始まっています。
そして政治家になれる年齢(被選挙権年齢)はというと、こんな感じ。
この地図は、一院制の国と、(二院制を採用している国は)下院、の両方を含めて表示しています。こちらの記事でも書いたように、選挙権年齢と違って、被選挙権年齢は国ごとに多様ですが、日本の衆議院議員になれるのが25歳なのは、決して多数派ではありません。21歳の時点(17~21歳)で被選挙権が得られる国は世界で、108カ国(約55%) を占めているのです。世界的には、18歳で投票ができて21歳の時点でなろうと思えば政治家になれるのに、日本は20歳で投票で25歳でようやく出馬可能なのです。これは普通じゃないことが視覚的にわかります。この地図の下にある表からCVSファイルでデータをダウンロードできるので、グラフを作りたい人はぜひ活用するといいと思います。
オリジナルデータは、Ace-ProjectやInter-Parliament Union (IPU)から抽出しています(不明な場合はその国の選挙法や憲法も読みましたorz)が、このように地図としての可視化はAce Projectは投票年齢に限ってやっていましたが、被選挙権年齢やその他の法的年齢を含めてこのようにまとめたサイトは、今のところ知りません。これでもう、世界の選挙権年齢のソース探しに苦しむ必要はありません。
2年前の夏に初めてベルリンに飛び、このシンクタンクで働き始めた時の最初の仕事が、実はこのプロジェクトの世界の若者の法的年齢のデータを集めることでした。その際、ウェブサイトのデザインもかなりうるさく注文をつけたのですが、その中の一つに、駄目元で「国レベルで比較できるようにしてほしい」とお願いしたことがありました。そしたらあらまあ、やってくれたんです!
画面右上の”Compare figures”から比較したい国を地図上から選ぶと、こんな感じで国と該当するデータを同時に表示してくれます。上の画像は日本とスウェーデンの比較ですが、日本の若者の傘組織がないことがスウェーデンとの比較でわかります。今のところ若者政策の状況に関する情報しか表示されてないので、今後のアップデートに期待しましょう。
他にも、若者政策に関する文献や政策文書がLibraryから閲覧できたり、様々なテーマでユースワークや若者政策に関する記事が世界中の実践者や研究者からの寄稿記事が読めます。これ以上、日本の若者政策を「ガラパゴス化」させないためにも、ぜひこのサイトを活用してみてください。
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