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ユースワークとは何ですか?|Quoraで回答を書きました。

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Quoraというウェブサイトをご存知でしょうか。

Quora - 知識を共有し合い、世界を知ろう

アメリカ発のQ&Aサイトですが、「Yahoo!知恵袋」と「Wikipedia」の間をいくような質の高い知識や情報が集約しているコミュニティです。

昨年のことですが、こちらにユーザー登録のお誘いが以下のようにあったのですが、ほったらかしていました😅

そこで受けた質問のひとつに「ユースワークとは何ですか?」という質問があったので回答してみました。以下から確認できます。

ユースワークとは何ですか?に対する両角 達平 (Tatsuhei Morozumi)さんの回答 - Quora

せっかくなので回答内容をこちらのブログでも共有します。(学生の皆さんはこちらの内容をコピペしてレポートにしないようにしてくださいね✋)

ユースワークとは何ですか?

ユースワークは、その活動と性質の多様性から単一の定義が定まっているわけではありません。「思春期以降の子ども・若者に関わる活動の総称」と言われますが、日本においては家庭教育と学校教育を除く教育分野である社会教育の、子ども・若者を対象にした「青少年教育」と表現される場合もあります。[1]
しかし、2000年代からはニートやひきこもりなどに代表される経済的な自立が不安定化した若者の課題が浮かび上がってきました。その対応として若者への就労支援の取り組みが拡大する中で、ユースワークが再び注目されるようになりました。

ユースワークの特徴

ユースワークの特徴は、若者の自主的な参加を基盤とした多様な文化活動を通じて、「友人をつくり、学び、成長するインフォーマルな教育実践」であると言われます。[2]また最近の社会教育業界における研究[3]では、子ども・若者支援を担う主体として「ユースワーク」と「ユースソーシャルワーク」を以下のように整理しています。

ユースワーク(ユニバーサルサービス)

• 芸術的・文化的創造活動
• スポーツ, リクリエーション活動
• 野外活動・環境学習活動
• 国際交流・多文化共生・人権的活動
• キャリア教育的活動
• 地域連携・ボランティア活動
• 居場所づくり・相談活動 など

ユースソーシャルワーク(ターゲットサービス)

• 不登校・ニート・ひきこもり支援
• 障害のある子ども・若者の支援
• 非行・犯罪に陥った子ども・若者支援
• 貧困への支援
• 困難を有する子ども・若者の居場所
• 外国人等、特に配慮が必要な子ども、若者の支援 など

ユースワークの方法

ユースワークの担い手のことをユースワーカー(Youth Worker) と呼びます。常勤、非常勤、ボランティア、フリーランスなど様々な形態で、若者とかかわります。ユースワーク活動の拠点となる施設のことを「ユースセンター(Youth Centre)」と呼びます。

ユースワークには様々なアプローチがあり、ユースセンターのような施設を拠点として展開される施設基盤型ユースワーク (Centre-based youth work) や、宗教団体を基盤とする信仰基盤型ユースワーク(Faith-based youth work)、地域社会全体を拠点とする地域基盤型ユースワーク (Community Youth work)、そして学校に入り込んで活動をする学校基盤型ユースワーク (School Youth work) などもあります。

他にも、地域の若者がいる場所に出向いて活動をするストリートワークもあります。デタッチド・ユースワーク・(Detached youth work)、アウトリーチ・ユースワーク(Out reach youth work)、移動型ユースワーク(mobile youth work)といわれるものもあります。最近では、ゲームやパソコンアドの電子デバイスを使ったりオンラインを舞台にするデジタルユースワーク (digital youth work)という分野もあります。[4]

日本のユースワークの現状

現在日本では、公益財団法人や非営利団体などの様々な主体でユースワーク的な活動が展開されています。(公財)京都市ユースサービス協会は、ユースワーカーを「若者の成長を手助けする専門スタッフ」と紹介しています。[5]また認定NPO法人カタリバはユースワーカーを「子どもたちの可能性を信じ、個別の年齢や特性に寄り添い、成⻑や変化に伴⾛する存在」としています。[6]
子ども・若者を対象にした主な施設も日本には多く存在しています。自然体験や生活・交流体験の場を提供する青少年教育施設である「少年自然の家」「青年の家」は、全国に941施設が設置されています。[7]他にも厚生労働省が所管する児童館は4477施設、勤労青少年ホームは290(未満) 施設あるとされ、就労支援をおこなう若者サポートステーションは177施設存在します。
ヨーロッパの国ではユースワーカーが専門職として確立し、国家資格や認定資格や労働組合が存在している国もあります。日本では国家資格にはなっていませんが、専門職化を目指す動きもあります。[8] また、専門職集団のネットワークとしてユースワーカー協議会も2019年に発足しています。[9] 各地のユースセンターをまとめたYouth Work Studio というサイトもあります。

ヨーロッパにおけるユースワークの発展と今日の定義

もともとのユースワークの起源は19世紀の産業革命を経たイギリスといわれており、近代社会の発達の中で変容する若者のニーズに応える形で、YMCA・YWCA、ボーイズ・ブリゲード、ボーイスカウト、ガールガイド、セツルメント運動などの「青少年運動(youth movement)」を中心にして各地へ広がりました。その後、欧州各国で独自の発展を遂げた「ユースワーク的な活動」は、世界大戦を経て、欧州評議会(1949年設置)やヨーロッパ連合(EU:1993年設置)によってヨーロッパ諸国が統合されていく中で「若者政策(youth policy)」の元で施策として位置付けられていくことになります。

ヨーロッパでは1980年代から若者の失業率が高まり、子どもが大人に成長する時期である「移行期」に置いて様々な課題が生じていたので、若者政策を整備する必要があったのです。その後、欧州評議会やEUの枠組みの元で、「欧州ユースワーク大会(Eurpean Youth Work Convention)」が2010年、2015年、2020年に開催され、その中でユースワークの定義や施策理念や課題が議論がされて基盤が整備されて今日にいたります。 第2回欧州ユースワーク大会において策定された宣言によると、ユースワークは「若者の居場所(place)を作ること」と「若者の人生の橋渡しをすること」の2つを基盤とするとしましたが、それでも定義は不明確なままだったとされています。[10]
それを受けて2017年に欧州評議会によって作成された「勧告文」[11] では、ユースワークの定義の明確化を試みました。勧告文では、ユースワークの定義は以下のように示されています。

ユースワークは、有償もしくはボランティアのユースワーカー によって提供され、若者のノンフォーマルかつインフォーマルな学びの過程と 主体的な参画に基づくとされる。
ユースワークは本質的には、若者と共に取り組み、若者が生活する社会に働 きかける社会実践であり、若者のコミュニティと意思決定における積極的な参 画と包摂を促進する。伝統や定義の差異はあれど、若者が自身の人生に前向き な道筋をみつけ、追求することを動機づけ、サポートし、それにより個人と社 会全体の発展に寄与するというユースワークの最も重要な役割は共通に理解さ れている。
ユースワークは若者をエンパワーし、積極的に活動を創出し、備え、提供 し、評価を実施し、若者のニーズ、興味、アイディアそして経験を反映した活 動に若者を惹きつけることで、これを達成する。若者は、このノンフォーマル でインフォーマルな学びの過程を経て、一歩を踏み出すために不可欠な知識、 スキル、価値、心構えを身につけ、自信を得るのである。

おわりに

このようにユースワークは、制度設計がきっちりされている公教育とは異なりその輪郭がおぼつかない部分を含みます。しかし、だかこそ今を生きる若者を主語にした取り組みであり得るとも言えるでしょう。若者政策が整備されているヨーロッパではユースワークの環境も整えられ始めています。日本でも、社会の先行きが見えない時代においては若者の生き方は多様化しています。それを支える取り組みであり、運動である「ユースワーク」には、大きな期待が寄せられているといえるでしょう。

脚注

[1] ユースワーク・青少年教育の歴史
[2] 若者支援の場をつくる vol.1 子ども・若者を支援する実践者のためのジャーナル
[3] 子ども・若者支援と社会教育
[4] デジタルユースワークとは?|ヨーロッパのデジタルユースワークのガイドラインを解説!
[5] http://yskyoto.org/about/youthworker/ 
[6] https://www.katariba.or.jp/event/26261/
[7] https://furusato.jp/wp-content/uploads/2019/11/h30kodomolongstay06.pdf
[8] HOME | 子ども・若者支援専門職養成研究所
[9] ユースワーカー協議会
[10] CiNii 論文 EU若者政策にみるユースワークの基盤形成過程の変容:欧州ユースワーク大会宣言の比較研究
[11] https://rm.coe.int/cmrec-2017-4-and-explanatory-memorandum-youth-work-web/16808ff0d1

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