スウェーデンが選挙後4ヶ月でようやく政権樹立!この間に政界で起きたことをまとめました。

総選挙から130日あまりが経って、今日やっとスウェーデンの政権が樹立することになりました。スウェーデンは9月に総選挙があって以降、政権が不在の状況が続きました。

せっかくなので、この130日の間に何が起き、どのような動きがある中でようやく政権樹立となったのかを遡ってお届けしたいと思います。

複雑なスウェーデンの政治を理解するために

その前に、まずはこの図を頭に叩き込んでください。

スウェーデン国会の勢力図 By GeMet. File:Riksdagen.svg by Slady and Sertion. – Data: val.se. (pdf) (See also at the Wayback Machine (archived on 16 September 2018)) Diagram created with parliament maker by Slashme.

これはスウェーデン国会における政党の勢力図です(2019年1月現時点)。この図をおさえるには以下がポイントです。

・スウェーデンは一院制(日本は衆・参議院の二院制)であるのでこれが国会における全議席
・この半円の左が「左派」、右側が「右派」と考えていいが、スウェーデン民主党(中央の黄色)は「極右」に位置するという見方もある
・この勢力を基本として、「赤緑ブロック」と呼ばれる中道左派連立政権(社会民主労働党、環境みどりの党、左党)、とアリアンセンと呼ばれる「中道右派連合(穏健党、自由党、中央党、キリスト教民主党)」、そしてスウェーデン民主党の勢力に別れる

この図を念頭にスウェーデンでの総選挙の結果も踏まえ、それでは長い長い130日の政権樹立までの道のりを辿ってみましょう。

2018年の総選挙では社会民主労働党が歴史的大敗!

9月9日 スウェーデン総選挙

・中道左派連立政権(社会民主労働党、環境みどりの党、左党)も、中道右派連合(穏健党、自由党、中央党、キリスト教民主党)も政権樹立に必要な過半数である、175議席を獲得できず、

・一方で極右勢力とされているスウェーデン民主党は議席数を伸ばすも、選挙前の世論調査が予想するほどではなかった。

・選挙結果速報が提示された後に、穏健党党首のUlf Kristerssonは社会民主労働党党首のStefan Löfven に辞任を迫るもStefan Löfven は最終結果を待つことを希望する。

穏健党党首 Ulf Kristersson By: European People’s PartyCC BY 2.0

9月10日

自由党党首Jan Björklundが、スウェーデン民主党と手を組まないことを宣言し、もしそのようなことが起きれば中道右派連合に終止符を打つことを主張。

自由党党首Jan Björklund By: News OresundCC BY 2.0

9月11日

社会民主労働党は、スウェーデン民主党を除いたすべての政党と相談をして、政治的こう着状態を打破する方法を模索する。

9月11日

社会民主労働党党首Stefan Löfven By: SocialdemokraternaCC BY 2.0

中道右派連合は、社会民主労働党党首Stefan Löfvenを招いて、横断的連帯による中道右派主導の政権の樹立を提案するも、Stefan Löfvenはこれを拒否。

9月13日

選挙四日後の選挙速報で、中道左派連合は144議席を獲得、中道右派連合は143議席を獲得、スウェーデン民主党は62議席を獲得したことが確定。

 

9月16日

速報結果が、再計算され速報値が確証される。どちらの連合も「勝利」を宣言するも、結果は、政治的なこう着状態となる。

9月21日

中道右派連合は、穏健党議員のAndreas Norlénを議長に推薦し、社会民主労働党現職議長のUrban Ahlinと入れ替えることを提案。社会民主労働党は、 Åsa Lindestamを議長に推薦。

9月24日

スウェーデン民主党からの支持により、穏健党議員のAndreas Norlénが議長に選出される。

首相が決まらず、各政党との調整が難航する

9月25日

社会民主労働党党首Stefan Löfvenを、首相公選の国会投票により首相就任が否決される。スウェーデン民主党が、中道右派連立の意向に沿ったことで実現。Stefan Löfvenは辞任を申し出るも、議長により政権の世話人を務めることを求められる。

10月2日

議長は、穏健党党首Ulf Kristerssonを調整役(sonderingsperson)に任命する。

“sondera”とは「探索する」「模索する」の意味で、sonderingはその名詞形で、personは「人」を意味する。なので一先ずここでは「調整役」という訳とする。

調整役は、国会からの支持を得ることを目指して他の政党の党首と対話をし政権樹立にむけた提案を模索するという役割を担うということ。

10月14日

穏健党党首Ulf Kristerssonは、十分な支持を得られなかったことを理由に、中道右派連立政権を樹立する企てを中止する。

10月15日

社会民主労働党党首Stefan Löfvenが政権を樹立する任務を任される。

10月29日

社会民主労働党党首Stefan Löfvenは、政権樹立の企てを中止する。

11月5日

穏健党党首Ulf Kristerssonに、再び政権樹立の任務が課さられる。

政権不在から2ヶ月が経過し予算案をたてられない状況を鑑みて、議長である穏健党議員のAndreas Norlénは自らを、首相ポストの候補とすることを提案。

11月14日

国会投票により穏健党党首Ulf Kristerssonは首相候補を否決される。穏健党と同じ中道右派連合である、自由党と中央党も彼の首相就任に反対票を投じた。その理由は、政権が成功するにはスウェーデン民主党からの指示が必要であり、スウェーデン民主党が次のスウェーデンの政権において影響力を高めることを阻止することを誓約したことにあると、主張。

中央党の登場!救世主となるか?

11月15日

政治的こう着状態を打破してもらうために中央党党首Annie Lööfに調整役(sonderingsperson)に任命。

中央党党首Annie Lööf By: Centerpartiet (official)CC BY 2.0

11月22日

中央党党首Annie Lööfもまたブロック政治を横断する妥協策を試みるも、調整を中止。

彼女が考案したのは以下の3つの代替案

  1. 中道右派連合が社会民主労働党と組むこと
  2. 中道右派連合が環境みどりの党と組むこと
  3. 中道の小政党と組んで、中央党・自由党政権をつくること

しかし、どの代替案も十分な支持を得られず、Annie Lööfは過半数に達しない政権を主導する可能性が見出せないとコメント。

11月27日

中央党党首Annie Lööfは、中央党と中道右派連合の政策をのむことを条件に、中央党が社会民主労働党党首Stefan Löfvenが首相ポストに戻ることもありうることを明言。

11月28日

自由党が、中央党と同様の主張を明言。しかし、自由党党首Jan Björklundは十分な支持を得られず。社会民主労働党党首Stefan Löfvenは、中央党と自由党の提案に応じて、「ギブ&テイク」する準備があることを明言。社会民主労働党党首Stefan Löfvenの首相就任を問う国会投票が12月5日に予定される。

12月3日

議長が、政権樹立を模索することにもう少し時間をかけたいということで、首相就任を問う国会選挙が延期される。この時点では、選挙日のリスケジュールはされず選挙日は未定のままに。

12月10日

中央党は、連日連夜、社会民主労働党との妥協点を探るために伴走したも最終的には、社会民主労働党党首Stefan Löfvenが首相になり主導する政権には反対することを決定。

12月12日

社会民主労働党党首Stefan Löfvenが、正式に首相候補となり、社会民主労働党と環境みどりの党との政権樹立を目指すことに。投票は12月14日に予定される。

12月13日

暫定政府により提案された予算が国会で否決され、穏健党とキリスト教民主党の予算案が過半数の支持を得る。予算案は春頃に若干修正を加えることは可能であっても、所得税に関しては1年間は変更が不可能なので、中道左派には痛手となる。

12月14日

社会民主労働党党首Stefan Löfvenの首相就任が国会投票と議長により否決される。

1月10日

社会民主労働党党首Stefan Löfvenと穏健党党首Ulf Kristerssonが議長と会合。後の記者会見では、口をつぐんでいたが「建設的な」議論が「進行中」であると話した。

社民の対立政党である中央党と自由党の歩み寄り?

1月11日

社会民主労働党、環境みどりの党、中央党、自由党により取引がメディアによって報道され、関与した政党がそれを認める。社会民主労働党と環境みどりの党政権が、対立する2党からの支持を得ることを意味している。

1月13日

週明け、4つの政党の理事会が取引があったことを認める。しかし、4党からの支持が得られたとしても、自由党の28人の議員からの支持、また投票の棄権がなければ国会では承認されない。

1月14日

左党の党首Jonas Sjöstedt は、「状況が変わらなければ」政権を支持しないことを表明。左党は、4党の取引からは外されており政治的な影響力が排除されていた。議長のAndreas Norlénはこの日、次の首相候補を48時間以内に立てることを要求。

1月16日

4党の取引に対して左党が影響力が下がらなくなること確認した後で、左党は社会民主労働党党首Stefan Löfvenの首相就任を問う投票を棄権することを決定。

これは、左党が社会民主労働党と決別することを意味している訳ではありません。スウェーデンで政権が樹立するためには、国会で過半数の信任がなければいけない訳ではありません。過半数の議員が反対をしなければ良いという基準で、これを「消極的議院内閣制(negative parliamentarianism」と呼びます。この制度があることで少数政党が形成されやすくなっており、これがために首相公選選挙の際に「消極的な支持の表明」としてあえて投票の棄権をして、首相公選を支持する方法があるとのことです。

これにより、社会民主労働党党首Stefan Löfvenが首相として公選で選ばれるためには、反対票が349議席中175議席未満となれば良いことになった。

結果、社会民主労働党党首Stefan Löfvenは、首相になるための十分な支持を得ることが内定したので、議長のAndreas Norlénは彼を首相候補に指名。

1月18日

首相公選当日。投票結果は以下の通り。

 

Stefan Löfvenの首相公選選挙の結果は、

賛成票:社会民主労働党と環境みどりの党から115票

反対票:穏健党とキリスト教民主党とスウェーデン民主党と1名の中央党議員から154票

投票を棄権したのが中央党と自由党と左党の77議員(なのでこれが77票の「棄権票」となる)

よって、首相就任に反対した票数は全体で154票の44.5%で過半数をわったので、消極的議院内閣制のルールに基づき社会民主労働党党首Stefan Löfvenが、首相として選出された。

 


以上、スウェーデンが政権を樹立するまでの過程を振り返ってみました。左派ブロックにこれまで、右派連立だった中央党と自由党が加わり、これまでと同じで社会民主労働党と環境みどりの党との連立政権が続き、左党、中央党、自由党は閣外協力という形をとることとになりました。

これを理解するのも非常に複雑でややこしいですが、現実にこれが起きていたスウェーデンの政界は混迷を極めていたでしょうに…。

赤緑ブロックがのんだ中央党と自由党の政策とは?

対立政党であった、中央党と自由党の政策を赤緑ブロックはのんだわけですが、それにより以下のような変化が起きると予想されています。

・一時的移民にかんする法律を2年間延長
・2018年秋に凍結された航空税を再導入
・新設のアパートの家賃調整の廃止
・スウェーデン国民になるための言語と市民テストの導入

スウェーデンの教育をみているので特に最後のスウェーデン国民となるためのテストの導入は興味深いです。これ、イギリスでシティズンシップ教育が導入された背景と重なるところがあります…。

今後、ここでのんだ政策がいかにスウェーデン社会に影響を与えていくか注視する必要がありそうです。ひとまず、解散総選挙の実施も騒がれていましたが、莫大な税金を使わずしてこのように政権が樹立したことを祝福するとしましょう。

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