スノーデン事件に関心の高いのは若者?

ネットとプライバシー

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前回のエントリー「スノーデン事件に影響を受けた欧州の新たな動き」では、スノーデン事件の世界の、主にヨーロッパにおける状況を整理し、アクティビストやジャーアナリストの主張や議論、方策を整理した。若い世代にとってインターネットは生活から切っても切り離すことができないほど身近なものとなっていることは言うまでもない。

つい先日、スノーデン氏と香港で直接会い、彼の暴露報道を手助けた、アメリカ人ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド氏が発刊した暴露:スノーデンが私に託したファイルで、氏は若い世代とインターネットの関係性について以下のように綴っている。

「特に若い世代の人々に取って、インターネットは生活のごく一部の機能が実行される独立した空間ではない。インターネットはただの郵便局でも電話でもなく、われわれの世界の中心であり、実質的にすべてがおこなわれる場所だ。われわれはそこで友人をつくり、本や映画を選び、政治活動を組織し、最も個人的なデータを作成し、保管する。そして、インターネット上で個人としての人格や自意識を形成し、表現する。」

—グレン・グリーンウォルド

では、この一連のスノーデンの暴露に対して、世界の若者はどのように反応したのだろうか。

ワシントンポストが実施した世論調査によると、アメリカの30歳以上の大人の57%は「スノーデン氏の罪を問うべきだ」としているが、これは30代以下の若者ではわずか35%という数字だ。56%の”若い大人”たちは、氏がNSAの文章を公開したことに対して「正しいことをした」と応えている。

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こちらの別の年齢区分だと、18~39歳の若者は「氏に罪を問うことに反対している」割合は45%で、40~64歳の31%とは開いてるのがわかる。さらに、バズフィードによる記事では、20代よりも10代のほうがよりネット上でのプライバシーに敏感になっているという。昨年と比べてネット上で情報をシェアする回数は減っているといいう。

ヨーロッパではどうだろうか。欧州青少年調査によると、「全人口を対象にした大衆監視プログラムはテロとの戦いのためには正当化されるか」という質問に対して、16歳から27歳の欧州の若者の62.3%が正当化されないと「反対」の意を表した。他の質問でも、59%の若者が、監視が理由でネット上のコミュニケーションを控えることに賛成している。

国による差異

しかし、これには国によって多少の意見の違いがある。スウェーデンとドイツの若者は4分の1以下しか大衆監視のテロ防止目的活用に賛成していないが、ロシアとウクライナでは半数以上の若者が逆に賛成しているのだ。

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また、「新聞やマスメディアが漏洩から得た安全保障上の重要な情報を報じたとき、政府は介入する権利を有するか」という質問に対しては、半数以上のヨーロッパの若者は反対した。

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これもまた国によって濃淡があるが、スウェーデン、ドイツ、オーストリアでは賛成が20%前後であるのに対して、ウクライナとロシアでは7割前後が賛成をしている。この調査を受けてEUの政治家たちは、プライバシー保護の重要性、アメリカとの情報共有の在り方の見直し、欧州市場におけるデータ保護法の整備などを主張した。

実は、欧州委員会 (EC) は内部告発者を保護する法律を昨年の暮れに否決している。これを受け、国際NGO Transparency International は欧州各国の内部告発者保護に関する法整備の状況を整理した。それによると、ブルガリア、フィンランド、ギリシャ、リトアニア、ポルトガル、スロバキア、スペインの7カ国の規定は「内部告発者保護の観点から非常に限定的」であるとされた。さらにフランスやドイツ、オランダ、ポーランドを含む16カ国の規約は「部分的である」と評価された。包括的に内部告発者を保護する法律を有しているのは、ルクセンブルク、ルーマニア、スロベニアそして英国の4カ国に留まるのみだ。しかし、上述した青少年調査の結果を受けて政治家がコメントしているように、再検討の段階を迎えている。今月に控えるEU選挙の争点になることには間違いないだろう。

ひるがえって日本ではどうだろうか。日本では特定の公務員が国家機密情報を内部告発したら処罰をうける(日本版NSA)「特定秘密保護法案」が昨年暮れに通過した。

安全保障と知る権利に関する国際ルール「ツワネ原則」(2013)の策定に深く関与したハルペリン氏は今月7日、都内で会見し「日本の秘密保護法は国際原則からも逸脱・違反し、米国の同盟国の中でも最悪のものだ」とコメントした。その理由として、「民間人・ジャーナリストに刑事罰が課せられていること。公務員に対しては解雇など行政処分が国際原則であるのに、日本の法律は刑事罰になっていること」「内部告発者の保護も十分でない」と報じられている。

国際的な文脈でも明らかに「真逆」な方向へ向かう日本は、将来、自分が社会の不正を目の前にしたときに、ただ黙っていることしかできないような社会となってしまうのだろうか。そんな社会に私たちは住みたいだろうか。若い世代はどのようにして、自分たちの生活に身近なインターネットや情報に関する政策に関わり、影響を与え、自らの手によって変えていくことができるだろうか。

デジタルネィティブの必読書です。

暴露:スノーデンが私に託したファイル

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