Twitterで古いブログ記事が流れてきて、そういえば今年もやったけど掲載してないと、気づいたので勝手に載せます。静岡県の子ども・若者政策「ふじのくに子ども・若者プラン」 へのパブリックコメントです。締め切り1時間前に書いたので、非常に偏っており包括的な内容ではありませんが、他県などでパブコメを使用としてる方に少しでも参考になればと思い、掲載します。若者傘団体(Youth Umbrella Organization)についても少し触れました。 Googleドキュメントでそのままダウンロードできるのでどうぞご自由にお使いください。
第2期“ふじのくに”子ども・若者プランについてのパブリックコメント
国際交流事業と研修に関して
国際交流事業と青少年指導者及び、青少年と関わる人のための研修事業を融合させた海外視察研修事業の実施。具体的に言うならば例えば、英国やスウェーデンなどの若者政策、若者参画の先進国(ユースワークもシティズンシップ教育も英国が発祥)へ、静岡で青少年と関わる仕事をしている人々全般が参加し、現地の実践の事前調査委、訪問インタビュー、そして静岡への施策への具体的な提言等を含む成果報告会を実施するということである。着想は、内閣府が実施している青少年社会活動コアリーダー育成プログラムや、その他NPOによる取り組み(NPO法人Rights, YEC等が実施)である。これは一部の、海外に興味を持ち、ある程度経済的余裕がある人が参加する形だけの「海外研修」ではなく、実際に青少年と現場で関わっていたり、青少年施策の意思決定に関わる政策決定者、政治家、ひいては子ども若者自身が、現地の取り組みを見聞きし肌で感じ、それを静岡における取り組みへと還元することで、静岡の取り組みを発展させることを目的とする。実施する際には金銭的な負担はできる限り自治体が負担し、子ども・若者の参加はもちろん無料で提供する。また、視察は海外に限定せず国内の取り組みに対しても有効である。さらには、視察先団体や実践家との関係を継続できる仕組みを構築することによって、時には静岡に招いて勉強会を実施したり、静岡の取り組みを紹介することも有効だろう。
若者によるまちづくり・若者会議の支援と地域における若者団体の育成 について
若者によるまちづくりや若者会議の目的は、若者の社会参画を実現し、若者が社会に「影響を与えていける」環境づくりを整備していくことである。スウェーデン若者政策の目標のひとつが「若者が、影響力への実質的なアクセスをもつこと」であるが、これは若者の参画自体を目的にするのではなく、若者の参画の結果、若者が実際的に社会に対して影響力を行使できているかどうかを目標に添えているということである。この状態が実現されない限り、若者は社会を身近なものと感じず、受動的な社会参加(例えば消費活動など)に傾倒してしまうのである。これを踏まえた上で、以下に施策を提言する。
若者によるまちづくり・若者会議の支援
案に盛り込まれている「審議会への若者参加の推進」は、若者意見聴衆のためには重要であるが、しかしこれは若者会議の支援には十分とはいえないだろう。若者会議の目的は、上述したように、若者の社会に対する影響力と高めることである。これを体現するのが、ヨーロッパでは最も一般的な「若者傘団体(Youth Umbrella Organization)」である。これは地域の子ども・若者の利益を代弁する組織であり、多くの地域における若者団体が加盟し、束ねる連合組織である。スウェーデンでいうならば、全国青年協議会(LSU)などが具体例になるだろう。(ここでいう若者団体とは、青少年指導などをやっている団体ではなく、若者自身によって構成されている団体である)加盟できる団体は、若者団体であればよく、種類は問わないために、市民活動やボランティア、政党青年部、NGO、学生団体、生徒会のみならず、文化的活動(祭りやバンドやスポーツなど)を行なう団体も加盟ができる。多様な若者団体を束ねることによって多様な若者の声を集約することができ、小さくなりがちな若者の「声」を拡大して社会に発信し、政治家・政策決定者が意見を聞くカウンターパートナーとなる。このパブリックコメントもこのような若者傘団体を通じれば、若者の声の代表性の問題も多少は軽減され、かつより多くの意見が集まるであろう。ヨーロッパでは多くの若者傘団体があるが日本では、ほぼ存在しないor 存在していてもこのような目的に沿って機能していない。 スウェーデンではLSUの他にも各地域ごとの若者会の全国組織である全国若者会や生徒会の連合である全国生徒会が存在している。また英国では英国若者国会の存在が若者声の代弁を担っている。金沢市では「金沢学生団体総会」を実施し、学生団体を束ねている。 さらに、スウェーデン若者傘団体LSUは政府から若者団体に向けの補助金の予算の配分も行なっている。LSUのメンバーは様々な若者団体の代表者であるためもちろん20代前半である。予算の配分基準は、申請団体の構成員に25歳の若者の割合が多いことである。それは構成員が高齢の若者団体に補助金を落とさないようにしているためである。このようにして、財政的な政策における意思決定を若者自身である若者傘団体に行なってもらうというのも非常に有効である。
地域における若者団体の育成
「地域における若者団体の育成」の目的もこれに沿うならば、すでに盛り込まれている「若者または若者団体の研修会への招聘及び社会的評価」ももちろん重要であるが、多くの若者団体が直面する困難は財政的な面である。財政的理由により活動が継続できないことが多いため、若者団体・学生団体の育成のためにより多くの補助金を支出することを提言する。
その他
ボランティア活動や、青少年活動従事者育成セミナーの参加・履修の証明書の発行。ヨーロッパでは、Youthpassという証明書がこの役割を担っており、多くの若者支援・若者団体従事者がこれを利用することにより、就職活動やキャリア構築に役立てている。
両角君 僕のパブコメも上げておくね。 津富
1 子どもの貧困対策について
子どもの貧困対策の推進に関する法律が昨年度成立したにもかかわらず、本プランには、「貧困」の文字が一つもない。同法9条には、「都道府県は、大綱を勘案して、当該都道府県における子どもの貧困対策についての計画(次項において「計画」という。)を定めるよう努めるものとする」とあるので、そこで、別途定めると考えたのかもしれないが、本プランにおいて全く触れないのは不自然と思われる。たとえば、同法7条に定める、子どもの貧困の状況及び子どもの貧困対策の実施の状況の公表は、県をはじめとする地方自治体において行われなければならないと考えるし、また、第10条の学習支援、第11条の生活支援、第12条の保護者の就労支援、第13条の経済的支援、第14条の調査研究についても、本プランに含まれるべきであろう。
また、こうした活動を担う団体を育てていくための支援も必要である。こうした団体は、受益者から利益を発生させることができないために困難を抱えているが、熱意を持って取り組もうという人々も多い。これらの人々の熱意を持続可能なものとするための、応援が必要である。
2 子ども・若者の参加のあり方について
2-1 子ども・若者の実質的な影響力の確保
本プランには、子ども・若者の(社会)参加という表現は多いが、その実質について、さらに踏み込んだ表現で、担保する必要があると考える。たとえば、スウェーデンの若者政策はこの点について明瞭であり、
・若者が、影響力への実質的なアクセスをもつこと
・若者が、福祉への実質的なアクセスをもつこと
の二つの目的を掲げている。しかし、本プランを見ると、「影響(力)」や「実質(的)」といった表現は見受けられない。子どもの参画については、ロジャー・ハートの唱えた「参画のはしご」が、参画の良さを表す指標として用いられており、このはしごにおける、より上位の活動が担保できるよう、本プランでは記述されることが期待される。
2-2 中高生以上の世代の余暇活動への参加支援
第27期静岡県青少年問題協議会は、「若者の社会参加と社会参画~自己を確立し、能動的形成者となるために~」と題する意見具申書を提出したが、同具申書において私は、「若者の居場所の延長として、若者の地域活動への参加を推進すること。つまり、地域を場として、他の若者とともに活動できる場を提供するための、環境整備を行うこと」を提言した。ここでいう居場所は、友人などと時間を過ごす私的な場所であり、地域活動は、その延長上として展開されるという構想である。
具体的には、東京などを中心に展開されている、中高生世代向けの児童館(ユースセンター)や、若者エンパワメント委員会(YEC)の行っている放課後プロジェクトなどが参考になると思われるが、こうした、敷居が低く、若者自身の興味から発する地域参加の場を確保することについても触れていただきたい。
ひとまずは、空き家や空き店舗などを活用した、小さな拠点を、若者団体の運営に任せて、中高生向けの居場所を展開させてみるのがよいと思われる。実例としては、大学生中心のNPO法人「せたがやっこ参画推進パートナーズ(通称せたさん)」が運営を担う、東京都世田谷区の烏山中高生世代応援スペース「オルパ」がある。
3 キャリア教育の推進について
キャリア教育については、本プランに、ローカル人材を育てるという視点が盛り込まれることが望ましい。本プランが、静岡県のプランであるということももちろん理由ではあるが、より重要な理由は、県内の中高生、大学生の大半は、その後のキャリアを県内で送るからである。
本県は、先般報道されたとおり、人口減少が全国二位に達するというニュースにも明らかなように、東海・東南海・南海連動型地震による被災の恐れだけでなく、県内製造業の地盤沈下に伴う雇用喪失によって、地域の持続可能性が脅かされる深刻な状況を抱えている。
こうした状況を乗り切るための、ローカルな人材育成を本格的に行わない限り、本県の未来はない。地域課題の把握、地域における資源の掘り起こし、コミュニティビジネス、地域福祉など、地域に有用な人材に必要な内容をパッケージにしたキャリア教育を開発することをぜひともお願いしたい。
4 コミュニティ単位の子ども・若者支援について
本プランにおいては、地域コーディネーターの養成やコミュニティ・スクールの導入が挙げられているが、さらに一歩踏み込み、たとえば、小学校区や中学校区単位で、地域の住民自身が生涯学習や地域ボランティアのための組織を育成していくことが望まれる。こうした生涯学習/ボランティア組織が、住民の自発的活動の受け皿となって、地域の子ども・若者を支えていくことができれば、家族や学校の支えから外れた、しんどい子どもたちに居場所を提供することもできる。
代表例としては、渋谷区内の中学校のPTAのOBが、地域の不登校児童・生徒を支援することからはじまった、ピアサポートネットしぶやがある。子ども会や青年会が弱体化した今、学区単位で、大人が自由に子どもたちにかかわるための「お節介」の仕組みを整備することは、子どもや若者にとっての、セイフティネットとなるであろう。
5 多文化共生事業の推進について
本プランを見ると、多文化共生事業の主たる対象は外国人の子どもたちとなっているが、近隣諸国との関係が緊張しているという報道が相次ぎ、過度に自国中心的で非協調的な考え方が巷にあふれるようになっている今、実は、多文化共生事業の重要な対象は日本人の子どもたちである。
そもそも、外国にゆかりのある人々の多く住む静岡では、多様性や人権を尊重できる子ども・若者を育てることが強く求められている。すなわち、異なる文化をもつ子どもや若者と、相互理解を深めていくための方法(たとえば、ワークショップ)や、より広くいえば、共生の理念と作法についての学びが求められている。寛容な社会をつくることは、多数派である、日本人の子ども・若者の責務であり、そのための学びの機会の提供が必要である。
6 ひきこもりの支援について
ひきこもりの支援は、現在、障害福祉課が担っているが、ひきこもりの人々の大半は障害をもっておらず、社会適応のつまずきが長期化したものに過ぎない。昨今、ひきこもり支援の取り組みで着目されている、秋田県藤里町の担当者も、ひきこもっている方々に必要なのは、カウンセリングではなく、仕事であり社会的役割であると繰り返し述べている。
そのように考えると、ひきこもりの支援の担当課を見直すことが、より適切な支援につながると考えられる。就労支援を中心に行っている藤里町では、113人のひきこもりのうち、すでに31人が就職し、23人が中間的就労中である。このような成果を生むためには、担当課を見直し、ひきこもりは、障害とは本来無縁であるという哲学にたつ必要がある。
7 若者の起業支援について
静岡の若者が追い詰められている根本の理由は、地域に雇用がないこと、とりわけ、職場適応能力に劣る若者に雇用がないことである。そこで、働きたくてもうまく働けない若者のための、仕事づくりが課題となる。いわゆる社会的経済(社会的包摂のための経済活動)を、静岡に作り出すということである。
たとえば、和歌山県は、起業支援型地域雇用創造事業において、「若者が働き、生きる」地域づくり支援事業(青少年・男女共同参画課提案)を行っている。この事業は、「「ニート」と称される若者達には、特段の疾病や障害はないものの、既存の企業での勤務に適応するのが困難な者が相当数含まれる。そういった若者達を社会的に包摂し、彼らが働き、生きる場を創出することで、同時に地域の活性化や、課題解決等につながる、持続可能な取組を行う」ものである。このような、地域の仕事づくりのための事業を提案したい。
ありがとうございます!ぜひセットで読んでもらいたいです。