スウェーデンへ留学した理由
僕がスウェーデンに留学することになったのは2010年の5月にNPO法人Rightsが実施したスウェーデンスタディツアーに参加したことが直接のきっかけです。子ども若者政策・シティズンシップ教育の充実を掲げる同団体の調査研究の一環として実施したツアーでは、スウェーデンの青年事業庁、学校教育庁、LSU(全国青年協議会)、全国若者会、全国生徒会、学校選挙2010、政党青年部、学校などを訪問しヒアリングを実施してきました。それまではスウェーデンという国がヨーロッパの北にある、ということくらいしかわからなかったのですが、このスタディツアーに参加して「民主主義」という言葉が今までとは違って見えるようになってきました。これをもっと追求したくてスウェーデンにきました。スウェーデンと日本の若者の意識調査のアンケートもこのときにとりました。
以下に、スタディツアーの報告動画と報告書のサマリーとリンクを掲載しましたので、まだご覧いただいていない方はぜひどうぞ。ここで紹介されていることは、すぐには日本には適用できないこともありますが、それでも同じ地球上にこういうことが実現できている国があるということは希望を与え、日本が歩む道への示唆を与えてくれます。民主主義を「実践的にする」ということがわかるはずです。伝えてきましょう。
1.調査の概要
スウェーデンはヨーロッパの若者政策・若者参画政策をリードする国であり、官民で数 多くの先進的な取組を行っている。そこでNPO 法人Rights では、Rights 関係者、研究者、 ジャーナリスト、学生、教師からなる視察団を結成し、2010 年5 月2 日~9 日まで、スウ ェーデンの若者政策・若者参画政策の現状・事例を視察するスタディツアーを実施した。 スタディツアーでは、スウェーデンの若者政策で中心的な役割を果たしている青年事業 庁や学校教育を所管している学校教育庁といった政府機関をはじめとして、生徒会の全国 組織、ユースカウンシルの全国組織、模擬選挙に取り組む団体、若者団体のアンブレラ組 織、政党青年部等を視察した。
2.調査結果のまとめ
(1)「民主主義を体感」する仕組み
スウェーデンでは、民主主義や社会参画を「体感」する仕組みが随所に散りばめられて いる。例えば、学校では生徒会活動や学校民主主義を通じて、意思決定への参画が行なわ れている。また、選挙の際には多くの学校で模擬選挙(学校選挙)や政党の討論会が開催 され、現実の政治について学校の中で学ぶ機会が用意されている。地域においても若者の 声が社会的意思決定過程に反映される仕組みがつくられている。また、政党青年部は若者 の意見を草の根で集約して、政党の政策に反映させる役割を果たしている。同時に、政党 青年部が若者のエンパワメントを行なっている。 こういった多様な仕組みが、スウェーデンの民主主義を支える分厚い層を生み出してい る。
(2)若者の声が反映される仕組み
スウェーデンの若者政策法では、若者に影響を及ぼす政策を実施する際は、若者の声を 聞くことが義務付けられている。また若者側からも、若者団体のアンブレラ組織や政党青 年部など、若者の声を吸い上げる多くの仕組みが存在している。
(3)若者政策の頑健な推進体制
若者政策担当大臣の存在や、青年事業庁による他省庁・地域の若者政策のフォローアッ プ・レビューシステムによって、若者政策のPDCA(Plan‐Do‐Check‐Action)サイクルが 確立されている。また、若者団体の活動に対して、青年事業庁から補助金が拠出されてお 2 り、民間レベルの若者政策・若者参画政策活動のサポートが行なわれている。
(4)人材の流動性の高さと多様なライフコース
スウェーデンでは人材の流動性が非常に高く、社会活動における経験がキャリアとして 認められ、その後のステップアップのきっかけになっている場合が少なくない。 またスウェーデンでは、教育の選択肢が多様であり、成人教育も充実しているため、日 本のように「高校→大学→就職」といった直線的な経路を必ずしもたどらない。多様なラ イフコースの存在も、若者が社会参画活動に関わりやすい土壌を生んでいるものと考えら れる。
3.日本に対する政策提言
今までの日本の若者政策・青少年政策は、青少年の健全育成やスポーツ・文化活動に重 点が置かれてきており、若者の社会参画、自律性、エンプロイアビリティの確保という点 には十分な配慮がなされてこなかった。近年ではようやく、フリーター、ニート、非正規 雇用といった現象が社会問題化していく中で、若者のエンプロイアビリティの確保につい ては一定の施策が行なわれるようになってきたが、未だに若者の社会参画という視点には 十分な目配りがなされていない。 以下で、スウェーデン視察を踏まえて以下のような政策提言をしたい。 第一が世論の盛り上がりである。国民投票法の中に、成人・選挙権年齢を引き下げるた めに必要な法制上の措置を講じることが盛り込まれたが、日本では子ども・若者の参画の 重要性が未だに認識されておらず、成人・選挙権年齢引き下げに対する世論の盛り上がり も欠けている。子ども・若者の参画を国民的な課題としていることがまずは必要である。 第二は若者政策・若者参画政策の推進体制の確立である。若者政策・若者参画政策がカ バーすべき範囲は非常に多岐にわたるため、ひとつの省庁が全ての政策分野を所掌するこ とは不可能である。各分野の若者政策・若者参画政策をフォローアップ・レビューする体 制を確立し、PDCA サイクルを回していくことが求められる。 第三に、行政の中にNPO 等で活動する若者や当事者である若者が活躍する場をつくっ ていくことが必要である。NPO 等で活動する若者や当事者を行政の中で活かしていく仕組 みが必要である。 第四に、国や自治体の審議会に一定の子ども・若者枠(クオータ制)を設けることであ る。現状、子ども・若者政策の議論は「大人」が担っているケースがほとんどだが、当事 者である子ども・若者の声を反映させる仕組みをつくることは非常に重要である。審議会 に子ども・若者枠を設けると共に、子どもや若者の声を聴くことを関係機関のルールとし ていくことが必要である。
報告書のダウンロードは以下からどうぞ
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