以前、秋口に翻訳プロジェクトと称して1人で勝手に翻訳をしていたのですが、そのひとつがお世話になっている教授の助けを得て完了しました。(といってもほぼ全面改訂だったので訳出者は僕本人ではありません。しかし序文で丁寧にご紹介をいただきました。ありがたいです。)
この文章はスウェーデンの若者政策の概要にすぎませんが、それを支える根本的な価値観、欧州各国との違い、そしてスウェーデンならではの若者政策の特徴、がわかりやすく記述されています。 3年前に初めてスウェーデンにきて、感銘をうけこの地に昨年来てから1年が経ちました。この間、いくつかの現場に入ったり、訪問したりインタビューなどをしてきましたが、そこで見聞きしてきたことと、この文章を往復するなかで、ときに一貫性を見いだし「なるほど!」と思うときもあれば、疑問が疑問をよぶときもありました。
スウェーデンと日本の違いをあげれば切りがないのですが、この文献を翻訳してみて最初に思ったのはどこの国でも若者は若者であるし抱える問題も似通っているなということであり、若者にとって必要とされる普遍的価値観というものがなんなのか少しわかったように思えました。 ぜひ多くの方に読んでいただけたらと思います。 以下から序文です。
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若者と若者政策—スウェーデンの視点
静岡県立大学教授 津 富 宏
訳出に当たって 北欧、とりわけ、スウェーデンの若者政策は、ヨーロッパの若者政策をリードしてきた。しかしながら、スウェーデンの若者政策に関する資料は日本語では入手困難で、日本の若者政策に関心をもつ行政担当者や一般市民が、スウェーデンの若者政策について知ることは容易ではなかった。そこで、スウェーデンの若者政策を肝要に解説した本資料『若者と若者政策―スウェーデンの視点-(Youth and Youth Policy – A Swedish Perspetive)』を入手したので利用に供したいというのが訳出の理由である。 なお、現地で、本資料を入手し下訳を行ったのは、2012 年11 月現在、ストックホルム大学子ども若者研究学部に留学している両角達平君(静岡県立大学国際関係学部4 年)である。彼の日ごろからの熱心な活動と本文書を訳出しようとした意欲に謝意を表する。
本資料は、2010 年にスウェーデンとトルコの青少年担当部局の協同作業の一環として、EU 加盟を控えるトルコに対して、若者政策においてヨーロッパを牽引するスウェーデンが、スウェーデンの若者政策の概要を伝えるためにつくられた文書である。二国間の利用を念頭に置いて作られた文書であるため、スウェーデン語ではなく英語で作成されており、訳出が可能となった。 本資料の主たる構成は以下のとおりである。
序文
若者政策の特徴
若者を定義する
人間の一生の一時期と社会的分類
人生の諸時期の変容
若者
状況や必要条件の差異
若者政策とは何を意味するか
若者政策の定義
スウェーデンの若者政策-国際的な視点から-
若者政策の対象
若者は問題なのか資源なのか
一つの政策部門としての若者政策
スウェーデンの若者政策の特徴
スウェーデンの若者政策の誕生
スウェーデンの若者政策の内容
スウェーデンの若者政策の目標と展望
この構成を見てもわかるように、本資料は、若者の定義や若者政策の定義といった根本的なところから解き起こして、スウェーデンの若者政策の特徴を示すという構成になっており、スウェーデンの若者政策を原点から理解するために有用である。 本資料のタイトルでもある、スウェーデンの若者政策の視点とは以下の4 つである。
・資源という視点(The resource perspective)
・権利という視点(The rights perspective)
・自立という視点(The independence perspective)
・多様性という視点(The diversity perspective)
要は、若者は社会の資源であり、若者は良質な福祉を享受し社会影響を与える権利があり、若者は依存から自立への成長を支援される存在であり、最後に、若者は一様ではなく多様な存在であるということである。わが国では、ヨーロッパの若者政策の影響を受けた、子ども・若者育成推進法(平成22年4 月施行)や子ども・若者ビジョン(同年7 月決定)が民主党政権下で立て続けに発表されたが、これらの方針で示された、子ども・若者の社会参加の推進は十分な実現に至っていない。それはなぜか。日本の若者政策はこれら4 つの視点のいずれについても理解が浅いからである。日本の若者政策に根幹的に欠けている四つの視点を指摘している本資料が広く活用され、日本の若者政策を大きく後押しすることを望む。原資料の書誌情報は以下のとおりである。 資料名 Youth and Youth Policy―A Swedish Perspective 著者・発行者 The Swedish National Board for Youth Affairs(スウェーデン青年事業庁) 発行年 2008 年 訳稿を以下に示す。 (続きは以下からダウンロードできます)
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