日本シチズンシップ教育フォーラム(J-CEF)のニュースレターで僕の連載が始まりました。
日本シティズンシップ教育フォーラムとは、地域や社会の変革と創造に参画していく社会デザインの担い手を育む「シティズンシップ(市民)教育」や、関連する様々な教育の実践、研究、政策形成のためのプラットフォームのことで、2013年に設立されました。事業の一環で、会員向けに定期的に機関誌を発行しているのですが、その第12号で連載の依頼をいただいたのでした。
以前は、以下のようにスウェーデンの生徒会を実践事例として寄稿しました。

ニュースレターの内容
今回のラインナップこの通りです。
リレーエッセイ
シチズンシップとは自らが社会を作っているんだという自覚と疑いを持ち、必要であったら変えていく。そのために行動する。
田中光(桜美林大学 牧田ゼミ選挙プロジェクト)
実践事例紹介
こども・若者とよのなか(社会)をつなぎ、シティズンシップ(主権者教育)を育む活動を通じて
/越智大貴(NPO法人 NEXT CONEXION)
新連載「ヨーロッパの動きから考える」
分断社会におけるシティズンシップとは
/両角達平
特集
「シティズンシップ教育を進める上で何を大切にするべきか?」
/斎藤美央(教育ファシリテーター)
/片田孫朝日
英国のシティズンシップ教育が掲げた「英国的価値観」の欺瞞
早速読ませていただきましたが、毎回充実した内容でとても学びになります。
特に、斎藤美央(教育ファシリテーター)さんの特集では、2002年にイギリス(イングランド)の必修科目になったシティズンシップ教育が、2014年の教育改革で「英国的価値観の促進」という政府方針が現場に混乱を招いたこととその矛盾の指摘をしました。そして社会的包摂という視点をシティズンシップ教育に、取り入れるという視点にとても共感しました。
おかしいですよね。「英国的価値観の促進」を掲げながら「生徒は、国の法律と宗教法の違いについて自覚しなければいけない」って、解釈によっては信仰の自由を尊重していないようにもとれますしね。この背景には、テロの脅威、移民・難民のモビリティの拡大があるのでしょうが、教育内容が政治的なイシューを反映させた帰結そのものです。僕自身も2011年にイギリスへシティズンシップ教育の視察にいってましたが、その時よりも一層様相がはっきりしてきたことが伺えます。この文脈は僕の連載ともとてもテーマが似ています。
働きすぎて市民になれていない日本の教員
また、もうひとつの特集である片田さんの「労働者から市民へ 〜教員・大人の自由時間のための社会権の教育を〜」では、日本の昨今の教員の「働きすぎ」問題を指摘しています。「健康を損なわない人間らしい労働」ができていない教員が、なぜ「市民になること」を教えることができるのかという点を、アーレントやマルクスを引用し訴えかけています。
後半の一文がとても重いです。
つまり、市民は望ましい地位であり、人々の希望なのだ。私は、家族が晩御飯を一緒に食べ、大人が自由時間に趣味をしたり、学んだり、活動したりする社会をみたい。それはこの国の夢になりうるのではないだろうか」
先生自身は、8時間労働で帰れている教育現場にいるそうですが、多くの日本の教育現場ではこれが「夢」といっても過言ではないって、どうかしてますよね。
こんなことスウェーデンの教員に話したら泣かれそう…。確かにスウェーデンでも課外活動を教員自身が教えるような学校も増えているようで、以前よりも忙しくなってきていると友人の教員が言っていましたが、それでも週に60時間以上働いている教員が小学校で70%以上ある国とは大違いでしょう。
僕自身、最近は日本は余暇時間があまりにも少ないことが様々な問題に影響を与えているのではないかと薄々感じています。大学で中高生がやりたいことを支援するプロジェクトをやっていましたが、忙しいのは大学生よりも中高生の場合がたいていでした。なぜかというと部活や受験勉強などに時間をとられるからです。
国際的な統計でも、働きすぎが指摘されています。OECDのより「良い暮らし指標」の、ワークライフバランスの項目で日本はランキングで下位に位置しています。
日本は、37カ国中34位。一方、スウェーデンは7位。指標の内訳をみてみると、
「睡眠食事などの個々の生活時間、並びに余暇に充てることができる1日あたりの平均的な時間」という指標では、スウェーデンは15.2時間で9位、日本は14.9時間で17位。こちらはあまり大差がありません。ところが、もうひとつの指標である「一週間あたり50時間以上働いている労働者の割合」では、スウェーデンでは1.1%で3位、日本は約23.1%で下から4位なのです。
この結果から、スウェーデンも日本も1日あたりの余暇時間の平均は同じでも(中央値が気になりますが)、働きすぎている人は日本の方がはるかに多いことになります。特集でも論じていましたが、生徒の最も身近な大人のロールモデルって先生なのに、その先生たち自身が働きすぎって、それ一人の大人としてのいいロールモデルといえるのか。。市民になることを教える前に、まずは大人・教員自身が「健康を損なわない」で十分に余暇を享受している市民になれるように環境を整備していくことが、一層求められているといえそうです。
僕が寄稿した部分を読むには日本シティズンシップ教育フォーラムの会員になる必要があります。ぜひ、社会参加に関わる教育に関心のある方や、活動に共感できる方は会員になってご購読いただければと思います。さー今度は何書こうかな〜!
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