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現代のスウェーデンにおける移民問題について

  • こんにちは。 いつもブログを拝見させていただいています。 私は現在大学2回生で、交換留学生として2週間ほど前からスウェーデン南部の地方都市に来ています。(あえて都市名は伏せさせていただきます) 私の住む大学が提供している学生アパートは大きな団地の一角にあり、周りには学生のみならず地域住民の方々もたくさん生活しておられます。

    その中でも特に私の住む団地には移民の方が多く住まれており、ヒジャブを被った女性やアラビア語圏なまりのスウェーデン語や英語を話される方をよく見かけます。

先日学生アパートが集まる学生棟を1人で歩いているとそこにたむろしていた移民系と思われる17~20歳ぐらいの少年8人ほどが遠くから私に話しかけてきました。 初めは「日本人だろ?空手やってよ」などと薄笑いを浮かべながら尋ねてきたので、すこしその空気に違和感を感じつつも軽く会話をしていたのですが、 その中の一人が「どうして中国人はあんなに黄色いんだ?」と言ってきて、その瞬間に人種差別であることを悟りました。 その時は「ふざけんな」と言ってその場を立ち去りました。 その話を以前からその学生アパートに住んでいる友達に話すと、彼らは頻繁に学生棟で問題を起こしているということがわかりました。

例えばアパートのロビーに花火や石を投げこんだり、アパートの一階に住むうちの大学の生徒がパーティをするために玄関のドアを開けっぱなしにしていると彼らが部屋に乗り込んできて生徒のPCや家財道具を強奪していったりなど、なかなか過激なことをしているようです。

現在スウェーデンでは移民の受け入れについて治安や財政の観点から議論が活発化しています。 私は個人的に、彼らのような移民が上記したような非行に走るのには何かしらの背景・理由があると考えています。(彼らが移民として感じている待遇や生活に対する不満など) また彼らは平日の昼間であっても学生棟のあたりでたむろしており、学校に行っていないのかあるいは行けていないのかも気になります。 もちろん移民としてスウェーデンに来られている方でも人間的に立派な方はたくさんおられますし、決して彼らを単純にディスる気はありません。

その一方で世論や政府として移民受け入れを規制する動きになりつつあることも理解できます。

辰丸さんが2年ほど前に書かれた移民問題に対するブログも拝見させていただきましたが、改めてスウェーデンがこの先移民に対してどのような対応をしていくべきか、また私の挙げた例に対して意見・感想等あればお聞かせ願いたいです。(質問がおおざっぱでごめんなさい笑)

  • ほとけさん

    ご質問ありがとうございます。
    とても根が深く、複雑な問題であると認識しています。

    まず、移民と難民は大きく違うことを認識する必要があるように思います。 「難民」とは、人種、宗教、国籍、政治的意見などの理由で、自国にいると迫害を受けるか、あるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人です。シリア難民などを筆頭に、アフガン難民など人道的な救済によって保護された人たちです。 ドイツでは、2015年に受け入れた難民の数は遂に100万人を超えました。スウェーデンでは、2015年では16万3千人が難民申請をし、34765人が受け入れられました。今年は3万から5千人が難民申請をするとされています。申請過程にある難民は、申請中はスウェーデンにいる権利があるはずなので、潜在的な滞在者数は申請数とさほど変わらないように思います。

    http://www.thelocal.se/20160725/sweden-halves-migration-forecast-for-2016

    http://www.migrationsverket.se/English/About-the-Migration-Agency/Facts-and-statistics-/Facts-on-migration/Facts-on-residence-permit-and-migration.html

    これに対して、「移民」とは、仕事や教育、よりよい生活環境などを求め、国境を越えて定住する人です。 ここには、留学生、海外労働者が含まれます。EUからの移民も含まれます。2015年は、16976人が労働ビザを習得し、9419人が学生ビザを習得しました。2013年時点においては、ほかのEUの国からスウェーデンに移住したEU民は20712人とされていますが、2014年からEU民は移民局への申請が不要になりました。

    また、最近街中で物乞いをしている、ルーマニア出身のロマの人々もこのカテゴリーにはいます。2007年のルーマニア(およびブルガリア)はEU加盟をしたことで、EU域内の労働力移動が自由になったことから、より良い生活環境を求めて、北欧を目指したとされています。

    いずれにせよ、スウェーデンでは人口割合でみた外国の背景を持った人口が他のEU諸国と比べても非常に高いです。そして、難民・移民第二世代の子どもがいかにして社会的に統合していくかということは数十年前から課題でした。「分断社会」という言葉がありますが、戦争などで国や人種、家族、文化が「分断」された人が、スウェーデンというまったく異なる社会に包摂することの困難さに直面しているのが現在であると思います。
    ほとけさんがされた経験はその一端だったように思います。ぼくも人種差別的な発言は嫌という程浴びてきました。

    私が研究対象にしているユースワークは、若者の社会的包摂をその一つの目的にしていますが、万全ではありません。しかし、伝統的な学校やスポーツクラブといった、限られた選択肢よりも若者発の活動を支援できるユースワークは、最善のオルタナティブのようにも思います。ユースセンターで働いていたとき、人種差別的な発言、行動を受けた際に最初はぼくはふさぎこんでいるだけでした。しかし、彼ら彼女らは知らないだけで実は悪気がないこともあると思い、人種差別がなぜポジティブなものではないのか、それからは話すようにしました。
    そのような草の根の対話の積み重ねと、諸悪の根源の中東問題の解決が進行しないといけないように思います。

  • こんにちは。投稿者さんと同じくスウェーデン南部の都市に住んでいるものです。僕は今までストックホルム郊外、現在在住の都市も合わせて8年間、特にさまざまな文化的背景を持つ移民が少なくない地域に居住してきました。いわゆる移民第2世で、他の2世が多い居住地域で育った子供は(サッカー選手のズラタン・イブラヒモヴィッチの自伝にもありますが)、国籍はスウェーデン語、母国語もスウェーデン語でありながら一般スウェーデン社会から切り離された意識、環境の中に閉じ込められてしまうことも多いようで、とくに思春期など多感な時期には一般社会との摩擦も起こってしまうようです。国や自治体も、そういった地域の若者を取り込む活動をしているようですが、なかなかそれだけですべてを解決するのは難しいようです。僕も過去に、市のプロジェクトで移民2世も含むスウェーデン人の10代のグループに日本語を教えたり、移民1世、難民の子供、移民2世、スウェーデン、ノルウェーの10代がNGO主催での音楽やダンスを通してのインテグレーションを目指す合宿活動にも参加しましたが、ここ北欧で生まれ育っても周囲との違いを感じアイデンティティ形成に悩む若者も多いように感じました。それが危ない集団心理に発展してしまうパターンもあることも残念ですが。ただ前向きに考えれば、近所のジムで、ルーマニア系、中国系、北欧系の高校生が仲良くトレーニングしている姿を見たり、文化的背景に関係なくスケートをしている10代の若者を見たり、学校生活の中でさまざまな背景を持つ子供とうまくやっていく術を身につけた若者たちが多くなるにつれて、そういう摩擦も減っていくのではないかという希望も感じます。現在の情勢を見てもそう単純には行かないかもしれませんが、地元の学校や職場などのミクロなレベルでは文化的背景などの違いを受け入れ、共通の興味でつながっていくことで投稿者さんが経験されたような不快な経験が減っていけば一番ですね。

  • 具体的なデータを基に的確に回答いただいてありがとうございます。 非常に参考になりました!

    わわたしも身近なところから先入観をなくして難民の方々と接していきたいと思います。

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