スウェーデン人研究者が語る、若者参加と大人の規範意識

絶賛、風邪ひいていますタツマルです。

先日登壇したイベントの報告を兼ねて、参加できなかった方に向けて、内容をシェアします。

スウェーデン人の研究者によるスウェーデンの事例報告

いつもは、ぼくがスウェーデンの若者参加について話してるイベントばかりですが、今回はなんとスウェーデン人の若者参加の研究者による登壇です。ヨーテボリ大学に所属するジャネットは、ジェンダー研究のアプローチから若者参加を研究しています。

登壇者:ジャネット (Jeanette Sundhall)
スウェーデン第二の都市、ヨーテボリ在住の学者。研究テーマは「政治の対象としての子ども」。2015年よりヨーテボリ若者協議会を調査している。ヨーテボリ大学で上級講師として文化科学の教鞭を執る。ジェンダー研究で博士号取得。

スウェーデンの若者協議会(SR)を研究対象にしていたので、日本の若者団体を研究でインタビューしたいということだったので、数団体紹介したのでした。ジャネットが僕のことを知ったのは、知り合いの日本人からの紹介だったようです。(ブログでもみたのかな?)

紹介した団体のうちのひとつが、日本若者協議会という若者団体だったのです。

日本若者協議会とは?

「若者の意見を政策に反映させる団体」として各政党との政策協議、政策提言を行っている団体。具体的には、被選挙権の引き下げや供託金の引き下げ、審議会での若者比率の上昇、若者担当大臣/子ども・若者省の設置、などを提言。参院選では、主要政党の公約に載せることに成功している。 http://youthconference.jp/

そしたら、せっかくはるばるスウェーデンから来たので話してもらおうということになり、このイベントが実現しました。

左が僕で、右がジャネット

まず僕から、スウェーデンの若者政策と若者参加の全体像をプレゼンしました。

スライドはこちらになります。

その後、ジャネットが研究しているヨーテボリの若者協議会の具体的事例について報告していただきました。単なる報告ではなく、彼女の研究アプローチによる分析も織り交ぜた報告となりました。

スウェーデンの若者協議会については以下の記事を参考にしてください。

若者はどうすれば政治に影響をあたえることができるのか?スウェーデンの「若者会」の代表に聞いてみた
これまで、様々なスウェーデンの若者関連の団体に訪問してきましたが、 その中でも、とくに再訪したい団体がありました。 スウェー...

それでは以下から、ジャネットによるスウェーデンの若者協議会の報告です。英語のスライドと、報告内容を日本語にしたものを一緒にまとめました。

それでは、どーぞ。

まず初めに私が、子ども・若者を研究の対象として関心を持った経緯について話します。

長い間、子ども・若者が大人の従属的な位置づけにあるという「権力関係」に着目した領域は、ジェンダー研究の領域にはありませんでした。そこで私は、ジェンダー・フェミニスト研究の理論の多くが、「従属グループ」という考え方に関連があることに興味を持ち始めました。

例えばこれから話すことは、スウェーデン社会において大人の規範がどのようにして中和されるのかが観察できるいい事例です。

ヨーテボリは、人口50万人ほどのスウェーデン第2の都市です。

貧困層、移民や、難民などが、都市の特定の場所に住む「隔離された街」として知られています。

ヨーテボリ若者協議会とは?

こちらが、私が研究対象にしているヨーテボリ若者協議会です。

ヨーテボリ若者協議会は、ヨーテボリ中にいる101人の若者からなります。12~17歳の若者が参加しており、若者協議会自体は2004年に始まりました。

ホームページには、ヨーテボリ若者協議会は「家族のようなもの」と書いてあります。

また、

  • 創造的で、全ての人が平等に扱われることを信じます
  • 若者協議会の活動は、政治家と対話をし、若者のために社会に影響を与えることです
  • 議論される内容を決めるのは若者自身です。若者は、理事会、会社、自治体に影響を与えることができます

とも書いてあります。

「ヨーテボリの政治家に、提言・質問・意見具申ができます」とも書いてあります。

若者協議会の(理事会の)選挙は、毎年11月にネット上で開催されます。

学校も選挙についての情報を生徒に提供します。

年に5回の大会議を開き、小規模な会議は毎週あります。

若者協議会には、5つの委員会があります。

1. 学校委員会 – 学校の課題について検討

2. 人道委員会 –  統合・人権・安全・いじめ対策について。難民支援もおこなう

3. 文化・余暇委員会 – あらゆる若者に、楽しくて意義のある余暇の時間と、文化を享受する権利を提供する。夏休み中の仕事、お祭りやイベントに参加できる権利についても扱う。

4. 都市委員会 -都市開発・環境問題・若者にとって良好な交通について

5. 活性化委員会 – 若者協議会の活動の質を高め、若者協議会の活動をヨーテボリの若者に知ってもらう。生徒会やそのほかの若者協議会と協働することは、民主主義の機能を高めるために重要である。

若者協議会が達成してきたこと

若者協議会にとって、重要なことは政治家との対話と、諮問会議(refferal work)です。諮問会議とは、若者協議会が特定の課題について意見を聞かれる会議です。例えば、若者協議会の大きな関心ごとである、地方選挙の16歳選挙権の提案や、公共交通機関などが議題として上がります。

公共交通機関をヨーテボリ若者協議会が、全ての若者が無償で利用できるようにするべきとしているのは、統合と正義の問題だからです。子ども・若者は保護者に(経済的に)依存する必要はないのです。

若者協議会のメンバーはこう主張します。

大人は自分の人生を自由にできているが、子どもは経済的に(不利)に生まれ合わせるので、経済状況に影響を与えることが大人ほどない。故に、若者は街や学校に「閉じ込められる」のです。だから自由に移動ができるといいのです。

現在、ヨーテボリ若者協議会は、安全でアクセスの良い新たな交通手段の計画に参画しようとしています。すべての学校の近くにバスや路面電車があるべきなのです。

他にも以下のことをこれまでヨーテボリ若者協議会は達成しました。夏休みカード(The summer holiday cards)の導入と、平日19時から22時まで若者の公共交通機関の無償利用です。夏休みカードとは、12歳から17歳の生徒が、夏休み期間中に街全体のバスや路面電車を自由に利用できることを許可したカードです。しかし、これがもともと若者協議会の発案であったことは、カードにもバス停にも、どこにも表示されていませんでした。政治家と行政職員に問いただしても、明確な回答は得られませんでした。

もう一つが、「ウォーター・スライドプロジェクト」です。

2015年夏、若者協議会は毎夏に開催されるヨーテボリ文化祭で、140メートルのウォーター・スライドを借りようとしました。

ウォータースライドの目的は、ヨーテボリの全ての子どもと若者が出会う場となり、統合を促進し、若者協議会の活動を広めるためでした。しかし、このウォーター・スライドのレンタル料は安くはありませんでした。若者協議会は毎年、30万クローナ(=約350万円) を様々な活動に使うことができるのですが、ウォーター・スライドはこの半分の額におよぶものでした。若者協議会には決まりがあり、約12万円以上の出費がある場合は、自治体からの許可を得なければいけません。

大人の規範意識

ヨーテボリ自治体はこれを議題にあげました。そこに参加していた、3つの政党の政治家は以下のように回答しました。

多くの大人にとって「奇妙な」優先事項ですね。しかし、若者協議会のアイディアは、大人の決定事項と同じではないという視点は固持されなければなりません。<中略> 最後になりますが、年齢の上限を設けないことによって、大人もウォーター・スライドを試すことができればいいなと思っています。

そのほかの3政党の政治家はこう答えました。

まずはじめに、この提案は予算規模が懸念点です。30万SEK の予算は、5人の労働者が一年間で払う税金と同じです。この税金には、多大なる労働時間が割かれており、若者協議会はこの額を自由に使うことができます。

さて今、若者協議会が望んでいることはこの額の半分をウォーター・スライドに使うことです。

ここに、大人の政治家の若い政治家の考え方への理解に、大きな違いが現れています。

前者の政治家の意見では、大人の政治家は「大人の規範」を意識しています。年齢制限を設けないことを提案したとき、彼らは大人の規範を可視化し、からかってすらいます。

後者の政治家からの回答には冗談もユーモアもありません。「5人の労働者」を具体例として引き合いに出していますが、この労働者が子どもではありえないという事についてわざわざ触れようとしないのです。なぜなら、子どもは働くことが許されていないので、税金を払うことができないことが、明らかだからです。ですので、彼らの発言は「見えざる大人の規範意識」からきています。このような、見えざる規範意識が、大人の子ども・若者への「支配」を許しているのです。

しかし、最終的には自治体はウォータースライドを許可して、イベントは大成功に終わりました。ヨーテボリ中の大人と子どもが楽しみ、メディアからも大きな注目を集めました。


以上になります。

まとめ

こちらの記事にもありますが、若者協議会というのは、自治体や国から補助金をもらって活動をしている若者団体です。その目的は、若者の社会的な影響力を高めることですが、主に行政への若者の影響力を高めることを目的にしています。自治体の政策に、若者の視点を入れるように要求したり、逆に行政から若者協議会に意見を聞きにいくこともあります。

ちなみに若者協議会を自治体が設置することは義務ではありません。

若者協議会が実際に達成したことは、これまであまり聞いたことがなかったのでそういう意味でとても興味深い報告でした。議題にかけられて、実際に政治家が議論するところまで影響力があるのはとてもスウェーデンらしいです。しかし、そこで議論されていることは必ずしも、全てが若者協議会をサポートする声ではないということも新鮮でした。

「見かけだけの参加」になっていない大きな理由は、補助金をこのような団体につけており、若者の影響力を高めることへのコンセンサスがある程度あるからです。しかし、すべての補助金を自由に使っていいというわけではなく、上限がありそれ以上は市の議題にかけることになっているのは、いい仕組みです。

詳細の報告については、日本若者協議会が後日アップしてくれることを待ちましょう。

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