若者が主導で余暇活動施設(ユースセンター)をつくる方法。スウェーデンの事例

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スウェーデンの若者政策が世界的に進歩的であることを別のエントリーで書いてきましが、それは何も国レベルの政策だけに限りません。現場でもしっかり機能しています。

今回は、ストックホルムの郊外にある若者向けの余暇活動施設を訪問してインタビューをしてきました。この余暇活動施設は、日本でいうなら中・高生世代向けの「児童館」といえます。スウェーデンではこれが地域にうじゃうじゃあるのです。

訪問したのは、ストックホルム南のハールホルメン区にある「もうひとつの家- 若者の家(Andra Hemmet : Ungdom hus i Skärlholmen) です。この施設は、「若者参加の先進事例」として評価を受けているのですが、では一体何がそんなに先進的なのでしょうか。

(以下に箇条書きのノートとインタビュー録を記します。※出典を明記していただければこちらの記事はシェアしていただいても構いません)

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概要

  • Andra Hemmet : Ungdom hus i Skärlholmenというのは、Another House : Young house in Skärlholmenという英訳になり、若者にとっての「第二の家」という意味。この地域の若者の余暇活動をするためのMeeting Placeとなっている。
  • ストックホルム南のSkärlholmen(ハールホルメン)という自治体に位置しているこの地区(Vårberg, Sätra, Bredängを含む)最大のユースセンター。IKEAがすぐ近くにある。
  • 33000人の住人のうち48%がスウェーデン国外の出身で、70の異なる言語が混じり合うほどの移民が多い地域。うち19歳以下の若者は26%。
  • Skärlholmen自治体は、社会福祉課、子ども若者・余暇活動課、高齢者・障碍者課、地域サービス課、行政課の5つの部門に別れており、このユースセンターは子ども若者・余暇活動課に属し、自治体から全面的に資金が出ている。Fryshusetは民間のNGOであり私立学校であるのでこの点が大きく異なる。

施設

  • スポーツ、イベントができるホール
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  • 音楽のレコーディングが出来るスタジオ。バンドの練習ができるスタジオも別にあり。

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  • 巨大な鏡があるダンスホール
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  • カフェラウンジ
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  • ロビー
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  • Xboxルーム。ゲームできる部屋。
  • クリエーションルーム。ミーティングしたり、イベントのときに仕度したりする部屋。

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そしてオフィスの壁です。これまでやったイベント貼りまくりです。

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対象と開館時間

  • 基本的には12~19歳の若者を対象にした施設。スウェーデンのユースポリシーによると13~16歳対象は”ユースクラブ”・”レクレーションセンター”という呼称で、15~20歳対象は、”ユースセンター”・”アクティビティセンター”・”カルチャーセンター”という呼称になっているのでこの施設は複合型の施設ということになる。
  • そのため、他のセンターよりも多様な層が来るため開館時間も年齢や性別によって多様に設定。基本的には17時から22時までだが、12~15歳の若者は月曜日と土曜日は17時から20時まで、水曜日は12~19歳の女の子の日で、18時から21時までという設定。

センターに来る若者はどのように参画しているのか?

若者とユースワーカーによる協同でのセンターの設立

  • このセンターは5年前までは腐敗した警察が利用していた施設だった。さかのぼることさらにその2年前、スザーナ(館長)がこの地に来て働き始めた時、ほとんどの自治体の仕事の対象が大人に向けられたものであり、そのことに疑問を感じ、この地区の長にそのことをぶつけたところ、許可がおり、若者向けのプロジェクトを始めることになった。
  • 実際にその後、この地域の住人を集めて対話集会を開いて、最も関心のある問題は何かを聞いたところ、ほとんどの人が若者のことを大変恐れていることが明らかになった。そして若者を巻き込んで若者のためのセンターを作ることになった。(この発想はまさにスウェーデンのユースポリシーの特徴と言えそうです。)
  • スザーナはまず始めにスタートアップを手伝ってくれる他のユースワーカーを集め、その後、若者がいる場所に出向いて一緒に働いてくれる若者を募った。このときの目標人数は15人だったが、最終的には100人を超す若者が集まってしまった。人数が多かったので小さいことなるグループにわけてプロジェクトを進めることにした。
  • その中の10人の若者とこの荒れた施設を下見にいくことになった。若者達は最初は自分たちがセンターをたてるということに半信半疑で、「ちょっと見にくるだけでいいから、いつでも帰っていいから」とお願いして、なんとか下見にきてもらった。腐敗したセンターを実際に目の当たりにするやいなや、「もし自分がこの建物を変えれるなら、あなたの右腕になるよ!」と言った。さらに腐敗した施設の奥まで入り、全て見終わって出てくるやいなや「もし自分がこの建物を変えれるなら、あなたの左腕にもなってみせる!」と言った。こうしてプロジェクトは始まった。
  • 若者と働く大人にとって若者は何ができるのかを見極めることが大事。また、若者自身が参加を望んでおり、若者自身ができると信じて、他の人たちを感じれるようにすること、がスタートアップではとくに重要。
  • 最終的には1年半でこの施設以外にも3つのセンターを設立。センター設置後も参加の仕掛けは続く。
  • センターに来る若者を想定してグループを作り、どのように若者に働きかけるかということを若者達に議論してもらった。例えば、イベントホールを使うであろうスポーツをしにくる若者達にとって、どのような施設の内装にしたらいいかというのを話し合うのではなく、この若者達にどのように自分たちは働きかけることができるかというのを話し合ってもらった。
運営委員会、グループ
  • 以上の流れを受けてできたのが、各センターごとの運営委員会やグループ。もちろん全てセンターを利用する若者から成る。
  • イベントグループ: サッカートーナメント、パーティーなどのイベントの実行をるグループ。
  • ピラ・ダンサーズ:12~19歳の若者にダンスのトレーニング、レッスンの機会を提供する。
  • 127 Play Entertainment : 余暇活動、音楽イベントなどの企画のスタートアップを手伝うグループ。
  • 日曜日チーム:障害を持った若者への働きかけをする。
  • ショーチーム: イベントを企画する際に、他のユースセンターや大学、フォルクという市民学校とのコラボレーションをマネージするチーム。
  • YOUNG PARENTS: 子育てを協同でやったり、ベビーシッターを提供するチーム。
  • センター運営委員会(Board) : センターの運営をするグループ。一ヶ月に一回の定期的な会議で予算や、イベント、設備などセンターの若者に関する全てのことの意思決定を行う。
スタッフによる参加の促進
  • Andra Hemmetには今現在12人のユースワーカーが務める。
  • DEMOKRATISLAGETという本をスザーナとこのセンターのワーカーで出版し、若者参画を行う上でのエッセンスなどを共有している。この本では新たな方法論を提示しており、どのようにしてワーカーは若者から学ぶことが出来るのかというのを記述している。ここにもスウェーデンのユースポリシーの目標と4つのポイントについて触れられていました。
若者の提案とその行方
  • 運営委員会のメンバーはセンターに来る若者達によって選挙によって選ばれ、今期は5人が運委員会のメンバー。この会議で、ボードゲームや、テレビゲーム、イベント、諸々のスケジュールそして、それぞれの上述したグループへの予算配分をおこなう。
  • 会議でもしアイディアが出たら、全て書き出してその場でそれをやりたいかどうか、やりたい人がいるかどうかを若者に聞く。もし誰も賛成しなかったら、アイディアを保留しておき、運営会議以外の場で若者達に聞き続け、可能性を探る。
  • またアイディアについて議論の余地があってすぐに決めることができなかったとき、後日、確実にフィードバックをすることが大事。予算の関係でできなくなったとしてもそういったアナウンスを確実に伝えることが大事。もし若者がせっかく出したアイディアがフィードバックをもらえずほって置かれたら、声を聞いてもらえていないと感じるし、聞くふりをしているだけだと感じてしまうことになってしまうから。ときには代替案を示すこともある。
  • また会議でアイディアをすくいあげるだけでなく、日誌で若者のアイディアを拾い上げる試みもある。ワーカー同士での仕事に関することを共有する日誌だけでなく、若者からでてきたアイディアをその進捗状況を記述する枠が日誌の中にある。(下図参照)
スライド1
  • 左からどんなアイディアが出たのか、誰が提案したのか、締め切り期限、と別れており、緑色の枠は現在進行形のアイディア、黄色はこれから始まるアイディア、赤は議論の余地があったりキャンセルされたアイディアを示す。(この図はワーカーからいただいた資料の本の一部。プライバシー保護のため名前は削除しています。)肯定的なコメントを載せる”Positive feedback”欄もある。
  • もともとはこのように構造化された形式ではなかったが、今年からこのように構造化した。
運営委員会のコンペ大会
  • Skarlholemにある5つのユースセンター間での行われる、運営委員会同士のコンペ大会も若者の参画を促す取り組み。
  • 競争はポイント制で行われる。会期が終了するときに(運営委員会メンバーの任期である1年間ごと)、最もポイントを稼いでいた運営委員会が勝ち。順位に応じて報償があり、昨年優勝した運営委員会はブリュッセルにいきEU議会に参加した。2位以下はスウェーデン内の地方のセンターへ交流プログラムへ。
  • ポイントは様々な方法で稼ぐことが出来る。イベントでの来場者数や、効率的なミーティングのやり方、メモのとりかたなどをワーカーが評価して、ポイントを与える。
  • 他にもミッションを解決して稼ぐことも出来る。このミッションはワーカーから課される。例えば、人種差別問題についての新聞記事を書いてもらい、プレスリリースし、採用された記事の運営委員会はポイントをゲットする。
  • このコンペの目的は、より多くの若者を巻き込むことと、運営委員会の質の向上。
  • しかし最近、このコンペ大会は廃止された。理由は、運営委員会の若者達の活動の動機がポイント稼ぎになってきかねないこと、センター設立当初よりも運営委員会が定着してきてポイント制によるインテンシブを与える必要がなくなってきたこと、運営委員会のメンバーだけしかこのコンペに参加できないこと、などがあげられる。
  • このコンペに関しての若者の意見
  • Gabriela Yosef (18歳, かつて運営委員会に所属。現在このセンターでバイト中) ※本名公開許可習得済み

“Now there are other things to do so if they know that they are going to win, something may be they won’t like a „I don’t want to go meeting I stayed home and PlayStation‟ instead. It gives them to a way to do it and it helps them, it helps Andra Hemmet, it makes everyone happy when they want to because I learned lot of being in the board. ”

Isa Muhammed(18歳, 運営委員会の代表と他にもグループの代表を務める)

“I don’t think competition is something. I’m not in the board because it is something like it is an experience and I learned a lot and something fan because I get to be a part of the… this place and I’m now in the board because I want to help this place better and better. So I don’t think it is not about competitions. And it makes me feel like I’m important in this place and I get to decide to certain things like teenagers so it is fan. ”

  • 代替案として現在実施されているコンペは、センター単位でのコンペ。評価基準はあまり変わらないが、今度はセンターに来る全ての若者が参加できるようになった。
スタッフ制度 
  • この春から、運営委員会メンバー経験者のみが申請することができる有償のスタッフ制度を採用することになった。
  • といってもフルタイムではなくパートタイム。毎月第2土曜日だけ運営委員会の会議に来て、会議のサポートをしたり、他のグループの面倒をみたりする。Gabrielaががやっているのもこのバイト。
  • もうひとつがジュニアリーダーとして働く制度。1学期間だけ何かのチームのリーダーになって責任ある立場を経験してもらう。(詳細不明、要調査)最年少は21歳が2人いて、どちらも昔このセンターに通っていた。
  • 目的は、若者と責任を分担することと、ユースワークというのはどういうものかというのを体感してもらうこと。結果的に正規社員として働きたくなった時には、大学にいって学位をとらなければいけないが、そういうきっかけを提供している。
  • 経験者がこのような立場になることで、最も効果的な活動を進めることが出来る。ワーカーよりも彼らのほうがより若者に距離が近いから。

ここの若者は実際にはどのくらい参画できているのか?

「大事なのは、問題をとりあげて予算内で何を買い何をするかを決めるのは運営委員会であり、センターに来ている若者がやりたいことから始めること。もし誰かがここにきて、これこれこういうのをやりたいんだけどと、私のとこに来たら「私は決められません。若者達にあなたがこの話しをしたがっていることを聞いて、許可をもらわないといけません。」と言います。若者民主主義のためには意思決定こそが全てなのです。」(スザーナ)

  • スザーナは、センター内での仕事だけでなく、常に政治家とコンタクトをとりロビー活動をしている。
  • さらに、最近始まったUNG 127というプロジェクトでは18歳のIsaが代表を務め、Skarlholmenを若者にとって住みやすい場所にするための対話の機会の場を作り出している。2011年の春から始まった。おもしろいのは、このUNG127がもともとはクラブ活動などのスタートアップ支援から始まっていること。
  • またIsaはこの機会で政治家にアドバイスをしているとも発言。

”We are lucky, when meeting politicians here area and we are trying to give advice. Talk to the politicians and talk to them change something bigger more like making new youth club. We are trying to big steps. (Isa Muhammed)”

Comment

  1. ゆあさ より:

    仕事で使わせてもらっていいかな?
    こんな資料がいっぱいほしいです!

  2. Tatsumaru Times より:

    もちろんだよ!!!!!
    そのために留学してるようなもんです!!他にも気になることあったらなんでも聞いてくだされ。力になるぞ。

  3. ゆーい より:

    ありがたい( i _ i )
    やはり、若者を巻き込んでセンターをつくった過程がいちばん大事で、だけど日本であまり事例がないんだよねえ

    山崎亮さんの事例もあるけど、あそこは活発な大人を組織化するところから始めるからなあ。

    作りっぱなしで人がこない、という状況にならないようにどのくらいの若者と話し合ったのかな?ここのセンターは。
    とにかく過程の詳細な情報がほしいな

  4. Tatsumaru Times より:

    これ以上のことは聞けてないけど、ちょっと資料とかあるか聞いてみるよ。

  5. Tensta « Tatsumaru Times より:

    […] ミリオンプログラム(Miljonprogrammet)という、戦後の成長期に労働力確保の一環としての移民政策を行った結果、移民がどかっと増え、反動として住宅難が起きた。低賃金で利用できる住宅を大量に設置することを目的に断行されたのがこの住宅政策で、1965年から1975年の間にストックホルムの郊外の至る所に建築された。Skårlhomenもその地域の一つだが、Tenstaと近くのRinkbyは最大規模。 […]

  6. […] ストックホルム南郊外にあるの自治体が運営するユースセンター。ここは街の治安はもともとあまりよくなかったのですが、明らかにそんな空気を感じさせない素晴らしいセンターです。論文を書くためにインタビューをしにいったりして何度か訪れましたが、この視察でよりこの地域の自治体の仕組みや、ワーカーの価値観や意思がより明らかになったように思いました。 […]

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