ドイツの「子どもにやさしいまちづくり」が本気すぎて学べる

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ユニセフの”CFC – 子どもにやさしいまち” という取り組みをご存知だろうか。Child Friendly City (=CFC)、 訳して「子どもにやさしいまち」事業は、96年に開催された国連ハビタットで子どもの権利条約の理念に基づき提唱され発足し、ネットワーク化された。以降、ヨーロッパを中心に世界中で900以上の自治体が参加している。

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ハイデローゼ・ブルックナー博士 | Dr. Heide-Rose Brückner

ひょんなつながりから、日本で最初にCFC事業を開始した川崎市で、子ども・夢パークの取り組みに、長年取り組んでおられる西野博之さんとともに、ある団体を訪問することになった。その団体とは、ベルリンに拠点をおく、ドイツのNGO 「子どもにやさしいまち」(Kinderfreundliche Kommune e.V.) である。(以下、ドイツCFC)

ドイツCFCは、子どもにやさしい”まちづくりを実際に行なっている団体”ではない。ユニセフの提唱する”子どもにやさしいまち”の理念と構想に基づいて、まちづくりを行なっている自治体を認定し表彰する登録協会という形体をとっている。ユニセフドイツとドイツ子ども支援協会が母体となり、経費を出資してもらい提言を受けながら事業を実施している。2012年の時点でドイツ国内で、6つの自治体が参加している。

インタビューに応えていただいたのは、当事業を主導しているハイデローゼ博士(社会教育福祉学)と、都市計画プランナーのスザンネさんだ。2年前に現在のオフィスに引っ越してきて、三人で仕事をまわしている。

ボードゲームからは始まる子ども・若者のまちづくり

子ども・若者のためのまちづくりというと、ペンキ塗りや街中探検を思い浮かべがちかもしれないが、ドイツCFCの取り組みはおもしろい。子ども・若者がどのようにまちづくりに参加していくのか聞いた。

ハイデローゼ : “若者がまちづくりにこういうのがあったらいいな、というアイディアを出せる特別な町づくりゲームを若者と一緒に考えた。ボードゲームの内容は、とあるドイツの街をモデルにし、旧市街、田園都市、産業地帯、新市街などにわかれたボードの上で行われる。これにより街の中にどのような区域があるのかがわかる。プレーヤーは粘度でアイディアをつくる。例えば図書館など。それをどこに置くか(建設するか)議論する。「旧市街には図書館はたくさんあるだろうからいらない」といった具合に。” 

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ボードゲームで「どんな町をつくりたいか」考える

 “その後、他のプレーヤーが遊びにいくことができる。そしたらそれを他の人に伝達し、そしてマーケティングにつなげる。自分のアイディアの良さを売り込む力につながる。一番美しい建物、最高のアイディア、チームワーク、ネットワークという基準で最後に全プレーヤーで評価をする。出来るだけ多くの投票を集めることを目指してゲームを進める。

“自分の考えたアイディアの何がいいのか考えて、それを聞いて、やりとりをする中でそれが子どもの中に残っていく。手順はまず若者だけで、その後大人もまじる。若者と一緒に開発した CFCの三つの都市に配った。時間がかかるものなので簡易版をつくって他の自治体に配ろうとしている。6つのモデル都市があり、各都市でこれをつくる。”

なるほど、人生ゲーム感覚でまちづくりを楽しみながらできるのは、子ども・若者でもとっつきやすい。ポイントは「ゲームだけで終わらせないことだ」とハイデローゼ博士は語る。「この結果を行政政治サイドに報告して、子どもたちに対して返答してもらう」というのだ。その報告と仕組みはどのようになっているのだろうか。どのようにして行政との連帯を始めるのだろうか。

ハイデローゼ : “CFCとして認めてもらうためには自治体はやらなければいけないことがある。自治体が最初にやることは、子どもたちの生活環境をとりまく細かい調査シートの記入である。自治体側は数字を必要とするときに、どのような基準に基づけばいいかわからない。そのようなデータもそもそももっていない。しかし、このプロセスを通じて、子どもの実体を把握してないことが明らかになる。子どもが何人いるか、子どもの貧困率、事故、自治体の行政に子ども部門はあるか、窓口はあるのか、自治体に子どもの権利条例はあるのか、どういった場面でどのようにして子どもは参加できるのか、ただ情報をもらってるだけでなく意思決定に関わっているかどうか、学校、保育施設、公園があるのか、余暇施設はあるのか、子どもに優しい住環境はあるのか、車が通らない道はあるのか、環境、騒音、ユニセフとどのように連携しているか、など述べ146の質問項目を行政に問いただす”

146項目ってすごい数。つまり、子どもにやさしいまちとして認定されるためには、これらの146の質問項目を満たさなければなれないということなのだ。 さらに審査はこれだけに留まらない。

“まちづくりゲームだけでなく、様々な参画の機会を用意することも求められる。どのような町になってほしいかを考えるワークショップや、子どもの目線でみた町の調査もする。他にも、子どもアンケートというのがあり、10 – 12歳の1割に必ず参加してもらわなければならない。アンケートの質問項目は、例えば、 「学校はどうですか?先生はどうですか?」 といったことを聞く。有識者専門委員会がこのアンケートの検証結果を町に伝えるだけでなく、現場調査を行い、CFCの価値を伝え、妥当性を検証し、その後、町の行動計画を作って策定する。最近では、フランクフルトの近くのハーナウ市が一番最初の自治体として行動計画を策定し、有識者専門委員会が検証しOKだったので、初めてこのロゴを称号として渡すことになった。”

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ドイツで初めての「子どもにやさしいまち」として認定されたハナウ市への認定式 – 2014年6月4日

実は、ちょうどこのインタビューをした次の日に、このハーナウ市へのドイツ初となるCFCの贈呈式があったのだ。なんたる偶然。お忙しい中にも関わらず、時間を割いていただいたのがありがたい。この認定までに2年の歳月が費やされたというのだが、なぜそこまで認定されるのに時間がかかるのだろうか。

自治体への徹底的なプレッシャー

ハイデローゼ : “CFCプロセスに申請してもらうには申請書を作成するにあたって、自治体に義務が生じる。市長になぜ参加したいのか、このような子どもにやさしい取り組みをしたのかを書いてもらうことになっている。さらに、CFCに参加するためにまず市議会で可決されなければならない。必要経費を市が必ず拠出し、行政・市議会の中で部署を超えたワーキンググループをつくることまで求められる。”

さらなる詳細を、行動計画検証のための書類をつかって具体的に説明してもらった。

“この行動計画は市議会で全会一致で採択されなければならない。市議会はまず最初にCFC登録にむけての準備をすること全会一致で可決し、その後行動計画を採択しそれが4年間有効になる。行動計画の内容がここにひとつづつ書いてある。例えば「市役所の職員は、子どものに優しい行政というテーマそれから子どもの権利に関しての研修を受けて認識を持つ」といった行動計画である。”

この他にも、参加のためのガイドラインの策定、質の保証でスタンダードを作成すること、自治体の児童・生徒達が子どもの権利を知っていること、小学校年齢の子どもたちが参画できるような制度ができていること、という幅広くかつ具体的な行動指標を設定することになっているというのだ。これらの計画は、4年に一度更新されるという。

つまるところ、認定はこれからの先のことに対する認定であり、結果の認定ではないということだいう。受賞が決まったハナウ市はこれらのプロセスを全て完遂したということだ。

そこからさらに自治体の職員への研修まで落とし込まれる徹底ぶりだ。

ハイデローゼ : “全行政職員に対して情報提供の一部として、「子どもの権利条約及びそれに追随する法的拘束力のある行政施策に対する法的な影響」についての研修をしなければならない。子どもの権利条約は国際法にあたる。それに抵触しているところ(職員や自治体)が非常に多い。それを市の職員が自覚するためにやる。”

努力義務だが「子どもの参画のプロセスをするファシリテーターの養成」もこの行動計画に盛り込まれるという。職員が労働契約をするときにその職務に、「子どもの権利条約を法的基盤とすること」という文言を加えようとしたが、それはやり過ぎだといわれた削除した、というエピソードからも、その本気度がうかがえる。

子どもにやさしいまち アジアパシフィックネットワーク日本支部によると、日本でも28都道府県、71市町村区において「子どもの権利に関する条例」が制定されている。様々な子ども・若者を対象にしたNPOや自治体の取り組みが日本でも存在するが、子どもの権利の必要性を叫ぶのみならず、その理念を具現化を進めるために、ドイツCFCから学ぶべき点は多い。

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  1. […] 参考 両角達平 『ドイツの「子どもにやさしいまちづくり」が本気すぎて学べる』 […]

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