スノーデンの内部告発事件に影響をうけたヨーロッパの新たな動向

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今世紀で最大の発明の携帯電話とインターネットは今や監視装置へと変貌した

—ミッコ・フッポネン  (re:publica キーノートスピーカー)

ヨーロッパ最大のソーシャルメディアの祭典、リパブリカ “re:publica” に参加してきた。

re:publicaとは?

このイベントは、社会活動家(Activist)や、コーダー(プログラミングなどに携わる人)、ビジネスマン、団体代表者、その他多くのクリエイティブな背景を持つ人々が一堂に会す、まさに「異種混合」のイベントだ。国際的な「社会派」ギークの祭典ともいえるだろう。2007年に始まった当初は、ブロガーのオフ会的な交流の場だったものが、昨年は30ヶ国からの450人のスピーカーがステージに立ち、2014年には世界中から5000人近くのゲストを招待するほどの規模になった。

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扱うテーマも幅広く、政治、経済、科学、文化そして社会を、ソーシャルメディア・デジタルと掛け合せ、常に「時の”デジタル”の人」をステージに招いてきた。今年は特に、昨年夏に起きた元CIA職員のエドワード・スノーデンによる内部告発騒動もあったことから、注目を集めている。 特に目玉のステージは、エドワード・スノーデンの亡命や保護に助力した英国人記者サラ・ハリソンだろう。

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エドワード・スノーデンの告発とは?

アメリカ国家安全保障局の陰謀とも言えるショッキングな事実を世界中のメディアに暴露し、その後の西欧諸国間における外交政策にすら大きな影響を与えた一連の事件は、2013年6月6日に米英主要メディアがアメリカ国家安全保障局(NSA)による市民の通話記録やインターネット情報の収集活動について報じたことに端を発した。報道から3日後に暴露者がCIA元職員のエドワード・スノーデン氏であることが発覚した。

氏は「政府がプライバシーやインターネットの自由を破壊するのを許せなかった」として暴露を認めている。その暴露した内容には、特殊なプログラムを使ってネットユーザー(外国人に限るとの報道もあり)のあらゆる情報をGoogleやFacebook、Yahooなどの大手ネット企業から入手していたということ。つまりFacebookのあなたの写真や個人情報、投稿などが税金を払ってる行政機関に筒抜けになっているということ。それを身を切って世に知らしめたスノーデンは、まさにインターネット社会の「ヒーロー」としてして描かれている。CNNのニュースによると、ノーベル賞の候補者にも選出された。

彼の亡命を助けた英国人記者とは?

この事実に対して、米英は情報収集活動の正当性をテロとの戦いに照らし合わせて主張した。NSAの言い訳は、テロ犯罪等の防止のため。スノーデン氏は、もちろんアメリカ政府を裏切ることになったので、身を海外に移して告発を発表。最初は香港に身を潜め、今は、ロシアに亡命している。その際に彼の亡命を助け、付添人を務めたのが英国人記者のが、サラ・ハリソン。サラ自身も、スノーデンに関わったからという理由からなのか、弁護団からイギリスへの帰国は「安全ではない」との序言を受けて、ドイツに入国したというわけだ。(ガーディアンによるとドイツはこの5月にスノーデン氏を連邦議会にNSAの情報監視プログラムの証言のために招待しようとしていたが、メルケル首相の訪米を前にボツになってしまった。)

そんな訳もあり、ドイツに避難をしてきたサラこそまさに、今の「監視国家社会」におけるプライバシー保護、内部告発の正当性、ひいては報道・表現の自由について戦うまさにフロントランナーなのだ。

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浮上した新たな論点

スノーデン事件の影響は、アメリカを初めとする西欧諸国では特に大きい。 この点は、サラ自身も、NSAのスパイ能力の「質」と「規模」の大きさの危険性を指摘した。アメリカでは暴露直後から、”Big Brother is Watching You” という言葉で知られている全体主義の恐ろしさを描いたジョージ・オーウェルの小説「1984年」の売り上げが上昇し、Duck Duck Go という検索情報を匿名化する検索エンジンが注目されたりと、ネット会社経由の「国家による監視」を懸念する行動が激増した。

当イベントの二日目の、ディビット・ハッセルホーフ(アメリカの俳優)のセッションで共にキーノートを務めたフィンランド人のミッコは、

“We don’t lie to the internet. When we use search engine, we are completely honest and tell the machine what we think. ”

「私たちはインターネットには嘘をつかない。検索エンジンを使うとき、私たちは完全に正直であり、自分たちが考えていることをそのまま機械に伝える」

と、インターネットがいかに私たちの日常に「溶け込みすぎている」のかを指摘した。

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ビジネスへの影響も大きい。インドの選挙管理委員会は、Googleからの投票者の登録支援を止めたり、関連製品の売り上げが落ちている。これはヨーロッパでも同じだ。Facebookがメッセンジャーアプリ”Whatsapp”を買収したことを受けて多くのドイツでは多くの人が、Whatsappの利用を止めて、Threemaなどの高度な暗号化技術を備えたプライバシー度の高いアプリに乗り移った。 (ちなみの僕のドイツ人とのやりとりはTelegramというアプリ)。

アメリカのみならず、西欧社会全般にこのような多大なる影響を及ぼしている背景には、そもそもインターネットがアメリカを中心に発展し、その質の高さから、アメリカのインターネット会社のサービスに大きく依存することになり、その利用割合は全世界の9割を超えているという。それが故にアメリカのサーバーに全ての情報が集約されことになっている。(別のセッションでは、インターネットの「分権化」についての議論を扱っていた。)ミッコは、この問題を指摘した上で、ヨーロッパを中心にしたプライバシーを尊重するインターネットサーバーの必要性を警告した。

さらに、より個人のプライバシーと報道、表現の自由に配慮をした国際規模での情報政策のマニフェストを作成する運動”#Digitral Freedom“を呼びかけた。

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これは上記のリンク先のホームページから誰でも参加することができ、①大衆の監視、②デジタル社会による迫害(Digital Persecution)、③デジタル植民地化(Digital colonization) 、④アクセス、社会運動、言論の自由、という4つ分野から意見を記入し発信することができるようになっている。世界中から意見を募ったらマニフェストを、EU議会、メルケル首相、オバマ大統領、プーチン、などのあらゆる政治家に届けるという。

この運動が一国に留まらず、国際的な文脈であるのは、スノーデン氏が国を超えて亡命先を探したり、上述したように大陸を超えてアメリカのネットサービスを利用ができるというそもそものインターネットの「超国家性」を前提にしているからであろう。インターネットと国家のそもそもの在り方が問われているといっても過言ではない。

つまり、アメリカ一国がよりプライバシーに配慮し、内部告発者でも国内に留まることができる法整備をすればいいという問題だけではない。北朝鮮、イラン、中国では未だにTwitterの国による検閲がおこなわれている。日本では特定の公務員が国家機密情報を内部告発したら処罰をうける(日本版NSA)「特定秘密保護法案」が昨年暮れに通過した。

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内部告発者を保護する法律に関しては、欧州でも状況は疎らだ。euobseverによると、ドイツでも昨年メルケル政権のもと否決され、ルーマニアとスロベニアでは、法は整備されているが行政機関従事者のみに限定されている。ハンガリーには法は整備されていても執行機関が整備されていない。フランスでは公衆衛生と安全に関わる人のみ。欧州議会は現在、内部告発者保護のための法案の改善を加盟国の参加を呼びかけている。このように、比較的同一の安全保障体制・通貨の欧州国内においても状況は全く異なっている。だからこそ、よりプライバシー保護を尊重し、スノーデン氏のような内部告発者の身を安全にし、政府の権力の肥大化にブレーキをかけるためにも「国際的な枠組み」が必要だというわけだ。

英国人記者のサラは、この5月に実施される欧州議会選挙についても触れた。各政党は、安全保障等を担う国民を”監視しているであろう”部門への予算削減を実施することを主張することで、指示を集めることできるとコメントした。また、内部告発者保護の法律がない国や地域に投票しないこともひとつの有権者の他戦い方だと語った。

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